一つのマンションをテーマにした、摩訶不思議なミステリー
ありそうで、なさそうで、やっぱりありそうな短編集が今回紹介する折原一さんの「グランドマンション」です。
この記事では、そんな不思議で毎回ちゃんと伏線回収っでスッキリさせてくれる「グランドマンション」の書評、一部ネタバレ要約をやっていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
グランドマンション一番館には、元公務員、三世代同居の女世帯から独居ろうじん、謎の若者、変わった管理人と悪の強い人たちが住んでいる。
そんな中、騒音問題、ストーカー、詐欺、空き巣と住人たちが引き起こすトラブル。
そして最後には驚きの展開がある。
フィクションらしいものの、ありそうな話。
見事に描き切ったラストは一体どういうものなのか?
本書の概要
ページ数
解説含めず436ページ、全445ページでした。
読むのにかかった時間
大体5時間ほどで読み切ることができました。
構成
エピローグを含む全8編の短編集となっています。
それぞれで主人公、視点、語り手が異なりました。
ただグランドマンションという架空のマンションをテーマにしているので、短編間の登場人物は共通だったりしました。
書評(ネタバレなし)
んーー、やっぱり折原一さんは長編の方が僕は好き!というのが正直な感想でした。
短編は一つ一つ決してクオリティが低いわけではないですが、物足りなさや「ほぉーん?」で終わるオチのものが多かった印象です。
面白いんだけど、決してのめり込めない感じで、短編の中でも好きではありませんでした。
ミステリーの雰囲気は非常に良かったんですが、一つ一つのオチがあんまり好きじゃなかったです。
どうしても、乗り切れないくらいでお話が終わっちゃう感じ。
他の短編集では最終的に全ての短編小説の内容が絡んでオチに繋がるという感じもあるのですが、「グランドマンション」はそういった工夫が薄い印象でした。
決して短編からの実は長編のような繋がりがないわけではないものの、驚きやどんでん返しの要素としては弱かったです。
折原一さんは大どんでん返しとか、叙述トリックがすごい作家なだけにちょっと期待しすぎた面もありますが、「グランドマンション」はイマイチと思ってしまいます。
僕としては折原一さんの「異人たちの館」「倒錯のロンド」の方が面白く読めました。
やはり長編の方が良い雰囲気を出しつつからの大どんでん返し、怒涛のスピード感を感じられると思います。
読みやすいという良い面もあるとは思いますが、僕としては「グランドマンション」あんまりって感じでした。
おすすめ度
「グランドマンション」のおすすめ度は、5点満点中1.5点です。
ごめんなさい、好きな作者さんだけにかなり厳しくしています。
短編集というマイナス面がかなり表に出ていたと思いました。
僕が短編嫌いというのもありますが、折原一さんの真骨頂は長編だと思います。
なので、「グランドマンション」を読むなら折原一さんの「異人たちの館」「倒錯のロンド」をまずは読んでほしいです。
そういった意味でも、おすすめ度はかなり低い点数とさせていただきました。
要約・あらすじ
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの内容要約・あらすじを行なっていきます。
ピックアップした短編について、簡単なあらすじを紹介します。
・音の正体
上の階の音に悩まされる男性は、上階に住む子供の足音に度々怒鳴り込んでいました。
ちょっとの音に繊細になっている男性は、ある日上階の母親が遊び歩いているから子供がうるさいと決めつけ、怒鳴り込みにいきます。
すると、子供の音は一切しなくなり、平穏な生活を送れるようになりました。
ただ、だんだんと子供が急に静かになったことが怖くなり、もしかしたら母親が子供を黙らせるために殺したのでは、と疑うようになりついには管理人に行ってドアを開けてもらうことにするのです。
無事、子供の虐待をすることができた一方、音を気にしていた男性の家のドアも管理人によって開けられたのでした。
男性の家の風呂場には妻の遺体があったのです。
男性は妻を殺し、風呂に置いていたことで音に敏感になっていたという話でした。
・304号室の女
グランドマンション二番館が新しく建てられることになり、モデルルームで働く女性。
あるカップルの案内をしたところ、不可解なことが起こることに気が付きます。
鍵がなくなっていたり、携帯がなくなっていたり、最終的にどちらも見つかったのでおおごとにならなかったものの、無音電話などに悩まされていました。
一方、モデルルームを見せてもらったカップルは彼女が彼氏の浮気を疑い、モデルルームで働く女性がその相手だと勝手に思い込みます。
そして、最終的にはカップルはモデルルームに勝手に居座る暴挙をしていた人たちだとわかり、浮気についても潔白だということがわかり、物語は幕を閉じました。
・時の穴
チェーンがかけられた部屋に一つの遺体がありました。
密室に思われる遺体。そこから始まる物語。
遺体が見つかった部屋の横に住んでいた男はお金に困っていました。
そんな時、横に住む老人がお金持ちだと知り、そのお金を盗むことを思い付きます。
そんな時自身によって、壁から隣の部屋に入れることを知るのです。
これで誰にもバレずに隣の部屋に入り、金品を盗むことができると喜び震えました。
予行演習で潜入し、自分の部屋に戻ろうとしたところで人の気配がし、男は殺されてしまいます。
実は隣の老人は男の侵入にいち早く気が付き、男の部屋に逆に入り返り討ちにしたのでした。
そして、その足で自分の部屋に穴から戻ったところで、再び地震が起こりました。
自身によって空いた穴が再び閉じ、部屋は密室となったのです。
穴が空いて、塞がるという大胆な自然現象による密室事件でした。
・リセット
突然二番館がなくなったと叫ぶ老人。
周りの人は相手にしないものの、老人は止まりません。
色々な人にマンションが消えたことを訴えるものの、誰も相手にしてくれません。
困り果てていると、老人はボケによって眠ると記憶がリセットされてしまうということがわかります。
毎朝二番館がなくなったと叫び、1日が始まり、徐々に寝る前にメモを残すことによって記憶を引き継げるようになったところで、ある事件のことを思い出します。
誰かが襲われ、火事になった時に犯人を目撃した記憶。
ただ、その犯人の特徴をはっきりとは思い出せない中、二番館が消えた理由が判明します。
実は一番館は火事によって消失し、老人が住んでいるところこそが二番館だったのです。
二番館が消えたのではなく、一番館が消えたというのが正確で、老人は一番館から二番館に引っ越したことすらも覚えていなかったというオチでした。
そして、一番館が消えることになった火事の原因が、元管理人であることが判明し、事件は幕を閉じたのでした。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は折原一さんの「グランドマンション」を紹介してきました。
僕としては、短編の中でも好きではなかったです。
折原一さんの長編の凄さを知っていた分、おすすめ度も低くしています。
手放しにおすすめはできませんが、気になった方は読みやすいのでぜひお手に取ってみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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