「君が殺人を犯していようがいまいが、必ずそこから出してやる」
とんでもない弁護士が現れました。
どんな事件も依頼者の意図通りに実施する弁護士・御子柴。
ワクワクとドキドキ、最後にはスッキリなオチが待っているストーリが中山七里さんの「復讐の協奏曲」です。
ダークヒーローな御子柴弁護士シリーズの第5弾。
この記事では、「復讐の協奏曲」のあらすじから、一部ネタバレありの要約を実施していきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
過去に幼女を殺したことのある弁護士・御子柴礼司。
彼の事務所に800通を超える懲戒請求が届く。(弁護士のクビを訴える請求)
処理に追われる中、唯一の事務員・洋子が殺人容疑で逮捕されてしまう。
殺害に使われた凶器には洋子の指紋が付着しているという物的証拠まで出てくる。
洋子の弁護を引き受けた御子柴は、洋子の過去に疑念を覚え調査を進める。
自分の過去と、洋子の過去、過去から生まれた復讐という一点で交わる物語。
果たして洋子は無事に無実を証明することができるのか。
本当の犯人は果たして誰なのか。
本書の概要
ページ数
解説を含めず364ページ、全371ページです。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
御子柴の視点が主軸で、三人称で書かれる文体でした。
時々洋子や、途中で出てくる弁護士・宝来の視点で描かれ物語に深みを生み出している構成でした。
書評(ネタバレなし)
弁護士ものとして完璧すぎる!!というのが僕の率直な感想でした。
まず設定が素晴らしく、過去に犯罪を犯したことのある弁護士・御子柴のキャラが良い。
御子柴は終始、表情が読めないかつ冷静沈着なキャラクターで安心感と頼もしい感じがします。
冷酷なだけなキャラクターかと思いきや時々人間らしいところを出すのがまた良いんです。
主人公として完璧で、頭がとにかく良くて読者にも本当の意図は最後の最後まで明かさないのが良かったと思います。
ストーリーも見事で、最初に事件を明らかにして疑問点も明らかにする。
その後地道に捜査を進める中でヒントを広げていき、最終的にヒントから真犯人を暴くというスタイルが完璧にはまっていました。
伏線も見事で、言う事なし。
誹謗中傷という観点からもメッセージ性もあったのが良かったと思います。
一応、御子柴弁護士シリーズものの第5弾ではあるものの、僕は「復讐の協奏曲」から読み始めたので全然シリーズは気にしなくてOKです。
ただ、過去のシリーズも読みたくなるクオリティの高さと、おそらく関連しそうなキャラクターが出てきていました。
過去シリーズを読みたくなる沼としても良い作品だと思います。
おすすめ度
「復讐の協奏曲」のおすすめ度は5点満点中、4.5点です。
万人におすすめできる一冊という評価になります。
とにかくストーリーもキャラクターも、メッセージ性も素晴らしく、ぜひ読んでほしいです。
0.5点分低くしているのは、シリーズものとして楽しみきれなかったところ。
シリーズを全部読んでいればもっと楽しめたと思うので0.5点分低くしました。
弁護士ものが好きな方にもおすすめできて、ミステリー好きも大いに満足できる一冊なので、ぜひとも読んでみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありのあらすじ・要約をしていきます。
弁護士・御子柴は過去に幼女を惨殺しました。
当時14歳だったため、少年院に入るだけでした。
そんな過去を持ちながらも弁護士として腕を振るい、数多くの事件をひっくり返してきました。
ある日、御子柴の事務所に弁護士のクビを依頼する請求書が大量に届きます。
事情を調べると「ジャスティス」と呼ばれるブロガーの先導によって一般人が請求書を送っているとのこと。
御子柴は対抗策として請求書全てに名誉毀損で訴えます。
800通を超える請求を捌く必要がある中、御子柴事務所の唯一の事務員・洋子が殺人容疑で逮捕されてしまいます。
証拠としてナイフの指紋があげられ、かなり不利な状況。
御子柴はそんな洋子の弁護をします。
被害者である知原の過去を調べながら、洋子の過去も調べる御子柴。
知原は、外資系コンサルタントとして働きつつ女性を使って、情報収集をしていました。
かなり恨まれるようなこともしてきた知原なのが見えてきました。
洋子の過去を探っていくと、戸籍がないこと、実は昔御子柴が殺した幼女の友人だったことが明らかになります。
友人を殺した自分の事務所にどうして在籍し続けるのか疑問に思いながらも、事件の真相を追っていく御子柴。
ついに公判が始まり、無実を訴える洋子と御子柴。
御子柴は物的証拠を覆すために、真相を明らかにします。
洋子の指紋がついていたナイフは、直前で行っていたレストランで使っていたものだと指摘し、真犯人はレストランの給仕をしていた人物だと言います。
給仕をしていた人物は実は、知原に騙された女性の中で自殺をしてしまった人の妹でした。
知原を恨んでの犯行で、洋子に罪を着させたのはたまたまでした。
洋子は無事に無実を勝ち取り、もう一つの事件も謎解きが始まります。
御子柴に弁護士のクビを請求した人物・ジャスティスです。
ジャスティスの正体は、御子柴が殺した幼女の親友の一人でした。
御子柴を恨んでの犯行で、実は知原の関係者でもありました(関係者だったので実は知原の事情調査の際にいた上司)
御子柴は幼女の親友の他に、幼女の母親も関わっていることを明らかにし、事件は幕を閉じました。
洋子は、御子柴がかつての友人の仇だと知りつつも、御子柴自身が反省し人間として変わったことを信じているためだとわかりました。
御子柴が過去の罪を反省していること、そして洋子は復讐以上に人を信じることを知っている人物だというのがわかる内容でした。
過去作が読みたくなる(ネタバレあり)
過去編がとにかく気になる一冊でした。
僕自身「復讐の協奏曲」が御子柴弁護士シリーズの初めてだったので、過去のことは何も知らない状態でした。
実は洋子の過去が、こうだったのか!!という驚きが少なかったのが少し残念だったのと、途中で出てくる「倫子ちゃん」なる人物の話も気になる。
御子柴の母親にまつわる話も気になりました。
とにかく気になる話がちらほらと張り巡らされているのが、良かったとともに過去作を読みたくなるところです。
途中山﨑という人物が出てきますが、これは中山七里さんの「逃亡刑事」「ヒートアップ」に出てきた人物だったの嬉しかったりもしました。
過去作がとにかく読みたくなって、御子柴のことが好きになる作品だと思いました。
早速、過去作である「贖罪の奏鳴曲」も注文して読もうと思います。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は、中山七里さんの「復讐の協奏曲」を紹介してきました。
ダークヒーローな主人公と見事なストーリー展開が、素晴らしいミステリーでした。
ぜひとも他のシリーズも読んでみたいと思います。
シリーズ総括とかもしたいですね。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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