見た目が異なる人をどう思いますか?
今回紹介する道尾秀介さんの「片眼の猿」は見た目が平均的な人とは異なる人が登場するミステリー小説です。
ミステリー要素が強い中、どこか不思議な雰囲気で最後には人の見た目での判断が辛いものかがわかる一冊。
一人でも多くの方に読んでほしいと思いました。
この記事では、そんな「片眼の猿」の内容を一部ネタバレありで紹介していきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
盗聴専門の探偵・三梨。目下の仕事は産業スパイを洗い出すこと。
楽器メーカーからの依頼でライバル者の調査を続けるうちに、冬絵の存在を知り、同業者だった彼女をスカウトした。
チームプレイで産業スパイの核心に迫ろうとする中、殺人事件に巻き込まれる。
さらに冬絵の過去、三梨の過去が絡み合い、事件は複雑化していく。
果たして殺人事件と冬絵の関係、三梨の過去と彼らを取り巻く人たちの真実とは?
本書の概要
ページ数
解説含めず342ページ、全350ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間ほどで読み切ることができました。
構成
主人公である三梨の一人称視点で描かれる構成でした。
書評(ネタバレなし)
良いミステリーなのにメッセージ性も強いのか~というのが僕の感想です。
盗聴専門の探偵というのが魅力的な作品でグイグイ引き込まれていくうちに、急に起こる殺人事件。
そこから主人公や主人公を取り巻く環境の過去が徐々に明るみになりつつも、より一層深い謎を呼び込み最終的に見事に解けました。
ミステリーの王道というべき話の展開に脱帽です。
また、常に何か裏がありそうな書き方も良くて、道尾秀介さんの別作品を読んだことある方ならこの裏がありそうな感じがわかるはず。
そして、最終的にはやっぱりね。とともにそういうことだったんだ!となるはずです。
意外な結末ながらも、決して奇抜すぎるわけではない絶妙なラインを攻め切ったと思います。
また、メッセージ性も強いのもよかったです。
ただのミステリーでは終わらず、登場人物にも読者にも響く言葉が紡がれる一冊で、詳しくは書きませんが全国民、全人類に読んでほしいほど納得する考えが書かれていました。
タイトルの意味にも繋がる深い話なので、ぜひ読んでみてほしいです。
おすすめ度
道尾秀介さんの「片眼の猿」のおすすめ度は5点満点中4.5点です。
正直、最高におすすめできるミステリーだと思います。
唯一若干点数を落としたのは、最後の驚き度ですね。
僕の好みはやはり驚いて震えるラストが待っていることがあります。
正直、ちょっと予想の範囲内の驚きだったのが残念ポイントでした。
道尾秀介さんの他の作品「向日葵の咲かない夏」とか読んでいると驚き度は下がってしまいます。
とはいえ、それ以外は完璧な内容で、見事なテンポとミステリーの構成、最後に全ての謎が解ける読後感、メッセージ性による心を掴まれる感じ、全てが良かったです。
辛口すぎる僕だから、0.5点分おすすめ度を下げていますが、ぜひ一人でも多くの方に読んでほしいと思います。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの内容要約・あらすじからやっていきます。
盗聴専門の探偵である三梨は、楽器メーカーからの依頼を受け産業スパイを探していました。
職員たちの話を聞く中で、冬絵という人物を見つけます。
冬絵もまた探偵として働いていたので、三梨はスカウトすることにし、一緒に働くことになりました。
一緒に産業スパイを見つけるべく、ビルに潜入し証拠となる資料を探すも見つからず、次の機会を伺うことにしたところで事件が起こります。
三梨が盗聴している最中に、殺人事件が発生したのです。
タブチという女性の声だけを聞いていた三梨はタブチこそ、犯人であると推理しますが警察に目をつけられたくないのでその情報は隠し、依頼主である楽器メーカーにも警察には話さないでくれと念を押します。
そんな中、三梨の過去が少し垣間見え、7年前に一緒に住んでいた秋絵を思い出します。
秋絵は突然三梨の元を離れ、樹海で自殺していたのでした。
思い出とともに、冬絵のアリバイが気になり出した三梨。
ただ冬絵に気が合った三梨は言い出せず、探偵事務所が入っているアパートの住人と仲良く日々を過ごしていた。
秋絵の自殺理由を考えているうちに、冬絵が前の探偵事務所を辞めていないこと、冬絵の勤めていた探偵事務所は悪どい手法で設けており、冬絵もかつて自殺に追い込んだ経験を持っていることを知る。
冬絵が自殺に追い込んだ人物=秋絵という可能性を考え、問い詰めようとするも冬絵はかつての探偵事務所の連中に拉致されてしまう。
助けに行く三梨だったかが、返り討ちにあう。そこに探偵事務所が入っているアパートの住人たちが助けに来てくれなんとか逃げることに成功する。
冬絵が自殺に追い込んだ人物が秋絵でないと、かつての記録を見て判明し安心するものの、ある映像を見つけて秋絵の自殺理由に気づく三梨。
秋絵は実は男だったのだ。秋絵は体と心の性別が一致しておらず苦しんでいたのだ。
そんな中、三梨と出会い自殺未遂まで犯した気持ちが落ち着いてきたところに、トイレを盗撮した映像に秋絵が写ってしまいそれでゆすられたのだった。
生きづらい世の中に嫌気がさして、ついには自殺してしまった真実を知り、悲しむ三梨。
そして、殺人事件の謎も解きに行く。
殺人事件は、三梨に産業スパイを探してくれと依頼してきた部長が犯人だった。
彼が、横領を隠すために事務の女性と手を組んでやったことだと判明する。
事件の謎が解け、無事に探偵事務所に帰宅する三梨。
そこで待つのは、鼻のない師匠、目の見えない奥さん、片腕がそれぞれない双子、足のない事務員。
そう探偵事務所の入るアパートの住人は、平均的な人たちとは異なる見た目の人たちだったのです。
でも、全員が前向きに生きている。だから君も小さな目をコンプレックスに思う必要なんてない。と耳がない三梨は冬絵に語り、物語は幕を閉じます。
伏線回収を解説(ネタバレあり)
ネタバレ続きます。
この小説の驚きポイントは、三梨の耳でしょう。
三梨の盗聴というのは、優れた耳を使った特殊能力のように描かれていましたが、実は耳がない三梨は盗聴器を使って盗聴を行っているという話でした。
これを隠すように鼻が大きいから鼻が効くという犬の話があったり、耳を隠すようなヘッドホンをしているというのがあったのです。
他にもアパートの住人が体の一部を欠損していることも、見事に伏線として描かれており、途中出てくるトランプの話が伏線となっていました。
耳が大きいというコンプレックスだと思われたのが、実は耳がないというオチでした。
勘違いを利用した見事な伏線と騙しのテクニックだと思います。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は道尾秀介さんの「片眼の猿」を紹介してきました。
非常に良くできたミステリーかつメッセージ性が強い内容で、一人でも多くの方に読んでほしいと思います。
ただ、驚き度としてはちょっと物足りなさを感じるので、伏線回収のヤバさに鳥肌を覚えたい方は「向日葵の咲かない夏」を僕は推したいですね。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
コメント