医療系の本もドラマも嫌いな僕ですが、正直これはすごく良かった。
今回紹介するのは石木一麻さんの「がん消滅の罠」です。
がんをテーマにした重い話でありながらも、ちゃんとミステリーをしている一冊。
この記事ではそんな「がん消滅の罠」を一部ネタバレありで内容を紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

呼吸器内科の夏目医師は生命保険会社勤務の友人からある指摘を受ける。
夏目が余命半年の宣告をした肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金を受け取った後も生存、病巣も消え去っているという。
同様の保険金支払いが続けて起きており、今回で4例目。
不審に感じた夏目は同僚の羽鳥と調査を始めるも、謎が謎を呼ぶ。
さらには脅しとも取れる警告を言い渡される?
果たして、がん治療の世界でいったい何が起きているのか。
本の概要

ページ数
解説含めず370ページ、全380ページでした。
読むのにかかった時間
だいたい4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
夏目医師、宇垣医師、柳沢患者の三視点を三人称で描く構成でした。
それぞれの視点から見える景色によってミステリーが全て紐解かれる形です。
おすすめ度

石木一麻さんの「がん消滅の罠」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
多くの方におすすめできる一冊という評価。
正直僕は医療系のミステリーやドラマは好きではありませんでした。というのも医学用語なんてわからないし、安い感動になりがちだからです。
ですが「がん消滅の罠」は違かった。安い感動なんて全くなく、ただただ「がんの消滅」というテーマでミステリーを展開していくのです。
どうなる?どうして?という疑問がとにかく出続ける。
主人公たち夏目がどのようにこの謎を解いていくのかというのもワクワクさせられます。
がんというある意味身近な病気だからこそ、理解もしやすいですし、最終的な解答も理解でき納得できるものでした。
最後の最後で「え!?」となる結末も残しており、とにかく満足度の高い一冊に仕上がっていると感じました。
社会的テーマにもなりうる「がん」をうまくミステリーに溶け込ませた内容で、ぜひ多くの方に読んでほしい。
心残りとしてはもうちょっとアクションや動きのある展開にして欲しかったということ。
どうしても、ずっと机上で話している感じで、危機感やソワソワ感がなかった。そこさえ満たせれば満足を超える素晴らしい作品になったと思います。
ぜひ、気になる方はお手に取ってみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約・あらすじからやっていきます。
夏目は学生時代のことを思い出していた。
西條先生に弟子を断られるも食い下がって、なんとか担当教授になってもらえた時代を。
しかし、西條先生は学校を辞めることになった。
「医師にはできず、医師でなければできず、そしてどんな医師にも成し遂げられなかったことをやる」という意味深な言葉だけを残して、西條先生は夏目の元を去った。
それから月日が経ち、夏目はがんセンターで働いていた。
そんな中、友人の森川から夏目が余命半年の宣告をした肺腺がん患者が、リビングニーズ特約で生前給付金を受け取った後も生存、病巣も消え去っているという。
がんが完治することは稀にあるものの、夏目が余命宣告した患者に限って起こることに不可解さを感じる。
同僚の羽鳥にも謎解きを依頼して、事件を追いかける。
もしかしたら、がんを治療する画期的な方法を編み出したのではないか。そんな意見も出たが、だったら公表するだろう。
西條先生が関与していることまでは掴むものの、真実はわからない。
そんな中、羽鳥がもしかしたら、がん細胞を他の患者に移植しているのではないかという仮説を立てる。
この仮説は大筋が通っており、さらには夏目が余命宣告した患者の癌細胞は他人の癌細胞であることが判明し、西條先生に突きつける。
真相ははぐらかされるものの、概ね推理は合っていそう。
西條先生に動機を聞く。すると西條先生は一枚の写真を差し出す。それに反応したのは羽鳥。
羽鳥の元恋人こそ西條先生の娘だったのだ。西條先生の娘は癌で亡くなっており、その癌の原因は誰かとの性行為だった。
性行為の対象こそ羽鳥であり、西條先生が長年追い続けていた仇だ。しかし、西條先生は羽鳥が無理やり娘に性行為を行うような人間ではないことを知っている。
その場はそれだけで話は終わり、西條先生はこれからもがんと戦う意志を表明する。
だが、それで話は終わらない。
西條先生は夏目と羽鳥の目の前で、刺され、車に乗せられ連れ去られてしまう。
数日後にはバラバラしたいとして公表された。
西條先生の病院での不可解ながん治療に怒りをもった者の犯行。しかし、その真実は全く異なっていた。
そのことを夏目と羽鳥は知る由もなく、これからも生きていく。
西條先生は死んだことにしただけで、ピンピン生きていた。
さらに、西條先生の死んだ娘は実は本当の娘ではなかったのだ。昔、精子バンクに登録した時の話をしたときに妻が怒り、報復として別の男との子供を孕み生んだ子だったのだ。
その恨みをその男にぶつけ、今回のバラバラ死体としていた。
そんな真実を西條先生の元で働いていた宇垣こと西條先生の娘が語って、物語は終幕する。
最後の最後を解説(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここでは最後の最後の宇垣が明かした真実について深掘りしていきます。
宇垣は実は西條先生の子供というオチがありました。
西條先生はその昔、精子バンクを利用しており、その時の子供が宇垣ということです。
宇垣が西條先生を慕っている理由や尊敬している理由、付いている理由も家族という絆であることで全ての説明がつく。
さらに、西條先生が殺されたことにしたのも、これまでの西條先生とは異なるちゃんと宇垣の父親としての西條に生まれ変わったという意味合いもあるのだと思います。
西條先生は妻に先立たれ、さらには娘も実は別の男との子供であることが判明し、ひとりぼっちな人生に現れた子供。
そりゃ、多少乱暴なやり方でも二人で夢を追いかけたりすることでしょう。
そんな深い意味もあるのが宇垣が西條の娘という話なんだと思いました。
最後の最後で怒涛の種明かしにあるちょっとしたスパイスだと思います。
まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、石木一麻さんの「がん消滅の罠」を紹介してきました。
医療系は好きではない僕も楽しめた一冊。
ぜひ多くの方に読んでほしいです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。


