名探偵×認知症
一見あり得ない組み合わせですが、ちゃんとミステリーしていました!
今回紹介するのは小西マサテルさんの「名探偵のままでいて」です。
短編でポンポン進みながらも、最後に長編の仕掛けがわかる系ミステリー。
この記事では、そんな「名探偵のままでいて」の内容を一部ネタバレありで紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

かつて小学校の校長だった切れ者の祖父は現在、幻視や記憶障害といった症状が現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。
しかし、孫娘の楓が身の回りで生じた謎について話せ聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻す。
そんな祖父の元へ相談を持ち込む楓だったが、やがて自らの人生に関わる重大な事件が起こる。
果たして、幻視と戦う祖父(名探偵)は全ての謎を解き明かすことができるのか??
本の概要

ページ数
解説含めず394ページ、全404ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
短編6つになっている構成で、登場人物は統一されています。楓を主軸とした三人称の文体となっていました。
最終章では、その前5つに出ていたヒントや伏線を用いたまとめのような章になっていました。短編ですが完璧な短編ではないような構成です。
おすすめ度

小西マサテルさんの「名探偵のままでいて」のおすすめ度は、5点満点中3.5点です。
おすすめはできる!けどもうちょっと欲しかった!という評価。
短編が嫌いな僕ですが、「名探偵のままでいて」では一つ一つの物語を楽しんで読むことができました。
それぞれの話がちゃんと作り込まれていて、短編なのにしっかりと伏線が張り巡らされているのです。
また、会話のテンポもよく読んでいて飽きない良い作品だったと思います。
なので、多くの人におすすめできる作品だと思っています。では、なぜ満点評価ではないのかというところ。
流石にそんな推理は暴論じゃない?と社会的メッセージが見受けられなかった。という二点があります。
まず推理の暴論さ。これは最終的に辻褄は確かにあっているので文句はつけられない推理だとは思います。ですが、あまりにも会話の内容がそのままストーリーに直結している点は好みではありませんでした。
メタ的な発言が多いような印象で、普通に生きていてそんな推理には至らないでしょう。という場面が多かったです。
社会的なメッセージが見受けられなかったのはそのままの意味で、僕のおすすめしたいラインには届かないレベルのメッセージ性でした。
短編だとこの辺が特に難しいので仕方ない面もあるかとは思いますが。
会話のテンポや短編である読みやすさを含め、多くの人にはおすすめできるけど個人的にはちょっと好みとは外れていたという意味でもうちょっと欲しかったという評価でした。
気になる方はぜひ、「名探偵のままでいて」お手に取ってみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにして下さい。

では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
主人公・楓と楓の祖父。祖父は認知症により幻視を見たり記憶障害を持っていた。
そんな祖父だったが、かつての知性を見せる時が時々あった。そんな祖父に楓は身近に起こった事件の話を持ち込む。
①緋色の脳細胞
中古で購入した本に挟まっていた作者の悲報の記事。どうして売った人は作者の悲報の記事を挟んだのか。
購入した人自体がなくなり、残った人がその本の価値や大事さを知らずに売ってしまったからというのが祖父の推理。
腑に落ちつつ、時々戻るあの頃の知性が垣間見えた物語。
②居酒屋の密室
居酒屋で起こった密室殺人。トイレでナイフが刺さって亡くなった被害者。
楓の同僚である「岩田」の元後輩である「四季」から聞いた話。「四季」の劇団員が事件に巻き込まれたとのことで祖父の力を借りることにする。
居酒屋の女将こそが原因だった。劇団員は不本意に巻き込まれつつ被害者と取り押さえようとナイフが刺さってしまったというのが推理だった。
そして、女将も劇団員もそんなに重い罪にはならずに物語は終わった(正当防衛や事故として処理される範囲)
③プールの人間消失
楓の友達から聞いた話。マドンナ先生と呼ばれる先生がプールの時間に消えたというもの。
何か悩みでもあったのか。それとも殺人か?
一見殺人事件に見えるが、全くの別。マドンナ先生の親が作った借金で悪徳金融に追われていた。
その金融業者から逃げる手段として現在の校長及び元校長である祖父が結託して逃したという話だった。
④33人いる
楓のクラスで起こった不思議な出来事。32人だったクラスに33人目が現れるという謎。
楓こそが33人目であり、不登校だった生徒がその日登校してきたので、33人になったという話だった。
⑤まぼろしの女
「岩田」が殺人容疑で捕まった。いつものようにランニングをしていた時にたまたま居合わせたせいだった。
ランニングの常連である女を探して「岩田」の無実を晴らさなければ。
女はウォーキングをしているのではなく、単にアルコール中毒者だった。アルコールを飲んでいることを「岩田」に知られたくないためウォーキングをしているふり、お酒に可愛らしいタオルを巻いていたりしているのだった。
その女は最終的にアルコール中毒外来の前で見つけることができ、証言を手に入れ「岩田」は解放された。
⑥ストーカーの謎
楓は最近ストーカーに悩まされていた。ついには電話で「殺すよ?」という脅しにまで発展する。
祖父に相談しようとしたところで、捕まってしまう。
しかし、祖父は事前に聞いていた話からストーカー犯を看破し、「岩田」「四季」と共に撃退する。
かつて楓の母をストーカーし殺した人物でもあったストーカー犯。恨みつつも傷つけずに警察に突き出してことなきを得た。
全てが丸く収まり、楓は祖父にまた一つ事件の話をする「好きな人ができてしまったかもしれない」話を。
それを聞いた祖父はいつものように一言。
「楓。煙草を一本くれないか」(推理を行う時の常套句)
好きな相手とは?考察(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここでは、楓が最後に放った「好きな相手」の話を考察していきます。
楓の好きになった相手は「岩田」か「四季」か。
僕の予想では「岩田」です。
基本、勘ではあるのですが、明確な部分として最後の最後に楓が言った「ずっと相談したかったことをいってみよう」
「ずっと」という点こそが根拠になりうると思いました。もしも「四季」のことを好きであれば「ずっと」という表現は使わなかったのではないかと思います。
勝手な推測ですがこの物語は四季と出会ってからそんな長い時間は経過していないはず。
少なくとも1年ほどでしょう。それなのに、「ずっと」というのは明らかにおかしい。
楓が一目惚れしているというわけでもなさそうですし。そこから「岩田」のことであるように感じます。
祖父のことも気遣ってくれる優しい「岩田」に今回の物語でちゃんと惚れた。好きになった。からずっと相談したかった好きになったかもしれない人の話として「岩田」を持ってくると思いました。
ぜひ、皆さんの予想も教えて下さい。
まとめ

ここからはネタバレないので、安心して下さい。
今回は小西マサテルさんの「名探偵のままでいて」を紹介してきました。
テンポの良い短編集なのに、ちゃんと伏線がある一冊。楽しませてもらいました。
ぜひ、気になる方はお手に取ってみて下さい。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。


