5分でわかる望月諒子「蟻の棲み家」書評&ネタバレ要約

小説の書評

帯に書かれたミステリー史上最大の大どんでん返しは本物か?

ネグレクトされた子供がどうのように大人になるか、もしも犯罪を起こした犯人の親が虐待をしていたと知ったらあなたはどう思いますか?

あー犯人も可哀想に、親が親だから子供がそんなことしちゃうのね。なんて思いますか?

子供は親を選べないように、親も子供を選べません。

親子という深く根深い問題をテーマにしたミステリーでありつつ、きちんと大どんでん返しがある一冊が「蟻の棲み家」になります。

深いテーマと深いストーリーで、衝撃と共に頭を悩ませる問いかけをしてくる一冊でした。

この記事では「蟻の棲み家」の書評と概要紹介、ネタバレありの要約、解説を行っていきます。

では、いってみましょう!

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あらすじ

東京都中野区で、わかり女性の遺体が相次いで見つかった。

2人とも死因は頭を撃ち抜かれるという射殺事件だった。

フリーの事件記者の木部美智子はかねてから追っていた企業恐喝事件と、連続殺人事件に繋がりがあることに気づく。

顔が潰された遺体も見つかり、謎は深まっていく。

やがて、第三の殺人をほのめかす脅迫状が企業とテレビ局に届けられる。

そして、事件は大きく動き出す。

貧困の連鎖と崩壊した家族、親子、目を背けたくなる社会という現実を無理やり突きつけてきます。

あなたは最後まで、その目を閉じずに読むことができますか?

この事件に隠された男の決意と覚悟を読み解くことができますか?

苦しい現実に隠された事件の真相にぜひ、大どんでん返しされてください。

本書の概要

ページ数

解説含めず、466ページの全475ページとなっています。

読むのにかかった時間

ページもさることながら、文がびっしりと書かれた作品で大体5時間ほどで読み切ることができました。

構成

主人公は木部美智子というフリーの記者になります。

三人称で書かれた文章でしたが、誰の視点になっているかはかなり読みづらい部分がありました。

今行動を追っている人は誰だっけ?となる場面が多々ありました。

木部以外の人を視点として書かれる部分もあるので、読みやすさという観点ではいまいちでした。

ただ登場人物が出揃った後からは、セリフがうまく回っていて読みやすかったです。

謎を解き切る部分に関しても矛盾を感じず、しっかりとフェアな書き方をしていると感じました。

推理や犯人を当てるのは容易ですが、動機を理解するのが難しい系ミステリーでした。

書評(ネタバレなし)

大どんでん返し!ハンパないって!と言いたいところでしたが、僕的には「うーん」といったところです。

期待しすぎましたかね。

あーそうだったんだー、まぁ登場人物これしかいないからねー。というのが正直なところでした。

犯人という視点では、大どんでん返し!というのはあまり期待しない方がいいかもしれません。

また叙述トリック的に、騙されるということもありませんでした。

大どんでん返しというのは、信じていたものに裏切られる、ありえない動機から納得してしまうというところのことを言っているようです。

確かに大どんでん返しではあるものの、伏線がすごい!と心から言えるものではありませんでした。

なので大どんでん返しだけを期待して読む一冊ではないと思います。

ミステリーとしてはしっかりと謎があり、謎が解けた後も若干気持ち悪い感じが残りつつ最後には晴れるという作りにはなっていました。

ミステリーらしい姿はあるものの、驚きたいという方は別の小説を選んだ方がいいかもしれません。

ただ「蟻の棲み家」の一番良かった点としては、社会問題や社会の裏の部分に踏み込んだ書き方をしている点です。

「蟻の棲み家」のテーマは貧困の連鎖になります。

親が貧困だと大学まで行けずに親と同じ道を辿り子供も貧困になりやすい。親が売春をしている場合子供も売春するようになってしまう。

といった辛い連鎖という部分をフォーカスして描かれています。

決してデータ的に貧困の連鎖が証明されているわけではありませんが、小説的にしっかり納得し辛い感情を引き出され目を背けたくなると思います。

社会の汚い部分や裏の真実をしっかりと描き、読者に考えさせるという点は「蟻の棲み家」の良い点だと思いました。

ミステリーという入口から、世間に疑問を投げかける、そんな作品でした。

おすすめ度

「蟻の棲み家」のおすすめ度は、5点満点中1.5点です。

ごめんなさい、正直お勧めはできません。

完全に僕の好みですが、ちょっと期待しすぎた反動で低い評価としています。

大どんでん返しかと思ったのに、思ったほど大どんでん返ししてくれなかったので、ガッカリの方が大きかったです。

衝撃的な作品ばかり読んできた僕のせいだとは思いますが、おすすめはしません。

社会問題系を読みたい方には良いかもしれないので、絶対読むな!という作品ではない点はご承知おきください。

あらすじ・要約(ネタバレあり)

ここからは、ネタバレを含みますのでネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、まずネタバレありの内容要約からしていきます。

2人の女性を殺し、3人目を殺すと脅してきたのはある4人の集まりでした。

「末男」「翼」「愛理」「海人」

3人目として捕まった映像がテレビ局に持ち込まれ、その中に写っていたのは愛理で実際に暴力を振るっていたのは翼という形です。

テレビ局や大手菓子メーカーに脅しの電話をしていたのは末男でした。

顔が潰された遺体が、海人でした。

海人の正体が見破られたことにより、海人と繋がりのある末男、翼、愛理は警察に目をつけられ、最終的には恐喝罪として捕まることとなってしまいます。

3人とも恐喝自体は認めるものの、翼と末男で供述に矛盾が生まれます。

末男は翼が2人の女性を殺したと供述し、海人のことは知らないと言う。

翼は末男が2人の女性を殺したと供述し、海人もきっと末男に殺されたのだと言うのです。

頭を悩ませる警察でした。

末男は母親が蒸発していて、貧困の中育ち、さらに巨額の借金を抱えている。

翼は医者の家に生まれたものの、ギャンブルにハマり巨額の借金を抱えている。

と言うのが彼らの状況でした。

翼は父親に呆れられており、借金の肩代わりをお願いすることができない事情がありました。

警察は海人の殺害時刻をあばき、その時にアリバイのない翼こそが犯人だと断定したのです。

女性2人に関しても末男が言ったことが採用され、翼が2人の女性を殺し、海人も殺した犯人として起訴されることになりました。

しかし、真実は異なりました。

末男が全てをやっていたのです。

末男は翼の父親と共謀して、海人を翼の父に殺させ、末男は女性2人を殺していたのです。

翼の父親は翼を家族から切り離したく、末男に翼が抱える借金分を渡すと言う契約をしていました。

末男は翼の父親から、お金をもらうということで翼を死刑に追い込むために2人の女性を殺し、罪を被せるために海人を殺させたのです。

全てに気がついたのは、事件を追っていたフリーの記者、木部美智子だけでした。

でも彼女は、その真実を自分の心の中だけにとどめて終えることにしたのです。

書評&解説(ネタバレあり)

この要約だけを見ると、末男、なんて許せないんだ!と思う方もいるかもしれませんので解説として補足しておきます。

末男はまず可哀想な奴なんです。

母親と妹しか家族はおらず、母親はネグレクト、末男は小学生の頃から妹のために万引きをし、中学生では小遣い稼ぎのために自転車盗難などしてきました。

高校では窃盗団に協力し捕まっていたという過去もあります。

でもこれら全て妹や自分が高校に行くためのお金稼ぎでしかありませんでした。

親が貧困だからこそ、自分と妹は抜け出したい。そんな気持ちから必死になった結果が犯罪になってしまっただけなのです。

そして、今回2人の女性を殺す結果になったのも、翼が最悪な人物で家族の癌ともいうべき存在だったから。

翼は翼の妹を誘拐し、自分の父親に身代金を要求するような人間です。

さらに、自分より弱いものに対してなら平気で暴力を振るい、ギャンブルにハマり多額の借金を作るようなダメ男。

翼の父親は、今後さらなる悪行で家族が苦しんだり、妹に危害を加える可能性も考慮し、翼を殺害したいと末男にお願いします。

末男はお金のためとはいえ、その依頼を受け、考えた末に死刑になるような罪を翼に被せるという形で進めることにしました。

罪のない女性を殺すという形に思われましたが、殺された女性もネグレクトをしている女性や嫌がらせでしか生きていけないような女性でした。

末男は悩みながらも殺す決意を固め、最後にはそれぞれ殺害しました。

海人に関しては翼の父親に、共犯者となってもらうためと海人自身も人を脅し金を取るような人間ということで、始末することにしたのです。

以上が、末男を擁護するための話。

本編では「それでも命は大事なんだろ?」という台詞が出てきます。

ここまで読んで、そんな理由でも女性を殺した末男はダメだろ。と思いますでしょうか?

それとも子供を傷つけるような母親は殺されても仕方ないと思いますでしょうか?

死んでいい命なんてものはありません。でも貧困が貧困を生み出し続ける世の中があるのは確かです。

またそんな貧困に手を差し伸べない社会があることも事実。

さて、そんな社会や命に対してあなたはどう考えますか?

そんな投げかけが、「蟻の棲み家」のテーマになっています。

まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。

今回紹介したのは、望月諒子さんの「蟻の棲み家」です。

帯に書かれた大どんでん返し!というのはちょっと言い過ぎなところがあるミステリーでしたが、考えさせられる小説としては非常に優秀でした。

ミステリーを楽しみつつ、社会問題という裏の側面を見たいという方にはおすすめの作品です。

命や貧困、売春という答えのない問題に挑みたい方はぜひ、「蟻の棲み家」読んでみてください。

考えることで、少し社会が良い方向に動くはずです。

では、皆さんの考えで世界が変わる日を願っています。

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