残り時間15秒であなたは死にます。
そんな状況に置かれたら、あなただったら何をしますか?
ダイイングメッセージを残す?家族に遺言を残す?
今回紹介する、榊林銘さんの「あと十五秒で死ぬ」はまさにそんな物語。
ミステリーには分類されるものの、かなりフィクションに富んでいます。
短編ながら僕は非常に好きでした。この記事は、「あと十五秒で死ぬ」の内容のまとめです。
一部ネタバレ有りの内容紹介もしていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
死神から与えられた余命は十五秒。
どう使えば「私」を撃った犯人を告発し、反撃できるのか?
被害者と犯人の一風変わった攻防を描く短編。
さらに衝撃の結末があるドラマのオチを推理する短編。
謎の15秒の悪夢を見る少女の短編。
首が取れても生きることができる特異体質の住民の殺人事件の短編。
全4編が収録された一冊。
どの物語も15秒に込められた作り込みに驚愕すること間違いなし!
本書の概要
ページ数
あとがき・解説含めず336ページ、全347ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
全4編が収録された物語で、完全な短編ミステリー小説でした。
一人称視点の書き方が多めで、物語同士は特にリンクしておらず完全に独立した物語となっています。
書評(ネタバレなし)
短編でここまで面白いの中々ないぞ!だからこそ惜しい気もする!というのが僕の正直な感想です。
とにかく、一話目の短編から面白い。15秒という残り時間をどう使うのかという全く新しい視点でのワクワク感。
さらに犯人と被害者の攻防がまた興味をそそったのちに、最終的にあんなオチに持ってくるとは。
短編の良さであるリズミカルとテンポの良さと、一点突破の発想が織りなす見事な話でした。
個人的には二話目の「このあと衝撃の結末が」が一番好みでしたが、全て15秒に関連している話で面白かったです。
惜しい気がするポイントとしては、やはり短編嫌いの僕だからこそ。物足りなさを全体的に感じてしまいました。
動機が薄かったり、犯人や被害者にどうも感情移入し切れないのがもったいなかったです。
せっかく素晴らしいトリックや発想がある分、物語の重厚感が欲しいと思ってしまいました。
あとは社会的メッセージも欲しかった。どうしてもこういった部分は短編だと難しいのでそういう意味でも短編じゃない作品を読みたいと思いましたね。
とはいえ、短編の良さが光る素晴らしい一冊というのが僕の感想でした。
おすすめ度
榊林銘さんの「あと十五秒で死ぬ」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
短編としてだったら間違いなくおすすめできますが、小説全体だとちょっと評価を落とす点数。
僕がどうしても短編嫌いなところがあるのでちょっと低い点数にはしていますが、間違いなく文句ない素晴らしい小説だとは思います。
特に発想力の斬新さとリズムの良さ、謎が解明された時のスッキリ感は素晴らしいです。
ただ短編だからこそ感情移入し切れないところや社会的メッセージが載せ切れていない点。
あとは本格派ミステリーが好きな人にとってはちょっと、現実から離れすぎていると感じる点もおすすめ度を下げている理由です。
とはいえ、読んでおきたい短編集であることは間違いありません。
ぜひ、気になる方はお手に取って見てください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約あらすじを短編ごとに紹介していきます。
十五秒
薬剤師の「私」は唐突に銃弾で胸を貫かれた。
すると目の前に喋る猫(通称死神)が現れ、走馬灯タイムとして15秒あることを知らされる。
15秒なら死ぬまでに動くことができ、ストップといえばカウントダウンが止まる。
この15秒でいかに犯人を突き止め、犯人に復讐するかを考える「私」
止まる時間を利用して動く「私」、まずは部屋に入りづらいように薬品をまき、名前をマジックで書く。
犯人がそれでも乗り込んできた時用に漏電を利用したトラップも仕掛ける。
しかし、猫の助言で死に際に人を殺すことに罪悪感を感じトラップは弱めることにする。
残り数秒のところで、二発目の銃弾を受けてしまう。まさかの発報に驚きつつ最後に紙を握り込む。
実は銃を撃ってきた人物は逆恨みで、「私」を撃ってきていた。母の恨みは実は「私」は犯人の命を救った恩人だったのだ。
それを知った犯人は後悔と共に、結局は髪によるDNAによって警察に捕まることになる。
このあと衝撃の結末が
残り十五秒のところでドラマを見るのをやめた青年。
しかし、最後の一秒で衝撃の展開となっていることに気づく。ネットで意味を調べようとするも姉によって阻まれる。
知りたければ自分で推理しろとのこと。姉にピックアップされたドラマの話を見つつ推理を巡らせる。
単純な探偵と時をかけるSFものかと思われた作品は、実はクイズ形式のドラマとなっていた。
毎度最後にクイズの回答を視聴者から募るという作品。
結論、最終的な結末も視聴者の手によって変わるという斬新な仕掛けになっており、伏線を見事に回収する結果となっていたのだった。
不眠症
車に乗っていると突然視界が真っ暗になる夢を見て目覚める少女。
何度も同じ夢を見ることが恐ろしく、寝るのも怖くなっていく中、起きては母様の手伝いで家事に勤しむ。
だんだんと家事の最中にぼーっとする時間も増えていき、夢もだんだん車とトラックがぶつかるシーンだとわかっていく。
そして、ついに夢が現実で家事をやっている世界こそが夢だと気付かされる。
引き取り手である母と中学校に向かう中、車とトラックがぶつかる事故に巻き込まれたのが現実で家事をしていた生活は全くの少女の妄想だったのだ。
事故を受け入れ母との別れを決意し、夢から解放される。
首が取れても死なない僕らの首無殺人事件
首が取れても15秒の間なら元に戻る体質を持つ住民たち。
年齢差1歳未満なら、頭を取って別の体に乗せることもできる人たちの祭りの最中事件が起きる。
主人公である克人は、襲撃犯に襲われ頭だけの姿となってしまう。
そこに同級生の公がやってきて、首を取り替えつつ一つの体を使い続ける方法で救ってくれる。
命の存えさせながら襲撃犯を推理し始める、体だけ燃えた遺体も見つかりいよいよ克人は自分の体がなくなってしまうことを自覚する。
そして、情報を集める中、襲撃犯と遺体遺棄犯が異なることを見つけ出す。
関係者を集め、犯人を指し示すことに成功するも犯人は後悔の念で自殺する。
首だけが吹っ飛んだ遺体を使って、その場にいた警官は首のすり替えを行なっていく。
最終的に首を取り替えていくことによって、犯人分の体が手に入り克人も生き残ることができて話は幕を閉じた。
好きな話を深掘り解説(ネタバレあり)
ネタバレ続きます。
僕が特に気に入った「このあと衝撃の結末が」についてもう少し深ぼって解説します。
「このあと衝撃の結末が」では、ドラマのトリックは女優1人を二重役にすることで最後の場面で死ぬヒロインを誤認させるというものでした。
元気だったヒロインがどうして死んだのか?となっていたのが、実は過去の同じ女優の病弱ヒロインが死んだ場面だったというオチ。
このオチに気づけるかがドラマとしてのクイズでした。
さらに、実はこのオチに持ってくるためにはドラマに参加する必要がありました。
過去のシーンに仕立てるためには、最後のシーンで電話がなる必要があったのです。
電話がなることで過去のシーンという結論づけが行えるようになる仕掛けでした。
その電話こそが視聴者へ向けた挑戦だったのです。
実は主人公である青年の姉はこの挑戦を読み切った1人でした。
実際に電話をかけて未来を変えた人物が姉で、青年にドラマを見せている間に電話で席を外したり「さすが私の弟」という推理力を賞賛する場面もありました。
お姉さんこそが推理を的中させた存在であるとは明記されていませんでしたが、ほぼ間違いなくお姉さん=クイズに答えられたリアルタイム視聴者だと言えるでしょう。
このトリックも含め、僕の中では一番好みの物語でした。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、榊林銘さんの「あと十五秒で死ぬ」を紹介してきました。
短編嫌いの僕も唸る一冊で、かなりオススメできる一冊でした。
榊林さんの他作品もぜひ読みたいですね。
文章も読みやすいので、ミステリー初心者の方もぜひ試してみてください。
硬すぎないミステリーなので読みやすくて、ミステリーに浸れる内容だと思います。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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