僕が神様です。
と、言われて信じられるでしょうか?
もし現れたらいろいろ質問をして正体を暴こうとするでしょうか?
実は、神様なんて知らない方がずっと幸せかもしれません!
今回紹介する麻耶雄嵩さんの「神様ゲーム」は、小学生・芳雄(よしお)のクラスメイトが神と名乗るところから事件に巻き込まれていく話。
神様がいた方がいいか、いない方がいいのか。あなたの目で確かめてほしい内容になっています。
この記事では、そんな「神様ゲーム」のあらすじから感想、ネタバレありのオチの僕の解釈について解説していきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
10歳の誕生日を迎えた小学生の芳雄(よしお)がこの物語の主人公。
彼の街では連続して、猫の殺人事件が発生していた。
同級生と共に結成した少年探偵団は、犯人探しを行うことにした。
そんなある日、転入してきたクラスメイト鈴木くんに「僕は神様なんだ」と唐突に言われる。
驚きと疑いを隠せない芳雄は、鈴木くんは嘘を言っている、もしくは何かのゲームだと思い色々と質問をしてみる。
かなり信憑性も高く遂には猫殺しの犯人まで知っていると言い出した鈴木くん。
半信半疑のまま猫殺しの犯人を罠に嵌めることを思いつく探偵団だったが、探偵団の本部に集まるとそこで死体を発見してしまう。
遂に猫殺しの犯人は殺人にまで手を出したのか!?
神様は本物なのか、神様の言う通りまだ被害者は出るのか。
そして鈴木くんは芳雄に語りかける「天誅してあげようか?」と。
探偵団が集まるところにあった死体の真実とは、神によって導き出される答えと芳雄が出会う真実。
最後の最後できっとあなたは絶句する。
書評:小学生探偵の話かと思いきや神登場(ネタバレなし)
ミステリーの一種の定番はやはり探偵たちが謎解きを華麗に披露し、事件を解決するものと思います。
当初「神様ゲーム」も同じく探偵団という集団が出てきて主人公である芳雄もそれに参加しているので、少年探偵が謎を紐解いていくスタイルだと思った。
しかし、途中で一変、このミステリーは少年探偵や猫殺しだけでは収まらないスケールの大きなミステリーだったのです。
ズバリ神様が出てくるのです。
神様が出るなんてミステリーとしてどうなの?と言う方もいるかもしれませんが、安心してください。
神様はあくまでサブ、大事なのは芳雄という主人公がどうやって謎を解いていくかなのです。
もちろんミステリーの醍醐味である謎というのもきちんと描かれており、また複雑に絡まっています。
ここに神様が助言をすることで一気に絡まった糸が解けていくというスタイルで描かれる物語なのです。
なので、神様が力を持ちすぎて小説のバランスが崩れることもなく、本当に神様なのか怪しい部分を残しています。
人間による人間の事情による事件です。
神様がいるからこそたどり着いた真実ではありますが、決してずるいという感想にはならないと思います。
むしろ、神様なんていない方がいいと思ってしまうほど、衝撃的なラストです。
そのため、「神様ゲーム」は割と賛否両論な評価になると思います。
「神様ゲーム」は限りなく悲しく苦しい話で、正直明るい気持ちで読み終わる作品ではありません。
心にしこりを残していくような少しブラックな作品(イヤミス)です。
なので、「神様ゲーム」は非常に読者を選びます。
少年が主人公だから爽やかな物語かな?と思ったら大間違い!
神様という存在を通して、傷ついていく人間たちを見ていく物語なのです。
おすすめ度
「神様ゲーム」のおすすめ度は、5点満点中3.5点です。
伏線好きや衝撃的な作品が好きな方には、間違い無くおすすめできますが、万人にはおすすめできないという評価。
僕としては満点で読んでよかった作品ではあるものの、ラストの衝撃と暗さでトラウマになる方もいそうなのでちょっとおすすめ度を下げています。
とはいえ、これぞフィクションの醍醐味なので、ぜひ読んでほしいですね。
書評:犯人ありきの推理という新しい方向性(ネタバレなし)
俳優が有名人だから、きっと犯人はこいつだろう。というような犯人当てを実写ではするかと思います。
少なくとも僕は割と8割くらいで犯人を役者で当てることができる自信があります。
実写映画やドラマの悪いところではありますが、今回紹介している「神様ゲーム」でも似たようなところはあると思いました。
神様がズバリ犯人の名前を言うのです。
推理をすっ飛ばして答えをポンと渡されるような感じ。
主人公芳雄は与えられた答えから逆算して犯人の過程を推理するという新しい方向性で推理が展開していくのです。
衝撃的な犯人を言われ、動揺しているうちにいつの間にか論理的な過程が芳雄によってもたらされる体験を読者はします。
僕もかなり衝撃を受けながら読み進めました。
1ページ1ページが油断ならない感じです。
それこそ1行で世界が変わるのような体験ができる作品だと思います。
伏線によってもたらされるゾクゾク感はないですが、残酷すぎる話の展開に鳥肌や怒り、焦燥感を感じる作品だと思います。
残酷すぎる話の展開に震えること間違いなしです。
僕はこういったブラックな作品はかなり好きなので、問題なく読み進められましたが、かなり辛い部分が多い作品で最終的に報われない作品でもあるので、心の弱い方は読むのが辛いかもしれません。
優しい人には辛すぎる一冊だと思います。
でも、実際現実ってこんなもんですよって思いますが。
真実を知れるだけマシかもと思えるようなポジティブな方ならかなり楽しめると思います。
僕は決してすごいポジティブな方ではないですが、犯人から推理を展開するという斬新なスタイルにワクワクしながら読み進められました。
ネタバレありオチの解説・考察
ここからはオチについてのネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめまで飛んでください。
ではネタバレしながら、「神様ゲーム」のオチについて僕なりの解釈をお話ししていきます。
「神様ゲーム」のオチはミチルちゃんの共犯者がお父さんだと思っていたら実はお母さんだったというものでした。
ミチルちゃんが犯人だったこと自体驚きだったのに、芳雄の推理ではお父さんが共犯者だったのに実はお母さんだったという話は驚きと共に疑問が残る部分も多いのではないでしょうか。
僕なりの解釈についてお話しします。
芳雄の推理ではミチルちゃんと関係を持っていたお父さんが、実は物置小屋に隠れていたというトリックでした。
しかし共犯者がお母さんということで物置小屋の足跡がなかったというトリックは使えません(足跡がないというのはお父さんの証言のため)
では、お母さんは裏庭のどこに隠れていたのでしょうか?
僕の考察ではお母さんは物置小屋にいたんだと思います。
井戸の蓋の裏に隠れていた説もかなり有力だとは思いますが、さすがに大人は隠れられないと思うんです。
それくらいならお父さんが小屋を確認した時に足跡は実はあった説を推したいと思います。
足跡があったけどお父さんはお母さんのものであるとすぐにわかったので隠蔽したということです。
一瞬でそこまでわかるのかはちょっと疑惑が残る部分だと思いますが、誰だって悪いことをするという意味では警察官が隠蔽をしたという話の展開的に大いにありえると思います。
もしくは足跡だけでなくそもそもお母さんが小屋に居た説。
小屋を開けた時お母さんがいて、全てを理解したお父さんは誰もいないことにした。なんてのもありえると思います。
ここまで、鈴木くんが神様である前提で話してきましたが、鈴木くんが神様じゃなかった場合を考えるとややこしくなりますので割愛します。
疑問が残るオチだったので、さまざまな考察が上がっていて面白かったです。
お父さんにとっての天誅はお母さんが死ぬことというのも中々面白いと感じました。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回はかなりブラックな「神様ゲーム」を紹介・考察してきました。
辛い展開が多いので読者はかなり選ぶと思います。僕は好きな部類でしたが、嫌いな人も多そうです。
そもそも小学生が主人公なのに辛すぎるんじゃないか?って思います。
未来への希望がどんどん失われる感が辛さを表現されているのです。
神様も未来も嫌になってくるかと思いますが、あくまで小説です。
現実はもっと辛いものかもしれませんし、もっとハッピーだらけかもしれません。
フィクションの醍醐味、ありえない世界でさまざまな人の心を知れる。
そんな体験ができる一冊だと思います。
ブラックな内容にあなたのメンタルは耐えられますか?
神様が送る挑戦状、受けてみてはいかがでしょうか?
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