車視点の全く新しい小説。
それが伊坂幸太郎さんの「ガソリン生活」です。
車は自分で自由に行動ができない反面、車同士で会話ができるという斬新な設定なのに
見事にストーリーが紐解かれていきます。
見事すぎるストーリー展開と最後にはほっこりする。
伊坂幸太郎さんの持ち味が盛り込まれた内容でした。
この記事ではそんな「ガソリン生活」の内容を紹介していきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
望月家は4人家族。
母と良夫(長男)まどか(長女)享(次男)は普通の母子家庭だった。
彼らと一緒に生活をするのは愛車の緑色のデミオ。
そんな平和な家族に危機が迫る。
女優と怪しい記者、いじめや恐喝など、謎が絡み合うピンチが襲ってくるのだ。
果たして望月ファミリーは愛車デミオと共に乗り越えられるのか。
デミオの最後にきっと涙する。
本書の概要
ページ数
文庫サイズで解説含めず516ページ、全521ページでした。
読むのにかかった時間
大体6時間半ほどで読み切ることができました。
構成
愛車である緑デミオ視点で描かれるストーリーでした。
人間の会話を聞きつつ、車との会話もできるという設定で、一部制約として会話が聞ける範囲は排気ガスが届く範囲といいう設定です。
制約がありつつもしっかりとストーリーがわかる書き方で、伊坂幸太郎さんらしい言い回しのうまさ、会話のテンポが光る構成でした。
書評(ネタバレなし)
車という斬新な視点なのに、どうしてこんなに面白くできるの!?というのが僕の感想です。
まず「ガソリン生活」の何よりの特徴が視点となるのが車というところ。
車は車同士で会話はできるものの、人間の会話は近くにいるか乗車している場合に限るという設定です。
この限られた条件なのに、物語が綺麗に展開していきます。
車だからこそ近づけない真実と車だからこそ近づける真実が見事に描かれていて、破綻のない素晴らしい情報開示が行われていました。
伏線も見事でしっかりと事前に出てきた情報をもとに解決に至ったり、謎が解けたり、ピンチを救ったりするのです。
さすが伊坂幸太郎さんと言わざるを得ないバランスの取れたストーリー展開と、ワクワクドキドキ、伏線回収の作品だと思いました。
また最後の最後のオチも素晴らしかったです。
エピローグ部は初めて人間に視点になるのですが、それが本当に感動します。
ただピンチや謎の規模的には身近という利点はあるものの、物足りなさは残ってしまう気がしました。
もっと規模を大きくして謎がもっと謎だったらより一層面白かったかなと思います。
おすすめ度
伊坂幸太郎さんの「ガソリン生活」おすすめ度は5点満点中4点です。
文句なしに誰にでもおすすめできるかなと思います。
若干点数を落としたのは、伊坂幸太郎さんの中だともっと面白い作品があってそっちを推したいからという意図です。
「ゴールデンスランバー」が僕の中で史上最強の小説であり、伊坂幸太郎さんの作品にハマったきっかけなので「ゴールデンスランバー」を読んだことある場合は「ガソリン生活」もいいんじゃないかなという評価。
日常系のミステリーやほっこりしたラストを読みたい方には「ガソリン生活」がぴったりだと思います。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありのあらすじ要約をしていきます。
良夫と享を乗せた緑デミオが、家に向かっている中突然、元女優の有名人「荒木翠」が乗り込んで指定する場所まで乗せてって欲しいといい出します。
良夫は相手が有名人ということもあり、乗せていってあげることに。
その後、有名人を乗せたことを母親に自慢などしていると、乗せてあげたその日に事故に遭い荒木翠が死んだとのニュースが入ります。
荒木翠は不倫が原因で記者に追われ、最終的に逃げる中車が横転し事故で命を落としたとのことでした。
追っていたという記者・玉田に接触することができた良夫と享でしたが、特に有力な情報は得られません。
時を同じくして、望月家の次女・まどかは悩みを抱えていました。
彼氏である江田が極悪人と関わっている件です。
江田自身は良い人であるのですが、トガシという極悪人によって苦しんでいるという話でした。
ついには江田に、死体を運んでもらうという仕事を任せようとしてきたのです。
望月家はまどかの悩みを知りつつも、どう対処していいかわからずにいました。
そんな中、死体を運ぶ当日になってまどかがいなくなっていることに気づき、後を追う母、良夫、享でした。
しかし、まどかを人質に取られあっという間に追い込まれる望月家。
望月家を脅すことで死体の運搬をさせようとトガシの子分たちは命令します。
そこに、お隣さんで校長先生でもある人物がやってきて、助けてくれるのです。
そして、記者である玉田もまたそこに現れ、トガシの子分たちにトガシは飛行機事故に巻き込まれ外国にいると告げます。
子分たちもトガシによって脅されていたため、これで誰も犯罪に巻き込まれなくて済みました。
と思いきや享が真実に辿り着くのです。
実は、荒木翠の事故は偽装であると。
玉田に確認し、推理があっていることを告げられ、実は事故で死んだのはトガシで、荒木翠と不倫相手はその死体を偽ることで逃げたとのことでした。
これで一件落着かと思いきや、享のいじめ問題に話は展開していきます。
子供とは思えない聡明な享でしたが、可愛げがない分いじめの標的になってしまっているのです。
友達も巻き込まれ、恥ずかしい動画を撮られてしまいます。
ですが、享は記者である玉田の力を借りて問題を解決して一件落着。
これで平和な生活が戻ってきたのでした。
プロローグでは、10年後が描かれていて、緑デミオを買い換えた旨がわかりました。
と思いきや、享が大学生になり自分の車として緑デミオを中古で購入してきたという形でラスが締めくくられていました。
事件の真相を解説(ネタバレあり)
「ガソリン生活」の大きな事件である荒木翠が事故死した事件。
これは完全なダミーで、実はトガシという極悪人物が事故死したので、死体を利用したという結末でした。
歯型を利用することで警察を欺き、トガシと恋人の遺体を荒木翠と不倫相手の遺体にすり替えたのです。
結果的に荒木翠と不倫相手は逃げることに成功し、慎ましく生活している様子。
この記事の内容だけ読むとどうして、荒木翠にそこまでするのか不倫なんてけしからん!と思うかもしれませんね。
ですが、安心してください。
「ガソリン生活」を読むと、荒木翠の行動に納得しますし、トガシへの仕打ちも納得できます。
とはいえ、悪いからといって遺体すり替えをしていいわけではないことは当たり前です。
自分の目で見て、ぜひとも死体入れ替えが許されるものかを判断してみてください。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は、伊坂幸太郎さんの「ガソリン生活」を紹介してきました。
「ガソリン生活」は車視点という斬新な設定でしたが、車がありなら他のモノでもいけそうだと思っちゃいました。
面白くできるかはわからないですが、伊坂幸太郎さんならどんなモノを視点にしても面白おかしく書いてくれそうです。
最後のラストは本当にほっこり感動系ですので、ぜひ読んでみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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