5分でわかる有栖川有栖「月光ゲーム」書評&ネタバレ要約

小説の書評

孤立した男女が次々と殺されていく。

探偵ものの王道にして、原点とも呼べる閉鎖空間(クローズド・サークル)

今回紹介する「月光ゲーム」もそんな王道の探偵推理小説の一つです。

アガサ・クリスティーを尊敬していることがヒシヒシと伝わる作品で、精密に組み上げられたロジックは文句のつけようのない出来でした。

この記事では、そんな「月光ゲーム」について紹介、書評を行い、要約をネタバレ有りで書いていきます。

未読の方も既読の方も楽しんでいただける内容になっています。

では、行ってみましょう!

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あらすじ

推理小説研究会に所属する有栖川有栖。

夏休みを利用して推理小説研究会は山にキャンプに行くことにした。

道中、同じ目的の大学生たち男女と息が合い、わいわいと盛り上がってキャンプファイヤーを囲みながら楽しい時間を過ごしていた。

しかし、一人の女の子が突然置き手紙をして、下山してしまったことが朝になったらわかったのだ。

どうして、急に盛り上がっていた中帰ってしまったのか、思い当たるところを考えていると突然の地響き。

キャンプしていた山が噴火活動を始めたのだ。

噴火の影響で帰り道は塞がれてしまい、山に閉じ込められてしまった一行。

救助を待つべくキャンプを続けるしか選択肢がない中、次の朝今度は刺殺体が発見される。

警察もやってこれない状況で起こる事件、誰に逃げられないクローズド・サークル。

間違いなく犯人はこの中にいる!

走行している次の朝にはまたひとつ死体が増えていた。

果たして有栖川たちは無事に下山することができるのか、犯人の目的とは?

そして、遺体と共に書かれていた「y」というダイイングメッセージの意味とは?

本書の概要

ページ数

あとがき・解説を含めず340ページで、含めると全361ページになります。

読むのにかかった時間

だいたい4時間くらいで読み切ることができました。

構成

作者と同姓同名の有栖川有栖の視点で書かれた、一人称型の小説になります。

関西出身という設定であるので、会話はほとんどが関西弁に統一されてもいます。

ミステリーとしては、全ての情報が有栖の目線で開示され、推理の前には「読者への挑戦」も用意されており自分で推理を楽しむことができる作品です。

実際情報は全て開示されており、自分で推理できる情報は揃っていると感じました。

書評(王道のクローズドサークルにワクワク)

「月光ゲーム」を一言でまとめると、「王道探偵物!驚き少なめ論理マシマシ、納得100%」という感じです。

クローズド・サークルと呼ばれる孤立した団体の中で一人一人殺されていくという王道の展開で、話は進んでいき、最終的に探偵役がズバッと推理を披露して犯人を言い当てるというものになっています。

やり尽くされているものの、やはり熱い展開でした。

ただ最終的な驚きは少なめの印象で、アッと驚くようなどんでん返しや衝撃の事実はありませんでした。

推理の論理や実際描かれたヒントを考えると、超現実的な話で読者自身も推理できてしまう作品としては非常に優秀だと思いました。

僕個人の好みとしては伏線が凄くて最後の最後で予想だにできない展開が好きなので、物足りなさを感じてしまった感じです。

推理の納得度やきちんとした論理は不動のものなので、この作品にいちゃもんをつけることは不可能だと思います。

推理ものとしてのお約束をしっかり守った、王道の探偵物というのがまさにあっている作品だと感じました。

ぜひ、ご自身の手で推理してもらいたい作品です。

やはりクローズド・サークルという展開はワクワクしますよね。

誰が殺されるのか、誰が殺しているのか、この二つの要素がうまく絡んで不安と恐怖が文章を通してこちら側にも伝わってくるのがたまりません。

王道でありながら、決して飽きさせない工夫が詰まった作品でした。

要約(ネタバレあり)

ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛んでください。

では、ネタバレありの要約からやっていきます。

事件をまとめますと、最終的には17人中3人が殺され、一人は事故死してしまったという形でした。

事故死した一人というのは、キャンプ場から真っ先に帰った女子「山﨑小百合」で下山途中に噴火に巻き込まれた形で亡くなっていました。

小百合が下山した理由は良い感じになっていた「年野武」との密会を2人(被害者)に見られ、恥ずかしくなってしまったというものでした。

犯人はその小百合の密会相手である「年野武」で、密会を見た相手「北野勉」「戸田文雄」を殺し、恋敵と誤認した「一色尚三」の3人を殺しました。

密会を見られた際に「北野勉」「戸田文雄」に冷やかされて腹が立ったのと、それきっかけで小百合が事故に巻き込まれ死んでしまったことが動機でした。

「一色尚三」に関しては、偶然尚三が小百合のことを好きという言葉を聞いてしまい、小百合も尚三が好きなのかもしれないという迷いが生まれ殺してしまったという話でした。

Yというダイイングメッセージは北野が最初に残したもので、実は「と」を書こうとした途中だったというのがオチでした。

「北野勉」は「年野武」のことを「ねんの」ではなく「としの」と呼んでいたということでした。

二人目の反抗時に発見されたダイイングメッセージYは犯人である「年野武」が偽造したものでした。

以上が一通りの犯行と犯行に関わった情報をまとめたものになります。

動機がちょっと弱い気がするものの、殺しの手口や犯人を特定する根拠は明確で理に適っていると思いました。

ダイイングメッセージも筋が通っていて、良かったと思います。

解説(ネタバレあり)

ここからはネタバレありの事件の解説について書いていきます。

解説というほど難しい部分がないトリックなので、今回は動機についてもう少し深掘りしたいと思います。

今回「年野武」が「一色尚三」を殺した理由が一番しっくりこない方が多いと思いますので、その部分について僕なりの解釈と考察を書いていきます。

元々「年野武」のターゲットは二人で小百合といちゃついていたところを冷やかした「北野勉」「戸田文雄」を殺そうとしていました。

これは小百合が帰ってしまう原因になり、かつ小百合が事故に巻き込まれた原因を作ったという理由から二人を殺してしまおうと考えたわけです。

ではどうして「一色尚三」という一見殺す必要のない人を狙ったのでしょうか?

この理由は大きくは「年野武」が一瞬でも小百合→「一色尚三」という図を想像してしまったのが原因になります。

有栖と理代がたまたま、小百合の話をしているのを聞いてしまった「年野武」がネガティブな妄想をふくまらせた結果なのです。

有栖と理代の話では「一色尚三」も小百合のことが好きという話をしていただけなのですが、もしかしたら小百合も「一色尚三」ことが好きなのではないか?と考えてしまったというわけです。

はっきり言ってとんでもない理論みたいにも思いますが、「一色尚三」は小百合の大切にしている指輪を自分の指にはめ、取れなくなってしまったという事件が起こっていました。

この事件の際、小百合はそこまで悪い感情を表に出していなかったため、余計に「年野武」の気持ちをネガティブな方向に持ってきたと想像できます。

一度ネガティブな妄想に入ると人はなかなか抜け出せないので、ある意味リアルではあるのかもしれません。

ただそれでも、いっときの感情の起伏で「一色尚三」は殺されたというのが本当の動機だと思います。

二人を殺してしまったので、殺人というハードルが低くなりすぎたのでしょう。

まとめ

ここからはネタバレはありません。

今回は、「月光ゲーム」について紹介してきました。

動機についてはちょっと納得できない部分や共感できない部分があるものの、トリックだったりアリバイだったりはしっかりとヒントが出ていて読者にフェアな推理小説でした。

ぜひ、有栖川有栖と共に事件の謎を解いてみてはいかがでしょうか?

僕は普通に当てられなかった真実ですので、ぜひ謎解きが好きな方は挑戦してみてください。

理屈が全てハマる考えられたミステリー小説でした。

では、皆さんの推理が光り輝くことを祈っています。

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