5分でわかる深木章子「鬼畜の家」書評&ネタバレ要約・解説

小説の書評

本当の鬼畜は誰なのか?

保険金目当ての事件に隠された驚きの真実。

ありがちな展開ではあるものの、入念に張り巡らされた伏線は見事な一冊を今回は紹介します。

深木章子さんの「鬼畜の家」です。

鳥肌系になれた僕なので、オチに震えることはなかったのですが、非常に伏線が張り巡らされた精密機器のようなミステリーでした。

この記事では、「鬼畜の家」のあらすじから、ページ数、書評、おすすめ度などを紹介し、一部ネタバレ有りの要約、解説を行なっていきます。

では、いってみましょう!

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あらすじ

保険金目当てで次々と家族に手をかけた母親。

巧妙な殺人計画、殺人教唆、資産収奪。

唯一生き残った末娘の由紀名は信じ難い「鬼畜の家」の実態を語り始める。

探偵の榊原は、由紀名の話から本当の鬼畜の姿に迫っていく。

果たして、由紀名の語る「鬼畜の家」の正体とは。

元警察官の榊原は探偵という限られた力で、真実に辿り着くことができるのだろうか。

本書の概要

ページ数

文庫サイズで解説含めず、380ページ、全389ページでした。

読むのにかかった時間

だいたい4時間半ほどで読み切ることができました。

構成

探偵である榊原に対して証言者が語っていく構成で描かれていました。

章ごとに証言者がかわり、少しずつ事件の全貌、家族の全貌が見えてくるという構成です。

途中、榊原を視点とした三人称で描かれるところもありました。

書評(ネタバレなし)

やり尽くされているオチだし、驚きは少ないけど、よくできた話に脱帽!というのが感想です。

正直、とんでもない伏線回収で鳥肌。今まで読んできたものがひっくり返った!という驚きはほとんどありませんでした。

やり尽くされているトリックですし、薄々このまま話は終わらないだろうなぁ、きっとこうなりそうだな。と思ったものまんまだったのです。

とはいえ、非常に精密に組み上げられた物語であるのは確かで、オチが納得できます。

こういった犯人が実は…系は伏線が無理矢理だったり、勘づいてしまうことがあるのですが、「鬼畜の家」では見事に伏線が隠れていて、明かされることで全ての点が繋がります。

オチだけ聞くと、よくある話じゃんとなるのですが、しっかり読み込むことで作者の綿密な伏線とこだわった表現、文章というのが見えてくる作品だと感じます。

手放しで伏線がすごい小説だからおすすめ!と言える作品ではないですが、きっちりと綿密な伏線を味わい方にはおすすめできる一冊だと思いました。

また、家族の在り方、愛とは何か、を見事にミステリーと絡めている点もよかったです。

うまくいきすぎている部分もありますが、フィクションとしても非常に楽しんで読むことができました。

証言という形での構成も目新しさが生まれていてよかったと思います。

おすすめ度

「鬼畜の家」のおすすめ度5点満点中3.5点です。

伏線があるミステリーとしてなかなか面白いと思いましたが、どうしても驚きが少なかった印象でした。

どうしてももっとすごいどんでん返しがあるんじゃないかと、無駄な前知識のせいで思ってしまったのです。

伏線がすごいっていう触れ込みだったので期待しすぎちゃいました笑

また、途中家族同士の肉体関係という一種のタブーにも触れる部分があるので、好みが分かれる部分もあるかなという評価から少し辛めに評価しています。

とはいえ、ミステリーとして非常によくまとめられた一冊で、ミステリー好きな大人にはぴったりの一冊だと思います。

伏線がすごいんだ。逆転がすごいんだ!と気負いすぎなければ見事な作品です。

特に綿密に表現された細やかな伏線。見事でした。

読み返してみると伏線であることがよくわかる形になっているんです。

ぜひ、一度読んでみてください。

要約・あらすじ(ネタバレあり)

ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。

まずは事件を整理します。

証言者たちの話をまとめるとこんな感じでした。

「鬼畜の家」と称される家族は元々5人家族でした。

父、母:郁子、息子:秀一郎、娘A:亜矢名、娘B:由紀名

事件の始まりは、父親の死で、父親の死を母親である郁子が知り合いの医者に頼んでくも膜下出血で死んだことにしてもらったのです。

これによって、郁子の手には保険金が入ってきて、働かずにしばらくは楽しい毎日を送ることができました。

そんな中、出来損ないの娘である由紀名を親戚の家の養子にすることにしました。

由紀名は養子先の父、母と仲良くなったものの、実は養子先の父親に性的虐待を受けたのです。

由紀名はそのことを姉に相談し、母とも相談した結果、母親である郁子は由紀名に対して放火を命じました。

母親に逆らえないよう教育された由紀名は指示通り、養子先の父・母がお酒と睡眠薬で眠っている間にストーブをひっくり返す形で火をつけました。

放火だという証拠は出ず、養子である由紀名に対して保険金は振り込まれました。

郁子はこのタイミングで由紀名を養子先から自分の子供として戸籍移動をさせました。

これによって由紀名に入った保険金も、養子先の父・母の財産も手に入れることができたのです。

由紀名はそんな事件によって心を閉ざすようになり、引きこもりへとなりました。

兄である秀一郎も世間と馴染めず、母親の過保護のせいもあり由紀名同様、引きこもりをしていました。

亜耶名はそんな家族の中で、唯一、一般的な育ち方をしていた娘でしたが、ベランダの冊子が壊れていたことにより転落死してしまいます。

郁子は実は由紀名を殺すためにわざとベランダの冊子を壊していたのですが、まさか亜耶名が死ぬとは思いませんでした。

しかし、開き直り、老朽化を直さなかった大家が悪いとして、大家から慰謝料をふんだくったのです。

慰謝料も入り、あとは由紀名さえいなくなればいいのだと考えた郁子は、田舎へ引っ越し海に突き落とすことで由紀名を事故死に見せかけて殺そうと策略します。

ですが、下見に行っている途中、郁子は崖から車ごと転落してしまったのです。

同乗していた秀一郎も落ち、二人は行方不明となってしまいました。

行方不明が真実がどうかを保険会社に証明するために、由紀名は探偵・榊原に依頼をしたというのが証言者を通じた事件の内容でした。

しかし、これはあくまで表の話で、実は郁子は誰一人殺していなかったのです。

犯人は、郁子ではなく、全て亜耶名が仕掛けたことだったのです。

この話の逆転についてと真実についてはぜひとも、本書で楽しんでみてください。

彼女がやりたかったこと考察(ネタバレあり)

亜耶名が本当の鬼畜だったという話を深掘りしていきます。

端的にまとめると、亜耶名は由紀名を突き落とし、入れ替わったという形のトリックです。

由紀名は引きこもりだったため、顔を見たことがある人が基本家族だけだったため亜耶名がうまいことすれば簡単に入れ替われるという話でした。

母も兄も口車を合わせたので、警察の目を欺くことは容易でした。

そんな全ての元凶であり、鬼畜と言われる亜耶名は何をしたかったのか。

僕が思うに、彼女は潔癖症すぎたのです。

自分の中で理想としていた男性像である父親が死に(自殺)、そんな父親を裏切る母親が気持ち悪かった。

妹である由紀名も、養子先で性的虐待を受けていながら、人の目を気にして自分で物事解決しようという努力が見られないのが気持ち悪かった。

兄である秀一郎も、母の言いなりのマザコン。自分の意思で何も決められないところが気持ち悪かった。

とにかく気持ち悪いことが嫌いで綺麗にしたかった。それが亜耶名の動機であると僕は思います。

最後には、亜耶名が本当の愛に触れられたのはよかったと思います。

その分、もっと早く愛に気づいていれば今回の事件は何一つ発生しなかったのに!という思いもありますね。

そうなったら小説にならないんですけど。

でも、こうやってもしも何かがなければ、事件は起きなかったかも。

本当の原因は何にあったのだろうかと考えることが小説を楽しむ一つの趣向だと思います。

皆さんもぜひ、「鬼畜の家」を読んで、本当の鬼畜とは何で、どうすれば鬼畜にならずに済んだのか考えてみてほしいです。

まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。

今回は深木章子さんの「鬼畜の家」を紹介してきました。

トリックやオチに目新しさはないものの、非常に綿密な伏線と表現は見事でした。

人によって、好き嫌いが激しくなりそうな内容でしたが、僕としては社会に投げかけるテーマとして良いと思いました。

誰が本当の鬼畜で、どうすれば鬼畜にならずに済んだのか、特に注目して読んでみてほしいです。

では、皆さんのミステリー愛が深まることを祈っています。

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