隣人のことをどこまで知っていますか?
僕なんかは、隣の人が男なのか女なのかも知りませんし、いつの間にか引っ越されたのも知らなかったほど。
今回紹介する中山七里さんの「隣はシリアルキラー」は、隣の住人が怪しい音を立てているという場面からストーリー展開するミステリーでした。
最後には意外な結末になる。タイトル通り恐ろしいシリアルキラー物語。
この記事ではそんな「隣はシリアルキラー」についてページ数から、あらすじ、一部ネタバレありの内容要約を行っていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
ぎりっ、ぎりっ。ぐし。ぐし。ざぁぁあっ。
深夜2:20、神足は今日もアパートの隣室から聞こえる不気味な物音で起こされた。
音から、ふと隣人である徐(スー)が死体を解体している姿を想像してしまう。
根拠はないものの、その創造に突き動かされ、近所ではバラバラ死体の一部が見つかる事件も起こった。
警察に連絡するも、ただの妄想だと流されてしまう。
最終手段で、夜中に出かける徐を尾行する神足は、ついに体の一部を捨てるところを目撃する。
そこから事件は大きく動き出し、想像を絶する恐ろしい展開へとシフトしていく。
果たして、神足は無事に隣人トラブルを解決することができるのか。
本書の概要
ページ数
解説含めず330ページ、全336ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間ほどで読み切ることができました。
構成
神足・主人公を主軸とした三人称視点で描かれる作品でした。
一部警察サイドにも視点が移動することで、読者としては二つの方向から事件の真相に迫るという形でドキドキ感がより一層味わえる構成になっていました。
書評(ネタバレなし)
最後のドキドキがやばすぎる!!が「隣はシリアルキラー」を読んだ感想でした。
序盤ではすでに犯人は見えていて、短編?って思えるほど薄い事件かと思いきや主人公が実は…から一気に面白くなっていきました。
最後の場面ではシリアルキラーが迫ってくるドキドキ、最後の最後では、え?うそ…ってなる展開。
見事すぎる一冊でした。
伏線回収も見事で意味のない行動なんて一つもありません。
全てが真相につながるための伏線だったというのがわかります。
また、切ない部分もあるのが心をより一層惹きつけられた要因でした。
主人公に同情しつつ、主人公に同情したからこそ最後の真相にも同情してしまう。という見事なつながりがある物語で、完全に作者である中山七里さんの手のひらの上で転がされました。
序盤は本当に、短編集の一話か?と思えるほど薄い作品だと思えましたが、前半部のある一点から一気に面白くなっていき最終的に手に汗握る展開にハラハラドキドキさせられて最高な気分です。
シリアルキラーものは若干のホラーによる手に汗握る展開があるから、たまらないですよね。
最後のオチなんかは特に気に入りました。動機すらも伏線だったなんて!!
おすすめ度
「隣はシリアルキラー」のおすすめ度は5点満点中4.5点です。
ほぼ満点!シリアルキラーという狂人系ミステリーが平気な人なら間違いなく5点でお勧めします。
ただ、隣人というリアルすぎるポイントが人によってはトラウマになってしまうかもしれないというところで4.5点としています。
とはいえ、とにかくストーリー展開と最後の最後での逆転は面白いのでぜひ読んで欲しいです。
序盤は薄い話じゃね?と思う部分もあるかもしれませんが、断言します。
全然薄い話じゃなく、むしろこゆーーーーい物語です。
奥が深い物語なのに、しっかりと軽やかなテンポで読みやすく面白い。
素晴らしい一冊なので、ぜひとも読んでみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
神足は隣人である徐が、夜中に風呂場で死体を切り刻んでいるのではないかと思い始め、寝れない日々が続いていました。
職場である工場の先輩である矢口に相談し、絶対妄想だから酒飲んで寝ろ。とアドバイスされる通りにするもやはり気になる。
そんなある日、ニュースでバラバラ死体の一部が見つかったとのニュースが報道されました。
神足は隣の部屋の徐が怪しいと、事情聴取に来た刑事に話すものの、物的証拠がないとあしらわれてしまいます。
神足は間違いないと確信を持っていたので、夜中に徐が家を出るタイミングで尾行することにしました。
すると、徐は怪しげな袋を工場の廃棄処分場に持っていき捨てるのを目撃します。
徐が立ち去った後にその袋を確認するとそこには腕が。
神足は徐が世間を騒がしているバラバラ殺人の犯人だとわかり、警察に匿名で連絡します。
ですが、匿名ということもあり徐が犯人であるというところまでは警察は信じてくれません。
神足は実は、前科があり神足という名前は戸籍を買って手に入れたものでした。
そのため、表立って警察に駆け込むことができない。さらに恋人である紗穂里にもそのことがバレたくないためどうにか、自分の正体を隠して徐を捕まえられないか考えます。
神足は昔、ストーカーによって捕まっており人間不信でしたが、ようやく名前を変えることで就職でき恋人まで手に入れることができた日々をどうにか守りたいと奮闘します。
徐にはその動きがバレ、ついに紗穂里まで手が伸びそうなところで、意を決して警察に全てを話すことにしました。
自分が前科者であり、自分ことを好きだと思っていた人が勘違いでストーカーになってしまったこと、パニックになって傷害事件を起こしてしまったことを告白した上で警察に自分が死体遺棄の現場を目撃した本人であると告白するのです。
警察はその目撃証言で令状を手にすることができ、徐の家を家宅捜索することになります。
風呂場にはモロに切り刻まれた死体があり、徐が犯人であるとわかりました。
しかし、紗穂里から連絡が入り今、徐に追われているとのこと。
神足と警察は徐の新たな犠牲者を増やさないためにも、紗穂里を助けに向かいます。
なんとか紗穂里を助けることができ、一件落着となるはずが、家に帰ると紗穂里の証言におかしいとこを見つける神足。
確認しに行こうとすると、紗穂里が襲ってきたのです。
カミソリで完全に殺しに来ている紗穂里。パニックになる中警察が踏み込んできたおかげで、神足は助かり、紗穂里は警察に捕まっていきました。
事件の真相はこうです。
紗穂里は胸に傷があることをコンプレックスに思っており、女性で綺麗な胸をしているのが許せず殺す。
徐はその死体をバラバラにして処理していただけでした。
徐は以前に紗穂里に日本語を教えてもらった恩があり、恩返しのつもりでやっていたとのこと。
神足はせっかく手に入れた幸せを無くしてしまったものの、一安心して今日は安眠できることでしょう。という形で物語は幕を閉じました。
思い込みの怖さ(ネタバレあり)
お見込みって怖いものです。
神足自身もストーカーの前科があり、その原因も完全に思い込み。
職場の後輩が自分に好意があると勘違いし、勝手に恋人関係になったと思い込み結婚指輪まで購入したというもの。
その結果勘違いだとわかり、傷害事件にまで及んでしまい逮捕されたわけでした。
それとは別の思い込みが徐です。
徐も、日本語を親切心で教えてくれた紗穂里に思い込みをしてしまいます。
紗穂里が女神で自分を助けてくれたありがたい存在だと思い込んでしまうのです。
その結果、死体が出るのは神様が間違えてしまったこと。
だから自分がフォローしないといけないと感じたのです。
その結果バラバラにして死体を処理することが自分の使命と勘違いし、紗穂里のあとをつけ紗穂里が殺人をしたら自分が処理をするというルーティンが生まれてしまいました。
思い込み、勘違いによって生まれた事件。
もしも勘違いがなければ紗穂里が一人目を殺害した時点で、証拠があがり他の被害者は出なかったことでしょう。
徐もある意味では被害者なのかもしれません。
さらに言うなら紗穂里も、元々は工場で起こった事故によって胸に傷跡が残ってしまったのが動機でした。
工場が徹底した安全管理をしていれば起こらなかったのかもしれません。
と、最近覚えた原因分析で考えてみました。
とにかく、思い込みって怖い。人の信じる心って素晴らしいけど怖いもの。
そんなことを改めて気付かされた一冊でした。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
ジェイソンや切り裂きジャックなど、ホラー系の作品は苦手でしたが、ハラハラドキドキの楽しみ方を知ってからは堪りません!
「隣のシリアルキラー」もシリアルキラーの恐怖からのまさかのオチは素晴らしかったです。
背筋は凍りませんでしたが、手汗が止まりませんでした。
怖い系のミステリーやハラハラドキドキしたい方、隣人がもしかしたらヤバイやつかも?と思っている方はぜひとも読んでみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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