東京中に爆弾がある…!
そうなったらあなたならどんな行動を起こしますか?
今回紹介するのは呉勝浩さんの「爆弾」です。
爆弾をテーマに浮き彫りになる人間の本音と嘘、恐怖…
この記事ではそんな「爆弾」の内容を一部ネタバレ有りで魅力的に紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

自称・スズキタゴサク。取調室に捕らわれた冴えない男が、突如「十時に爆発があります」と予言した。
直後、秋葉原の廃ビルが爆発。
さらに爆破は3度、続くと言う。
ただの「霊感」であるというタゴサクに、警視庁特殊犯係の類家は情報を引き出すべく知能戦を挑む。
炎上する東京。
拡散する悪意を前に正義は守られるのか。
そもそも、正義とは何なのか?
本の概要

ページ数
解説含めず文庫サイズで501ページ、全509ページでした。
読むのにかかった時間
大体6時間ほどで読み切ることができました。
構成
警察側の視点と一般人の視点の三人称で書かれる構成でした。
目まぐるしく場面が切り替わりつつ、言葉による怒涛のテンポ感が見どころな構成となっていました。
おすすめ度

呉勝浩さんの「爆弾」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
多くの人におすすめしたいという評価。
イカれた爆弾犯という構図とは最初思えないところから、徐々に恐怖と怒りを掻き立てていくストーリー構成は見事でした。
さらにどんでん返し、伏線も用意された話。
考え抜かれた根幹のストーリーとともに、爆弾犯とのやり取りテンポ抜群でどんどん引き込まれる工夫まで施されていました。
文句なしで面白い作品だと感じました。さらに社会的テーマも織り込んで正義とは何か命の優先順位とは何か。ということもわかる話となっています。
考えさせられるという点からも多くの方におすすめしたいと思いました。
若干ページ数が多い分、満点評価ではなったですが、ぜひ読んで欲しいです。
気になる方はお手に取ってみてください。
書評(ネタバレなし)

やばいやばい、かっこいい、えーー!というのが僕の読んでいた時のリアクションでした。
最初の頃は何だこのコイツ、この始まりでどうやってこの分厚い話を持たせるんだ?という気持ちでしたが、徐々に事件が大きくなっていく。
さらに毒舌による口撃合戦。かっこいいのなんの。
ラストは意外な展開に落ち着いていき、ハッピーエンドでもバッドエンドでもない終わり方。
見事すぎるという一言に尽きる作品だったと思います。
伏線もしっかりと貼られており、爆弾犯の口にする言葉にヒントがあるっていう作りも面白かったです。
言葉とテンポが良い作品で長いページ数が気にならないくらい、リズミカルに読めました。
類家というキャラが特に好きでしたね。
毒舌なのに正義キャラ、しかも口撃が上手い。
もっと早く長くこのキャラが活躍して欲しかったところです。
トータル面白かった。しかも謎解き前からドキドキ感があって非常に良かったと思います。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
暴力沙汰で捕まった自称、スズキタゴサク。
そのスズキが急に言い出した。「霊感によると、十時に爆発があります」と。
半信半疑だった警察だったが、実際に爆発事件が秋葉原で起こりあわてる。
スズキはあくまで霊感と言い張りながら、さらに爆発を予言していく。
警視庁特殊犯係を要請し、スズキの尋問を行う。スズキとの会話に次の爆発場所のヒントがあるとわかり謎を解いていく。
しかし一歩及ばず、次は代々木公園が爆発され死傷者も出てしまう。
スズキはこの爆弾事件を楽しんでいるようにしか見えないため、警察は焦りと怒りを覚えていく。
そんな中、警視庁特殊犯係の類家がスズキに挑む。
得意の口撃によりスズキを追い詰めていく。次の爆発は阿佐ヶ谷であることを突き止めるまでに至る。
しかし、爆発のさせ方がわからず、結局は缶に紛れ込ませ自動販売機の中から爆発が起こる。
一歩手前まで行くものの、爆発を抑えきれない。
山手線の駅でも次々に爆発が起こる。
だが、類家はある推理へと辿り着く。
この事件はスズキが全て仕組んだものではないことを。実は元々シェアハウスに住んでいた若者たちが企てたことだった。
スズキはその事件に巻き込まれた形。さらにそこにスズキならではのストーリーを描いたに過ぎなかった。
怪物に思われたスズキだったが、元々あった爆弾事件を自分の手柄のように世の中に知らしめただけだったのだ。
とはいえ、罪は罪、スズキは裁判にかけられおそらく極刑だろう。
事件で巻き起こった誰を殺していいのか。誰の命を救うべきかの命の優先度という話は、時間と共にその話は忘れ去れていくのだった。
何が言いたかったか解説(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
結局「爆弾」では何を言いたかったのか。
僕は、正直な気持ちなんてこの世の中にはないのかもしれない。けど建前でも頑張ろうぜ!というメッセージを感じました。
浮浪者は死ねばいい。高齢者は死ねばいい。そんな思いを誰しもは一度は思ったことがあるはず。
その言葉に正直に生きたのがスズキでした。
でも、それは正義でも何でもありません。思ったとしても実行してはいけない。
実行することで秩序がなくなってしまうから。
これまた真実です。
どちらの感情もあってもいいけど、それで誰かを傷つけてはいけないよね。
本当の気持ち以上に社会を成り立たせるのが大事な時もあるんだよ。というようなメッセージ性を感じたのです。
黒か白かをはっきりさせるのは難しい。なんせ本音や本当の真実なんてものは誰にもわからないんですから。
実に考えさせられる内容が「爆弾」には潜んでいたと思います。
まとめ

ここからはネタバレありませんので安心してください。
今回は、呉勝浩さんの「爆弾」を紹介してきました。
よくできたストーリーでワクワクドキドキさせられました。さらにはあっと驚く伏線回収。
見事な出来でした。
ぜひ、まだ未読な方は読んでみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。


