おれの殺人を言葉で止めてみろ。犯人と記者の言葉の戦い。
それが魅力の一本木透さんの「だから殺せなかった」です。
この記事ではそんな「だから殺せなかった」の内容を一部ネタバレありで紹介していきます。
では、いってみましょう!

あらすじ

「おれは首都圏連続殺人事件の真犯人だ」大手新聞社の社会部記者に届いた一通の手紙。
送り主は犯人しか知り得ない凶行の様子を詳述した上で、記者に対して紙上での公開討論を要求してくる。
殺人犯と記者の対話。
始まるや否や苛烈な報道の波に飲み込まれて行く。果たして絶対の自信を持つ犯人の目的とは?
犯人の正体とは?
本の概要

ページ数
全316ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間ほどの時間で読み切ることができました。
構成
一本木透と江原陽一郎の視点で描かれる一人称型の内容でした。
章ごとにそれぞれの視点で描かれることで、事件の全容が感情を込めて理解できる構成になっていました。
おすすめ度

一本木透さんの「だから殺せなかった」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
多くの人におすすめできる一冊という評価。
社会テーマをうまくミステリーと絡めた作品で、見事に絡まった糸からのほぐしを表現しています。
また、最後の最後でタイトルの伏線が回収される様も秀逸でした。
二つの視点で徐々にキャラクターに感情移入していって、ハラハラ感もあり良かったです。
ミステリーとしての伏線回収とちょうどいい量の謎と謎解きの明瞭さも良かった。
ただ、驚きという面では少し弱さを感じました。というのも登場人物が限られていて真犯人を推理するのは決して難しくはないからです。
読者視点だとどうしても、登場人物の雰囲気で犯人がわかってしまう点はうまくカバーしきれなかったと思います。
とはいえ、面白い話と新聞での討論という構図、ミステリーとしての謎解き要素とスピード感は良かったです。
ぜひ、気になる方は読んでみてください。
書評(ネタバレなし)

まさか、そう結末をつけるとは思わなかった!というのが僕の正直な感想です。
衝撃的な展開ではないものの、驚かされる事実が最後に披露されるのはよかった。
まさかタイトルにそんな意味が隠されていたなんて、と思えたのです。
犯人との新聞の上での討論から、ハラハラさせる要素かと思いきや実はそれは犯人のミスだったりと見事すぎる話の展開も良かったと思います。
犯人自体にはあまり驚かなかったですが、動機からの最後の最後の真実は予想できなかったです。
まさかそんな結末に持ってくるなんて。という言葉がぴったりの作品で、これほど絡み合った事情がうまく盛り込まれた作品は少ないんじゃないかと思います。
絡み合った謎と謎と事実と事実が気になる方は特に気にいると思いますね。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約あらすじからやって行きます。
首都圏で連続殺人事件が発生していました。
現場に残されていたタバコから同一犯であることはわかっていたものの、警察のデータベースに記録はなく犯人探しに苦労している中
犯人からの手紙が、一本木透の務める新聞社に届きました。
「俺の殺人を言葉で止めてみろ」と語る犯人。
人をウイルスに例え、ワクチンと名乗り無差別殺人をしていると語る。
一本木は本当に無差別なのか、本当の動機が隠れているのではないかと新聞に文書を載せることで訴えかける。
ワクチンはなおも無差別を主張するも、その裏に見え隠れする真の目的。
さらに殺人を起こし、今度は脅迫文をさまざまな家庭に投函したと言う。
一本木の元には脅迫文を受け取ったという人がどっと押し寄せる。
そんな中、本物の脅迫文を受け取ったとされる青年と出会い、その子の生い立ちを聞く。
青年は本物の両親に山に捨てられており、今の父と母は育ての親で血は繋がっていなかった。
そんな中、母が癌で死に、最後に残った父が脅迫文を受け取ったとのことだった。
一本木は真剣に話を聞きつつ、ワクチンの殺人による被害者遺族を追う中でワクチンに迫る手がかりを手にする。
そして、最終的にはワクチンは青年の父親であることを暴く。
青年の父親は、自分自身が虐待されながら育った経験を持っており、実は被害者たちは全員が子供に虐待をしていた父親だったのだ。
最後にはワクチンが著名人であるように見せかけるものの、一本木には見破られてしまい、結局は青年の父親は捕まることになってしまう。
ただ、一本木は最後の最後の真実までには辿り着けなかった。
実は青年の本当の父親は一本木自身であったことだ。
青年は、その事実を知りながらも、自分を育ててくれたワクチンこそが本当の父親であるとして話は幕を閉じた。
結末の解説(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
話の結末について詳細に解説して行きます。
青年・江原陽一郎の父である江原茂が犯人でした。
動機は茂が過去に父親からの虐待を受けてきて、それを実行している父親に怒りを覚えたためでした。
茂の妻も同じく虐待された経験を持っており、そんな妻が癌で亡くなってしまうことでこれまで我慢してきた虐待への恨みが爆発したという話。
茂は陽一郎は実の子供ではなかったですが、愛を持って接しており殺人鬼の息子にしたくない気持ちもあったため罪をうまく誤魔化すよう頭をフルに使っていました。
ですが、陽一郎に疑われるのを避けすぎたせいで、墓穴を掘ってしまい、脅迫文をばら撒くということをしてしまったのです。
これによって一本木に違和感をもたれ、最終的に犯人と看破されてしまいました。
陽一郎の父親は、一見、小説内の著名人かと思われましたが実は一本木透です。
一本木は昔付き合って自殺させてしまった女性との間に子供がいたのでした。
実はその子こそが陽一郎で、最終的に一本木はこの事実を知ることはありません。
陽一郎は知った上で、それでも父親は茂であるとしました。
この事実こそが、驚きを与える結末でした。
まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。
今回は、一本木透さんの「だから殺せなかった」を紹介してきました。
見事に色々な糸が絡まったミステリーでした。
気になる方はぜひ、チェックしてみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

