手紙のやり取りで行われる推理合戦。
その先に待つ真実は、愛?それとも…
今回紹介するのは深木章子さんの「欺瞞の殺意」です。
この記事では「欺瞞の殺意」の内容を一部ネタバレありで内容をまとめて紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

地方の資産家・楡(にれ)家の当主が64歳で急逝。
屋敷で行われた身内しかいない法要で、長女と孫が死亡する事件が起きる。
その長女の婿養子である弁護士・治重のポケットからヒ素のついたチョコレートの銀紙が発見される。
自白することで、死刑は逃れるものの、実は治重は無実だった。
無期懲役の中、真犯人を考える治重。
仮釈放された治重は、自分の推理をある女性へと手紙で送る。
そして推理合戦が始まる。
果たして、事件の真相とは。
本の概要

ページ数
解説を含めず302ページ、全307ページ。
読むのにかかった時間
だいたい3時間半ほどで読み切ることができました。
構成
元となる事件までは三人称で、客観的に事件が紹介される構成。
そこからは治重と橙子のそれぞれ手紙を送り合う内容で書かれる構成でした。
手紙を読みながら、事件の推理、真相に近づいていく構成、最後には後日談として全ての真相がわかるという内容で進みました。
おすすめ度

「欺瞞の殺意」のおすすめ度は、5点満点中2点です。
うーん、手放しおすすめではないかなぁという評価。
まず手紙形式であるのと、推理合戦とは言いつつ、ただ手紙で自分たちの推理をするという構成です。
そのため、ドキドキ感がないのがとにかく残念。
また事件自体も推理の余地が少ないタイプで、シンプルで分かりやすい反面あっといわせるような仕掛けもなかったです。
ミステリー要素としても弱く、ドキドキ感も少ない。ただ矛盾点やおかしな点があるわけではないので総合して2点という評価でした。
決しておすすめとは言えませんが、気になる方はチェックしてみてください。
書評(ネタバレなし)

すごい伏線やドキドキ感がなくて残念というのが僕の正直な感想でした。
伏線がすごくて震えたり、犯人との攻防でドキドキしたり、半端ない叙述トリックがあるなどが好きな僕。
そのため、正直今回は僕の好みではなかったです。
実は狙いは違かったよパターンという名目では中々良い線を行っているとは思いますが、それでも鳥肌の立つような伏線ではなかったり淡々と物語が終わるイメージ。
感情移入も少なかったので、感動形でもない。
実に難しい一冊でした。
推理小説ってどれもこのくらいだっけ?最近あっと驚く系やドキドキハラハラ系を読みすぎて、感覚がおかしくなっているのかなぁと思いました。
僕としてはもっと、ハラハラドキドキもしくは最後の最後で、仰天の真実やこれまでの見解がひっくり返る系のミステリーが読みたいです。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約から行なっていきます。
事件は屋敷で行われた身内しかいない法要で起こりました。
親戚が集まる中、皆でコーヒーなどを飲んでいる際に突然長女である澤子が苦しみ出し、救急車で運ばれました。
その後死亡が確認され、さらに澤子の養子である芳雄もヒ素入りのチョコレートを食べ死亡してしまいます。
警察はヒ素入りチョコレートの紙切れを持っていた長女の妻であり、養子・芳雄の父・治重の犯行だと断定しました。
治重は実は不倫をしている事実があり、それを妻にバレそうになり邪魔になったから殺したのだろうとそれっぽい動機もあり、捕まることになります。
無実ではあるものの、このままでは死刑になってしまう可能性を考えた弁護士でもある治重は、一度は罪を認めて服役中に逆転無罪を勝ち取ろうと画策します。
そして、無期懲役となり刑が執行されました。
すぐに無罪を勝ち取ろうと事件の調査をしていきますが、中々真相は解明されず、結局40年という時間が経ち、事件は時効。
治重はようやく仮釈放を受け入れてもらうことができ、シャバに出ることができました。
そんな時に、実は治重と恋仲にあった澤子の妹・橙子に手紙を書きます。
自分の考えたあの事件の真相の推理を聞いてくれ。と。
恋文のようなその内容と、水飴を使ったトリックを話すものの、どうしても治重のジャケットにチョコレートの切れ端を入れるのが難しい。
橙子からも返事があり、実は長女・澤子の自作自演説を推理されます。
筋は通っているものの、治重は澤子はジャケットに触る機会はなかったと主張、その推理も突っぱねます。
最終的には、治重は恋仲であった橙子の犯行だと推理しました。
橙子が夫である庸平と協力して、澤子を殺したのです。
澤子が自殺したという方向に持っていこうと思っていましたが、治重が罪を認めてしまったがゆえに結局刑が執行してしまった流れ。
橙子は最後まで澤子の自殺説を表に出せずに、結局恋仲であった治重を刑務所に送ってしまったのです。
本当だったら、澤子を殺し、澤子を自殺として処理させ、自分は治重と結ばれるはずだったのに。
その推理で事件は幕を閉じるかと思いきや、橙子と治重の心中遺体が見つかります。
この事件の真相に辿り着いた二人は、一緒に死ぬことにしたのか??
実はそんなことはなく全てが治重の思惑でした。
早い段階で橙子が真犯人であることに気づいた治重は、どうにか復讐できないか考えていました。
その結果、最終的に心中に見せかけて殺そうとしたのです。
手紙での推理合戦も全て橙子を油断させ、殺すタイミングを作ることでした。
治重の思惑は成功し、心中として事件は幕を閉じました。
狙いの解説(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここでは、「欺瞞の殺意」が何を狙ったミステリーなのかを考察した内容を紹介します。
手紙でのやり取りや推理合戦が実は、もう一つ上の階層から見ていたというのが本ミステリーの狙いだったと思いました。
手紙だけ読んでいるとただの惚気や恋文を含む話かと思いきや、徐々に怖い方向へと推理が進んでいく。
結局その怖い推理が当たっており、事件は解決するのですが、その段々よからぬ方向に行く恐怖というのを演出したかったのだと思います。
そして、実はそれらが全て治重自身のコントロールしていた結果であるという一つ上の発想があったのです。
ある意味で全ては計算され尽くしたやり取りであり、最終的な結果。
怖い方向に行きつつ、実は最初から仕組まれていたことであった。
これがこのミステリーの狙いであり楽しみポイントなんだと思います。
僕としてはもう少し感情移入できる工夫があればよりよかったかなと思いました。
まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。
今回は深木章子さんの「欺瞞の殺意」を紹介してきました。
同作者の「鬼畜の家」が面白かった分、期待が大きかったのですが、正直僕の好みではなかったです。
とはいえ、ミステリーとしての矛盾点の少なさは素晴らしいとも思います。
気になる方はぜひ、読んでみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

