推理は日常に潜んでいるもの。
日常で起こる謎をズバズバ解決していくストーリーは現実に即していつつも、小説として最高に楽しむことができます。
もしかしたらあなたのすぐ横にも、推理すべき謎が潜んでいるかもしれません。
今回紹介する「いまさら翼といわれても」は、高校生がぶつかる日常的な謎を推理で解決していくそんなお話です。
氷菓シリーズの第6弾になります。
この記事では、本書の書評とネタバレ要約を行っていきます。
では、行ってみましょう!
あらすじ
「ちーちゃんの行きそうなところ、知らない?」
夏休みに折木奉太郎の元にかかってきた部員からの電話。
合唱祭の本番前にちーちゃんこと千反田えるが姿を消したと言う。
どんな思いで、どこに行ってしまったのか。
高校生が抱える悩みと苦悩、日常に潜む謎の数々。
謎解きを通して古典部のメンバーの新たな一面が垣間見える短編集全6編。
全ての謎を解き明かした時、タイトルの意味がようやくわかることだろう。
本書の概要
ページ数
あとがき含めず、369ページ。
全372ページです。
読むのにかかった時間
会話が多いので読みやすく、大体4時間弱ほどで読み切ることができました。
構成
短編集で、全6編の内容になっていました。
一つ一つの話がつながっていると言うことも無く、それぞれで楽しめる短編集でした。
短編らしくしっかりと一つの話に謎が一つ用意されていて、きれいなおわり方をするという形で、長編が苦手という方にぴったりの作品です。
短編内部では一人称になる人物は変わりつつも、一人称で書かれる手法は終始変わりませんでした。
感情を景色で例えるといった部分はほぼないので、読みやすい展開でした。
書評 シリーズ読んでなくても大丈夫
シリーズの第6弾ではあるものの、これまでのシリーズを読んでこなかった僕でも楽しむことができました。
シリーズである分、登場人物の背景をもっと詳しく知っていればより楽しめるであろうものの、この一冊だけでも謎と謎解きを楽しむことはできると思います。
ただ、僕はアニメの「氷菓」を観たことがあったのでそう感じた可能性もあります。
「氷菓」というアニメにもなっているシリーズなので、事前に「氷菓」を観ておくもしくは、「氷菓」というシリーズ第1弾から読むのが一番だと思います。
「いまさら翼といわれても」だけでも短編小説として、楽しめるもののやはりシリーズの大枠はわかっていないと登場人物の行動の背景がわからずイマイチに感じるかもしれません。
小説内の話への感想に入っていくと、僕としては期待外れだったといわざるを得ません。
元々短編小説というジャンルがあんまり好きでないので、短編小説というだけで結構偏見があるかもしれませんが、どうしても物足りなく感じてしまうんですよね。
「いまさら翼といわれても」は一つ一つの謎がちゃんとしていて、納得感がある推理も見事だと感じました。
しかしもっと伏線があって、読み返したくなるような仕掛けがある方が僕の好みなのです。
短編だと知らずに読み始めた僕が悪いのですが、感動的だという口コミで読み始めたのでどうしても期待外れだった感を否めません。
シリーズ全てを読んできた人にとっては感動的で、伏線が見事に回収されたと感じる場合もあるかもしれませんが、アニメの後に「いまさら翼といわれても」を読んだだけの僕としては短編としての面白さはあるけど。。。という感じです。
短編としては面白く読むことができましたが、見事な一冊という紹介の仕方はできかねます。
長編の魅力的がない分、短編好きには合っていると思いますが、短編が好きではない僕のようなタイプには向いていない一冊だと思いました。
短編と分かった上で楽しむ分には謎もよくできていて、推理も論理立てられて納得する内容なのでおすすめではあります。
短編好きの方は読んで損しないミステリー小説だと思います。
ネタバレ あらすじ
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛んでください。
では、まずネタバレありのあらすじから紹介していきます。
短編集のそれぞれの話の展開とオチについて紹介します。
①箱の中の欠落
生徒会選挙で投票数が想定よりも多いという事件が発生した。
謎はどうやって投票用紙を用意したか、一見穴がないような投票手法だった。
オチ:
→投票箱がクラスの数より多く用意されており、1クラス分丸々水増しされていた。
→犯人についての言及はなく、どうやって投票数を水増しさせたかという謎だった。
②鏡には映らない
中学生の卒業制作で作成した鏡。その鏡に装飾として学年でそれぞれ彫りを入れた。
ただ1箇所だけ主人公である折木だけは手を抜いた線を彫っただけだった。
謎は、どうして折木はそんな手を抜いた彫りをし、デザインを考えた生徒を泣かせる結果になったのか?
オチ:
→デザインを考えた生徒は、いじめっ子でいじめの対象となっている子へ鏡の装飾を通してメッセージを送ろうとしていた。
→気持ちの良くないメッセージだったために、折木は妨害のためにわざと手を抜いた線を彫っていた。
③連峰は晴れているか
ある日ヘリコプターを見て興奮していた教師のことを思い出す。
謎は、教師がどうしてヘリコプターに急に興味を示したのか、それまでもその後もそんなそぶりを見せなかった教師がどうしてその時だけ興奮していたのか。
オチ:
→教師は登山家で、山に遭難していた情報を聞いて心配していた。
→ヘリコプターはその遭難者を助けに行くであろうことがわかって安心したためにヘリコプターに興味を示したのだった。
④わたしたちの伝説の一冊
漫画研究会はギクシャクしていた。漫画を書く派と読みたいだけ派に分かれていた。
伊原はそんな中隠れて同人誌を描こうと誘われ、漫画を載せることを決める。
だが書いていた下書きを盗まれてしまう。
謎は、伊原の下書きのノートを盗んだ理由と裏に潜んでいた漫画研究会をめぐる話
オチ:
→ノートを盗んだのは元部長で、伊原の話をするためだった
→伊原と部長は一緒に本気でプロを目指すために一冊の同人誌を作ることにする
⑤長い休日
折木の調子の良い一日。
折木がどうして事勿れ主義になったのか、その理由が明らかいなる。
オチ:
→自分がいいように使われていることに小学生の時気づいたためだった
⑥いまさら翼といわれても
千反田が合唱祭に姿を消した事件。
折木など心当たりを探すが見つからない。
謎は、千反田がどうして姿を消したのか、どこへ行ってしまったのか。
オチ:
→千反田は跡取りになることを覚悟していたのに、突然跡を継がなくて良いといわれどうしていいかわからなくなっていた
→自由を願う歌を歌うことになっていたため、心と実情に合わないため歌えないからと合唱祭に行きたくなくなっていた。
ネタバレ 解説&書評
一通りのネタバレあらすじは以上です。
ここからはネタバレを含んだ書評、解説をしていきます。
僕が一番気に入った物語は⑤の長い休日でした。
長い休日は謎が最初からあるスタイルではなく、主人公である折木奉太郎がどうして、そういう性格になったのかについて語られるという物でした。
かなり胸糞悪い話ではあるものの、折木の背景がわかる見事な話になっていました。
自分がいいように使われたことを知る残酷な小学生な話ではあるものの、現実問題そういったことはあるので、納得せざるを得ない背景にちょっとだけ寂しい気持ちになりました。
他の作品も全体的に謎と推理のバランスが良く、短編小説としてしっかりとまとめられた作品だと思いました。
最後の千反田が自由になってしまったが故に、自由を願う歌が歌えないという感覚は全く共感できませんでした。
嘘でも「負けました」っていうのに抵抗ってありますかね?
僕自身「負けました」なんて言う分には何の抵抗もないので、いまいちピンとこないオチでした。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、米澤穂信さんの「いまさら翼といわれても」を紹介してきました。
短編とは知らずに読み始めたものの、なかなか楽しめた作品ではあると思います。
短編は基本嫌いなので、途中投げ出すこともあるのですが、米澤穂信「いまさら翼といわれても」はしっかり最後まで読むことができました。
短編だと盛り上がる手前で終わってしまうので、好きではないですが、一つ一つの謎や推理はしっかりと積み上げられたものだったので面白かったです。
ただやはり読み応えは少なく、最後の感動もほとんどないと言うことでいまいちだったといわざるを得ません。
短編が好きな方やシリーズを通して読んでいる方には面白い作品で、おすすめですが、長編好きのミステリー好きにはおすすめしません。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになりますように。
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