3月11日。
日本人なら誰もがこの日にちを聞くだけで嫌な思い出が蘇ります。
今回紹介する中山七里さんの「アポロンの嘲笑」は3月11日に起きた震災をもとにした物語です。
原発をテーマにしたミステリー長編。実に面白かったです。
この記事では、そんな「アポロンの嘲笑」の内容について一部ネタバレありで紹介していきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
東日本大震災の直後に起きた殺人事件。
原発作業員として働いていた被害者と加害者の間に何があったのか。
逮捕された容疑者の加瀬は、殺された男の親友だった。警察に手錠をかけられパトカーに乗せられたタイミングで余震が!
なんと、余震の混乱に乗じて加瀬は逃走する。
福島県石川警察署の仁科は加瀬自身のことを調べつつ、行方を追う。
やがて加瀬が向かう場所がわかると、一気に話が見えてくる。
加瀬の逃走の目的とは。
驚愕の真実とは。
本書の概要
ページ数
解説含めず403ページ、全411ページです。
読むのにかかった時間
大体5時間半ほどで読み切ることができました。
構成
容疑者の逃亡劇を描く加瀬視点と容疑者を追いつつ真実に迫る警察・仁科視点の二つで構成される長編ミステリーでした。
一部、福島原子力発電所の様子も描かれ、物語がぎゅっと面白くなる場面もあったりしました。
書評(ネタバレなし)
とにかく、リアルすぎて怖いのと真相が明らかになった時の驚きと見事さがすごい!!というのが僕の感想でした。
福島の原子力発電所がテーマになっていて、その描写がリアルっぽいのです。
ハラハラドキドキや東日本大震災の時の雰囲気もうまく表現されている点は、怖いとともによかったと思いました。
ミステリーとしてのなぜ加瀬は逃走したのかも、素晴らしい回答が待っている点が良かった。
逃走劇の様子と逃走劇の理由が見事に描かれてワクワクしつつ、最後には共感と納得感がすごい。
見事な作品だと思いました。
伏線がすごいかと聞かれるとうーんという感じにはなるかと思います。
もちろん、どうして逃走したのかという理由が伏線になっているわけですが、伏線による驚き的にはびっくりはしないレベルですね。
ただ、本当に背景となる理由が明確かつわかりやすく共感できるのが良かったです。
最後のオチもしっかり考えさせられる内容になっていますし、感動する場面も表現されている。
感情移入すると本当に涙が出るので、感動系が読みたい方にもぜひ読んでもらいたい一冊だといえます。
ただ、東日本大震災をテーマにしているので、トラウマのある方は読まない方が良いです。
おすすめ度
中山七里さんの「アポロンの嘲笑」のおすすめ度は5点満点中4点です。
基本的におすすめします。
ただ、東日本大震災をテーマにしているの、トラウマのある方は読まない方が良いということで点数を若干低くしています。
まず、ミステリーとして謎と答えが秀逸なのが評価できるポイントでした。
見事に共感できて納得できる理由というのが良かった。
また逃走劇を描いているのでワクワクドキドキできるのもおすすめできるポイントだと思いました。
殺人事件からまさかの展開に集結する様子も素晴らしいと感じ、ぜひ多くの人に読んでもらいたい。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありのあらすじ、要約からやっていきます。
加瀬が職場の親友でもあった金城純一を殺したとの連絡が、石川署に入りました。
仁科はその連絡を受け、後輩と共に加瀬を警察署に連れて行くことになりました。
手錠をかけ、パトカーに乗せるまでは良かったものの、突然の余震によって隙が生まれ加瀬が逃げ出したのです。
仁科は金城家と加瀬の関係を聞きつつ、加瀬が行きそうな場所を調べ始めます。
すると、調査する中で加瀬は以前大阪にいて阪神淡路大震災によって、孤独になった。という話を知ります。
さらに、孤独になった後は叔父と生活をしていたが暴力に苦しみ中学生から働かされて高校卒業と同時に逃げるように職場を転々としたとのことでした。
そういった苦労をしている人物が、どうして人を殺してさらには逃走しているのかますますわからなくなります。
すると、加瀬の目撃情報が。加瀬はなんと津波の被害に遭った原子力発電所に向かっているとのこと。
その頃原子力発電所は立ち入り禁止になる程放射線量が検知され、付近も一般人は入ってはいけない状態になっていました。
それでも加瀬はそこに向かう。その理由が仁科には本当に分かりませんでした。
ですが、ある目撃情報をもとに殺された金城純一を恨んでいた人物を見つけ出します。
金城純一はその人物に脅され、なんと原子力発電所に爆弾を仕掛けたとのことでした。
純一はその罪悪感に囚われ、酒を飲み加瀬に言いがかりをつけて殺してもらったというオチでした。
加瀬は純一の告白を受け、爆弾を止めるべく原子力発電所へと向かっていると分かりました。
足を負傷しながら、なんとか加瀬は原子力発電所に辿り着きます。
途中で刑事である仁科の協力も受けながら、爆弾を見つけ原子力発電所から逃げようとするものの、なんと瓦礫の下敷きになってしまうのです。
最後の最後に自分以上に守りたい存在に出会えたことに感謝をするものの、加瀬は自分の人生に幕を閉じてしまうのでした。
爆弾は無事に処理され、仁科も行方不明になっている家族を探しに行くことを決意して、物語も幕を閉じました。
子供はどうなると思うか考察(ネタバレあり)
仁科の息子が行方不明になっている件がどうなるか考察します。
物語の中では、息子が実家に遊びに行っている。息子との連絡が取れないという情報しかありませんでした。
なのでほぼ予想ですが、僕は息子は無事に生きている。と思います。
実家との連絡がつかないのは避難が成功しているからこそ。という予想で東日本大震災が実際に発生した時もしばらくの間行方不明だった人が見つかった、連絡がついたという例も非常に多くあります。
なので息子がちゃんと生きている可能性も十分にあると思います。
それに、あんなに熱い仁科に不幸になってほしくないです。
息子が行方不明なのにも関わらず公務員として仕事を投げ出すわけにはいかない。
厳しすぎます。そんな中しっかりと成果を上げた仁科がこの後不幸せになるなんて悲しすぎますから。
考察というか願いという感じになっていますが、僕は仁科の息子は生きていると予想します。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は、中山七里さんの「アポロンの嘲笑」を紹介してきました。
東日本大震災をテーマにしている点で少し恐怖を思い出しましたが、ミステリーとして非常にクオリティの高いものでした。
オチも真相も見事な出来で、万人におすすめできる作品だと思います。
ぜひ一度お手に取ってみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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