5分でわかる雫井脩介「火の粉」書評&ネタバレ要約・あらすじ

小説の書評

隣人のことをどれだけ知っていますか?

昨今は隣人がいるのかどうかすらわからないほどになっています。

今回は、そんな隣人をテーマにしたミステリー、雫井脩介さんの「火の粉」です。

一見、優しいちょっとおせっかいな隣人の物語かと思いきやって話。

この記事では、そんな「火の粉」の書評、一部ネタバレありで要約していきます。

では、いってみましょう!

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あらすじ

二年前に無罪判決を下した梶間勲、その時の被疑者である武内が隣の家に引っ越してきた。

偶然にしてはできすぎている話である中

愛嬌のある笑顔、気の利いた贈り物、老人介護の手伝いとあふれんばかりの善意で、梶間家の人々の心を掴んでいく。

しかし、武内が引っ越してきてから、梶間家の周辺で次々と不可解な事件が起こる。

果たして武内は本当に善意だけで親切をしているのか。

あなたの隣人は大丈夫ですか?

本書の概要

ページ数

解説含めず565ページ、全577ページでした。

読むのにかかった時間

だいたい6時間半ほどで読み切ることができました。

構成

基本的に、梶間勲と勲の妻・尋恵、勲の息子の嫁・雪見の三人の視点を変えながら三人称視点で描かれる作品でした。

章ごとに中心人物が変わりつつ、それぞれの人物の感情の変化とともに話が進んでいく構成。

書評(ネタバレなし)

終始怖くて、ラストにちょっとだけがっかり。というのが僕の正直な感想です。

隣人の親切が段々と怖くなっていって、ミステリー要素が徐々に明らかになっていく様子は非常に面白かったと思います。

人の善意を素直に受け取ることの怖さとともに、考え出すといくらでも悪い方向に考えられる様子が見事に描かれていました。

また、感情表現も上手く、視点が切り替わるたびにその人物に感情移入しちゃって、心を揺さぶられ続けました。

気持ちがわかって、辛くなったりイライラしたり、そして悲しくなったり、怖くなったり。

とにかく感情が揺さぶられ続ける一冊だったと思います。

ただ、ラストだけがちょっと納得いかなくて、ちょっと綺麗な終わり方すぎるかなとバットエンド好きな僕としては思いました。

ここではネタバレなしという書評なので、詳しくは控えますが、僕としてはもっとあっと驚く結末が見たかったです。

とはいえ、決してありきたりな終わり方ではなかったのですが。

おすすめ度

雫井脩介さんの「火の粉」のおすすめ度は、5点満点中4点です。

基本おすすめだけど、ちょっとだけ残念だな~という評価。

まず大前提として非常に面白い一冊ということで、基本終始面白いです。

ただ、僕の好みとしてラストがもっとドロドロした感じや驚きが欲しかったという意味で、若干おすすめ度を下げている形。

また、ページ数も500ページを超えるので人を選ぶという意味でも、点数が落ちています。

それらを差し引いても4点というのは、辛口評価の僕としてもかなりの高評価であることはわかってください。

なので、ぜひラストがバットエンドじゃない方がいい。という方やページ数を気にせず小説は読める!という方は「火の粉」ぜひ、読んでみてください

要約・あらすじ(ネタバレあり)

ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありのあらすじ要約をやっていきます。

梶間勲は元裁判官でした。

2年前の一家殺人の容疑者であった武内を無罪にしたのち、裁判官を辞め大学の教授として第二の人生を歩み始めたのです。

そんなある日、隣に武内が引っ越してきました。

偶然にしてはできすぎているとは思うものの、特に気にすることなく日常を送る勲。

尋恵は義母の介護と家族の世話で奮闘する勲の妻でした。

日々の忙しさに翻弄される中、武内だけは尋恵のそんな思いに共感し、ついには義母の介護を手伝ってもらえることになりました。

親切に感謝しより一層武内を気に入っていく尋恵。

雪見は勲の息子と結婚し、まどかという娘を育てつつ勲、尋恵と同居しています。

義母、義父との仲は良好で今の生活に満足していました。

そこに現れた武内に若干の怪しさ、怖さを感じ、できれば関わりたくないと考えていました。

そんな中、娘である・まどかが夜寝つきが悪くなり、寝不足となっていきます。

突然の寝つきの悪さに困惑しつつ、日々のまどかの世話にも疲れを感じている時、まどかの行動に激怒してしまうのです。

手を挙げたその時、尋恵によって止められ、夫からも非難を受けることになります。

また尋恵は少し前に児童相談所からも虐待を疑われた話をします。

困惑する雪見はそのまま家を追い出されることになるのです。

落ち込んでいる中、雪見に話しかけてくる池本夫婦。

話を聞くと、武内が疑われた一家殺人の関係者とのこと。さらに武内は黒で、今回雪見が家を追い出されたのも武内によって追い出されたと話し出します。

娘のまどかが寝なくなったのは武内が渡していたヤクルトにカフェインが入っていたせいであるとか、児童相談所に話をして事態を大袈裟にしたというのです。

納得した雪見はその話を家族にします。

しかし、武内をすっかり信用していた家族によって、その説は簡単にあしらわれてしまうのです。

諦めきれない気持ちを持ちつつ、場面は勲に移ります。

勲はなんとなく武内の行動に怪しさを持っていて、もしかしたら無罪の判決は間違っていたのかと疑い始めます。

しかし、無罪を判断した武内自身の背中への打ち身の跡だけが説明がつかないと思っていました。

自分では到底つけられないであろう傷跡、だから自分は無罪にした。間違ってはいない。そんな気持ちを持ちながらもどこかで疑いの気持ちもある状態。

裁判官時代の伝手で武内を昔から知る人物に会いにいき、その疑念は大きく揺らぐことになりました。

武内はヤバい人物で過去にも親切心を裏切ったからと、人を暴行したり、自傷癖があることがわかったのです。

どうにか家族を武内から遠ざけようと思っていた矢先、家族は武内と別荘に遊びにいきました。

雪見は池本の夫が行方不明であることを聞き、もしかしたら武内がやった可能性を疑っていました。

なんとか隙を見て、車のトランクなどを覗くも何もなく、証拠が掴めず苦しんでいる中、梶間家が別荘に遊びにいく情報を仕入れ、後を追いかけることにします。

偶然義父である勲と合流し、別荘に向かうと叫び声が聞こえるのです。

尋恵は、武内の別荘とは知らずに息子と、息子の娘・まどかと共に旅行に来ていました。

別荘にいたのが武内と知り少し動揺する尋恵。

完全に信用していたかに思えた尋恵でしたが、実は徐々に武内のやりすぎる親切心に疑念を抱くようになっていたのです。

さらに池本の夫を殺し、死体を隠しているかもしれないと雪見に聞いており、疑いを持っていました。

そんな相手との別荘。怖さを感じながらまどかに誘われ、散歩をすることにすると死体を発見してしまいパニックになり、早く帰ろうと息子に言うも、息子は武内を信用しており動く気がない。

焦る尋恵に気づいた武内はついにキレました。

本性を出した武内は、息子に殴りかかり、逃げる尋恵とまどかを追いかけます。

完全に殺す気満々の武内。

そこに雪見と勲、さらに武内をマークしていた警察官が到着します。

別荘の建物に逃げ、そこに残っていた息子を殴る武内。

勲だけがその建物に早く到着し、その様子を見ている。

そして、警察が入ってくる瞬間に勲は手元にあった灰皿で武内に殴りかかるのでした。

最終的に勲は、殺人罪で罪に問われる形で話の幕は閉じられました。

作品のどこがすごいのか解説(ネタバレあり)

まさかの勲が武内を殺す。というオチがこの作品の驚きポイントでした。

正直、僕としてはもっとバットエンドや驚きが欲しかったところでしたが、とはいえ非常に良くできた伏線的な終わり方ではあると思います。

というのも、もともと武内は死刑か無罪かという二択で、勲によって無罪となったという経緯がありました。

最終的に勲は無罪から死刑という全く反対の選択を行った。というのがこの物語の大きな軸となっています。

裁判官という法曹界のトップとして生きてきた人物が、殺人罪というあってはならないことをしてしまうというのも見事に描いており、まさに選択の難しさを表現していると思います。

最終的に武内を殺したために死刑が成り立つことで、選択の誤りを表現するのは見事すぎますし作品としての凄さを感じるところです。

まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。

今回は、雫井脩介さんの「火の粉」を紹介してきました。

隣人トラブル怖いですよね。

怖さの先に選択の難しさという大きなテーマがあるのは、読後感としても面白いので、ぜひ気になった方は「火の粉」読んでみてください。

では、皆さんの隣人が良き人であることを祈っています。

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