やられたらやり返す、倍返しだ!!
なんて言葉が流行ったのも昔、今回紹介する道尾秀介さんの「カエルの小指」はまさに復讐を一つのテーマにした作品でした。
詐欺師に騙され、ショッピングモールの屋上から飛び降りた母の復讐のため詐欺師を探そうとする中学生。
そんな中学生に協力をする元詐欺師、設定を聞くだけでもワクワクするストーリー、「カラスの親指」というこれまた傑作の続編です。
今回もかなりどんでん返しがすごい一冊になっていました。
この記事では、そんな「カエルの小指」の内容をまとめて紹介します。
では、いってみましょう!
あらすじ
詐欺師から足を洗い、実演販売士として生きる道を選んだ竹沢竹夫(たけざわ たけお)の元に、訳ありの中学生・キョウがやってくる。
母親が残酷な詐欺被害に遭い、復讐をしたいとのこと。
母親を知っていた竹沢は、今日を救うためにかつての仲間を集め、大仕掛けの計画を実行する。
計画は順調に進むと思われた中、さまざまな思惑が交差し物語は思わぬ方向へと帰着する?
本当に騙されていたのは誰なのか。
本書の概要
ページ数
解説を含めず436ページ、全445ページでした。
読むのにかかった時間
大体6時間ほどで読み切ることができました。
構成
主人公の竹沢を主軸とした三人称による長編ミステリーです。
一部、視点が竹沢以外のメンバーになることもあります。
「カラスの親指」の続編ではあるものの、「カエルの小指」だけでも楽しむことはできます。
「カラスの親指」を読んでいると登場人物の発言の理由などがわかり、より楽しめるという位置付けです。
書評(ネタバレなし)
やっぱりすげぇ、けど良い話すぎて僕は不満!というのが正直な感想でした。
前作である「カラスの親指」も非常によくできた話で、まさに大どんでん返し!という話で、今回も期待して読みました。
大概期待すると、裏切られるものですが、今回は違いました。
ちゃんとどんでん返しで、きちんと読者を騙してくれる仕掛けがあったのです。
やっぱりすげぇ。という感想はそこから来たもの。
この話の展開でどう騙すんだ?と期待半分、疑問半分なところでちゃんと裏がある。「おお」っとついつい声が出ちゃいましたので、読む時は一人の時をおすすめします。
ただ、最後の締めが僕の好みではありませんでした。
どうしても、良い話にまとまりすぎているのが気に入りません。
僕としては多少バッドエンドやしこりが残る感じが好みなのです。
なので、良い話すぎる、都合が良すぎる。なんて部分が肌に合わない部分でした。
とはいえ、やはり物語の展開も、オチも大どんでん返しも素晴らしく読みやすいという点も、全てが非常にクオリティの高い作品だと思います。
おすすめ度
道尾秀介さんの「カエルの小指」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
「カラスの親指」を読まなくてもわかる内容ですが、読んでおくことをおすすめします。
なので、その分おすすめ度をちょっと下げている結果です。
前作を読まないと楽しみ半減という意味で、点数を下げつつも物語の面白さできっちり高得点な印象でした。
どんでん返しも綺麗で、ハッピーエンドだけちょっと気に入らない部分でしたが多くの方にはハマる内容だと思います。
「家族」「復讐」というわかりやすいテーマであるのも良くて、最後には感動できる。という点からもおすすめできますね。
気になる方は、ぜひ「カエルの小指」読んでみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
竹沢が実演販売をしているところに現れた一人の女子中学生キョウ。
竹沢が帰るところに再度現れ、「責任をとるべき」と言います。
なんのことやらと話を聞いていくと、キョウの母親は昔自殺をしようとしたところを竹沢に止められたとのことだった。
母が自殺していれば、自分はこんな辛い思いをしなかったというのです。
また、父親は母に子供ができた時点で面倒を見ないという誓約書を書いていたと話します。
キョウの母親は、ナガミネという詐欺師に騙され、それを苦にショッピングモールから飛び降り自殺をしたとのことでした。
ナガミネをどうにか見つけ、復讐をしたいというキョウ。
詐欺師から足を洗ったものの、責任の一端を感じた竹沢はその依頼を受けることにしました。
かつての仲間である、まひろ、やひろ、貫太郎と、やひろと貫太郎の息子であるテツを加え、ナガミネを騙す計画を進めます。
計画はシンプルで、まひろという囮を用意してナガミネを誘い出す。ナガミネはまひろを騙して金をむしり取ってくる。
ある程度騙されたところで、テレビ番組の一つである詐欺師を打倒する番組に告発してナガミネを全国放送で辱める。というものでした。
並行して、ナガミネたち詐欺グループの根城を見つけ、騙された金を奪うという作戦もありました。
計画は順調に進みますが、キョウにだけ秘密にしていたことがあります。
実は、キョウが見ているナガミネというのは、実は本物ではなく竹沢が用意した偽の人物だったのです。
竹沢はキョウに復讐で人を騙させないために、偽の人物をナガミネとしていました。
そして、最終局面で母が自殺したショッピングモールにナガミネを連れてきます。
いよいよカメラでナガミネが詐欺を図るところを撮影するってところで、突然キョウが現れるのです。
そして、ナガミネに向かって突進するところで竹沢はキョウに騙されていたことに気づきます。
キョウは最初から、ナガミネを殺そうとし、父親である番組MCにその現場をカメラ越しで見させようとしていたのです。
竹沢は止めようとするも、止まらずナガミネにぶつかったキョウ。
偽物と知らずにぶつかったものの、体が浮くくらいで、落ちはしませんでした。
最終的にその場から逃げ、番組オファーについても白紙に戻してもらうことに。
最後は竹沢とキョウで語り合う場面になりました。
お互いがお互いを騙そうとしていたこと、実は死んだと思われた母親は寝たきりだが生きていること、父親は娘がナガミネに突進する姿を見て謝りに来たこと。
父親はキョウに母の医療費とともに、定期的に二人であることを了承させたこと。
ちょっと嬉しそうなキョウにほっこりする場面、母親が起きそう。という場面で物語は幕を閉じました。
騙し騙されを整理して解説(ネタバレあり)
ネタバレ続きます。
ここでは竹沢が騙し、キョウが騙していた内容について解説します。
まず母親が実は生きていたというのは、キョウが意図したことではなく竹沢が勘違いしていたことでした。
なので、キョウが騙していたのは、ナガミネをショッピングモールから突き落とし、その場面を父親である番組MCに見せつけることでした。
それを知らずに、竹沢はナガミネに単に番組に取り上げさせることで満足すると思っていました。
竹沢はキョウに対して、本物のナガミネと偽り、代役にナガミネを演じさせ本物の詐欺には関与させないようにしていました。
竹沢は本物のナガミネにGPSをつけて根城を明らかにして、金を奪う犯罪を実は犯していたのでした。
お互いが騙し合っていたというのが「カエルの小指」のオチでした。
最終的にはキョウは、竹沢たちを殺人に関与させないためにナガミネ(代役)を突き落とさずに終わったという話だったのです。
騙し合いながらも、お互いを思っている優しさで感動。
最後に父親である番組MCと仲良くなりつつある家族の形で感動するという2段階の感動も見どころでした。
大どんでん返しも、お互いが騙し合っていたというもの。
竹沢だけかと思ったらキョウも騙していたところには驚きました。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、道尾秀介さんの「カエルの小指」を紹介して来ました。
前作と同じ登場人物に加え、前作同様のどんでん返しの素晴らしさな一冊でした。
ハッピーエンドすぎるのがちょっと嫌いでしたが、とはいえ作品として非常にクオリティの高かったです。
多くの方におすすめできるので、ぜひ、前作と一緒に読んでみてください。(前作である「カラスの親指」を読んでいなくても話は通じると思います)
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
コメント