5分でわかる町田そのこ「52ヘルツのクジラたち」書評&ネタバレ要約・解説

小説の書評

他のクジラが聞き取れない高い周波数で鳴くクジラがいることをご存知ですか?

他のクジラに聞き取れないので、そのクジラは孤独です。

今回紹介する町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」は人間でも声が届かない孤独な人たちがいます。

そんな人たちをテーマに心温まる物語が紡がれるのです。

この記事では「52ヘルツのクジラたち」のあらすじから、書評、一部ネタバレありの要約を行っていきます。

では、いってみましょう!

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あらすじ

52ヘルツのクジラとは、他のクジラが聞き取れない高い周波数でなく世界で一頭だけのクジラ。

何も届かない、何も届けられない。そのためこの世の中で1番孤独だと言われている。

人間の中にもそんな人たちがいる。

自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚(きこ)と母に虐待され「ムシ」と呼ばれる少年。

孤独な二人が出会った時、魂の物語が動き出す。

貴瑚の抱える過去とは。

少年と貴瑚の運命はどうなるのか?

本書の概要

ページ数

解説含めず305ページ、全314ページでした。

読むのにかかった時間

大体3時間半ほどで読み切ることができました。

構成

貴瑚(きこ)の視点で描かれる三人称の文体で、貴瑚の謎を含んだ過去を紹介しつつ現在を描いた構成になっていました。

文章が非常に読みやすく、状況整理や人物整理もしやすい物語になっていました。

書評(ネタバレなし)

自分って恵まれた人生だったんだな。とつくづく感じた物語でした。

「52ヘルツのクジラたち」では孤独な人生を送ってきた主人公・貴瑚と虐待で苦しむ少年が出てきます。

この二人ともが、本当に辛そう。

僕が小説に感情移入しやすい体質というのを取っても、とにかく辛くなってしまいます。

親に特にひどいことをされた記憶がない僕としては自分って非常に恵まれているんだな。と物語の中なのに思いました。

それくらいリアルな描写と目を背けたくなるリアルがそこに描かれていたのです。

孤独の辛さ、声が届かない感じ。が見事書かれていて、最後にはちょっぴりハッピーエンドになるのでそこは良かったかなと思います。

物語全体も読みやすい構成で起承転結が描かれていて、貴瑚の過去とこれからがとにかく気になる話になっているのです。

加速度的に面白くなっていき、貴瑚の過去なんかは見事に現代に繋がっている感じが良かった。

笑いは少ないものの、とにかく心打たれる作品だったと思います。

本屋大賞にノミネートされるのもうなづける感動的なラストも非常に良かったです。

おすすめ度

おすすめ度は5点満中、4.5点です。

ほぼ全ての人におすすめできる一冊だと思います。

若干点数が低いのは孤独がつらすぎて目を背けたくなるところがあるからです。

痛々しい虐待のシーンが描かれるわけではないのですが、途中胸糞が悪くなる場面が多々あります。

胸糞悪くて途中で投げ出してしまう可能性も考慮して4.5点という評価です。

とはいえ、とにかく感動したい方、心打たれる小説を読んでみたい方には特におすすめで、読んで後悔することはない作品だと思います。

逆に読まないと後悔する作品だといっても過言ではありません。

最後の最後で、孤独同士が紡ぎ出す未来にぜひとも感動してみてください。

要約・あらすじ(ネタバレあり)

ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありのあらすじ要約からしていきます。

主人公の貴瑚は大分に引っ越してきました。

親も友達も置いて、完全単独での一人生活を謳歌するために祖母の家を相続する形でやってきたのです。

貴瑚は子供の頃から孤独でした。

貴瑚は母親の連れ子で、再婚相手である義父から嫌われていました。

さらに義父と母の間には弟ができ、弟に愛が全てそそられ、貴瑚自身への愛は皆無でした。

言葉の暴力は当たり前、飯抜きも、トイレに軟禁というのもありました。

そんな中大人になり、義父は病気に倒れ貴瑚は介護をさせられることに。

義父はボケながらも貴瑚を罵り、時に杖で殴りつけることもしました。

そんなある日、貴瑚は運命の出会いをするのです。

運命の相手はアンさん。貴瑚の状況に割って入って実家から連れ出してくれました。

貴瑚はアンさんと高校の頃の友達・美春に助けられ、一人で生活するようになりました。

そんな中貴瑚は仕事場で恋人を作り、ハッピーな生活をし始めました。しかしハッピーな人生はそう長くは続かず。

アンさんは貴瑚の恋人はひどい人物であると言い出すのです。

貴瑚は聞く耳を持たず恋人と将来を約束しようとするも、恋人には実は婚約者がいることが判明します。

貴瑚はそれでも好きな気持ちを抑えられず愛人という形でも良いからそばにいることにします。

アンさんはそんな貴瑚を見捨てられず、恋人に対して貴瑚と別れるように愛人関係を暴露する形で動きました。

恋人はそんなアンさんの動きに怒り、貴瑚にも暴力を振るうようになってしまいました。

そして、アンさんは命がけで恋人に別れて欲しいと訴えるものの、恋人は嘲笑うだけ。

ついにはアンさんは自殺してしまい、貴瑚もそのショックで恋人に包丁で襲い掛かり、逆に自分が重傷を負うこととなってしまったのです。

示談金で大分にやってきた貴瑚でしたが、孤独で過ごしたいと思っていた中、一人の少年と出会うのです。

その少年は母親に虐待されていて「ムシ」と呼ばれるほど嫌われていました。

自分の境遇と重なった貴瑚はそんな少年を助けることを誓います。

母親以外の親戚を探しつつ、一緒に暮らせる道を探すのです。

最終的には少年を引き取るにはあと2年離れ離れで暮らす他ないということがわかります。

それでも2年後に一緒に住めるようにそれぞれ準備をしようという話にまとまります。

少年は虐待のショックで言葉を発することができない中、ついには貴瑚の名前を呼べるようになるのです。

二人は抱き合い、孤独な二人に光がさして物語は幕を閉じました。

クジラの意味を解説(ネタバレあり)

終盤に出てくるクジラについて補足解説をここではします。

ズバリ、貴瑚がやってきた時に現れて、貴瑚と少年が新たな道を歩むと決めた時にいなくなったクジラです。

正体はアンさんだろうという推察がなされます。

その推察に完全同意で、あのクジラはアンさんの生まれ変わりだったのだと思います。

現実的ではないものの、フィクションの世界ですからそのくらいの幸せな生まれ変わりがあっても良いでしょう。

アンさんの自殺も正直可哀想な話で、トランスジェンダーであるが故の生きづらさと、貴瑚を思う気持ちでせめぎ合った中、貴瑚の恋人に辛辣なことをされ耐えきれずに自殺を選んだのでした。

そんなアンさんがクジラになって貴瑚を見守っている。

そんな解釈がラストのクジラには言えると思います。

またそのクジラは52ヘルツのクジラで孤独なんだとも思うのです。

最後の最後まで孤独な存在が集まった物語であるという意味も込められていると僕は推察します。

まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。

今回は、町田そのこさんの「52ヘルツのクジラたち」を紹介してきました。

孤独な存在たちが紡ぎ出す物語に心を打たれました。

自分って恵まれているなと思いつつ、自分も魂の番に出会いたいと思った次第です。

では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

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