5分でわかる浦賀和宏「彼女は存在しない」書評&ネタバレ要約・解説

小説の書評

サイコキラーはお好きですか?

ミステリーの王道になりつつある、動機がいまいちわからないサイコキラーが今回紹介する浦賀和宏さんの「彼女は存在しない」にも出てきます。

多重人格が疑われる妹がどうやら、殺人を犯しているっぽいぞ?というテイストから、どんどん深みにハマって行くという作品でした。

この記事では、あらすじから、書評、一部ネタバレありの要約・解説を行っていきます。

本選びの参考になれば嬉しいです。

では、いってみましょう!

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あらすじ

平凡だが幸せな生活を謳歌していた香奈子。

彼女の日常は、恋人・貴治がある日、何者かに殺され狂い始める。

同じ頃、妹の度重なる異常行動を目撃した根本。

妹は多重人格だという疑いを強めた根本は、彼女の行動を監視し始めるようになる。

妹の行動と次々と発生する凄惨な事件が、加奈子と根本を結びつけていく。

そして二人が出会うとき、謎が全て解けていく。

圧倒的な叙述トリックに、ミステリー小説の真髄を味わうことになるだろう。

本書の概要

ページ数

文庫サイズで解説含めず、441ページ、全446ページです。

読むのにかかった時間

改行多めで、だいたい5時間半ほどで読み切ることができました。

構成

加奈子と根本を交互に行き来する構成で、視点は基本的にこの二人になります。

加奈子は一人称の書き方で、根本は三人称の書き方でした。

ⅠからⅥ と大きく章が6つに分かれていて、場面が大きく変わる構成になっていました。

短編集ではなく、長編なので章の分けは特に気にする必要がない作品です。

書評(ネタバレなし)

叙述トリックはすごいけど、ちょっぴり見え見えだったかな、というのが正直な感想です。

叙述トリックが売りの「彼女は存在しない」ということでかなり期待して読みました。

確かに叙述トリックとして、これまでの認識が覆る系の物語ではあったものの、多くの叙述トリック系を読んできた僕としては薄々勘づいていたことが正解でした。

ちょっぴりがっかりしたというのが正直なところです。

なので、手放しで叙述トリックがすごい小説です!とは言えません。ただ叙述トリックをあまり読んだことがないという方はかなり楽しめる内容なのでは?と思います。

綺麗な叙述トリックで、わかりやすい伏線が張られているので、最後の最後で解説されるところで「あー、そういう意味だったのか!騙された!」となることでしょう。

僕の場合は、やっぱりあの書き方は騙そうとしてたんだな。と思ってしまいました。

叙述トリック以外の部分は、多重人格者とサイコキラーが一体になったミステリーといったところでした。

不気味な殺人鬼と多重人格による突然人格が変わる感じは結構ホラー要素が強いかなという印象でした。

面白さ的には、ワクワクはしないけどミステリーとしてしっかりと先が気になる展開をしていました。

章の節目節目で、ちょっとした驚き要素があるので、飽きずに最後まで読み切ることができました。

ただ、新しい要素をあまり感じられない内容で、どこかでみたような話だなという印象が否めません。

手放しでおすすめはできないので、5点満点があるとしたら2点くらいが僕の評価です。

叙述トリックも鳥肌が立つ!ってほどじゃなかったですので、ミステリー初心者向けって感じがします。

かなり批評気味に書いてしまいましたが、完全に僕の好みの話ですので、小説として軸がまとまっていてミステリー要素として面白いのは確実です。

要約・あらすじ(ネタバレあり)

ここからはネタバレありのあらすじ・要約を行っていきます。

ネタバレが嫌な方は、まとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありのあらすじを書いていきます。

加奈子は恋人・貴治とある日、由子と出会います。

由子は、おどおどした性格で、どこか挙動不審なところがありました。

貴治はちょっと変わり者なので、そんな由子のことが気に入り、一緒に遊ぶようになりました。

その頃、大学生の根本は、子供の頃に父を、そして最近母親が死んでしまいました。

大学をなんとか卒業しなければと奮闘している中で、妹の様子がおかしいことに気が付きます。

妹・亜矢子が突然、見たこともない格好をしたり、別人のように根本を無視するのです。

亜矢子の様子から、根本は妹は多重人格ではないかと疑い始めます。

そして、亜矢子が出かけるのに際して後をつけると、貴治たちと遊んでいると判明するのです。

そんなある日、貴治が遺体となって見つかります。

悲しむ加奈子は、最近遊ぶようになった由子が怪しいのではないかと思い始め、さらに彼女が多重人格ではないのかと考えます。

根本は、亜矢子から突然、貴治を殺したのは自分だと告白され驚愕します。

ついに別人格が人殺しまでしたのかと悩み苦しむ根本、ですがすぐには警察に届けず様子を見ることにしました。

根本は心のうちを根本の恋人である恵にだけ話していました。

ですが、そんな恵と根本の関係を知った亜矢子は、今度は恵を殺してしまったのです。

亜矢子の動機は兄である根本が苦しむことを無くすことだったのです。

貴治は実は、根本の尾行に気がついていて兄だと知らずに、ストーカーとして退治するべく根本を殴っていました。

それを知った亜矢子が報復のために貴治を殺し、さらに、恵が根本の子供を孕んでしまったと知り、根本の将来のために恵を殺したのです。

動機に気がついた根本は、苦しみながらもある決断をします。

「妹・亜矢子を殺すことを」

そして、亜矢子が向かった友達のアパートで、亜矢子の胸にナイフを突き刺します。

加奈子は驚きます。

自分の胸にナイフが刺さったからです。

訳のわからない男に急に刺されたと思う加奈子。

ですが、実は加奈子=亜矢子でした。

加奈子は亜矢子の一つの人格で、加奈子こそ亜矢子であり根本の妹だったのです。

加奈子は死に行く中、自分が多重人格であり亜矢子が本当の自分であると気づきながら、これまでの殺害について記憶を取り戻していき、話の幕が閉じられます。

叙述トリックの解説(ネタバレあり)

ここでは、加奈子=亜矢子についてもう少し詳しく解説をしていきます。

小説では、二つの視点、加奈子と根本が中心となっていました。

普通に読んでいると、根本の妹・亜矢子は、加奈子視点の由子であるように見えます。

しかし、真実は根本の妹は加奈子であったのです。

二人の関係を図にしてまとめてみました。

人間関係を整理しつつ、二人の視点をまとめました。

亜矢子(加奈子)は根本が自分の兄であることを完全に忘れていて、それが小説の表現の中でも表れていました。

根本の顔を見ても、誰かよくわからないという表現をしていたりした場面です。

根本と亜矢子(加奈子)が鉢合わせるシーンでも、根本視点ではあえて妹が由子か加奈子どっちをさし示しているのか曖昧にしていました。

読者に、由子=亜矢子という思い込みをさせようとしたのです。

由子はミスリードで、加奈子こそが根本の妹であり、亜矢子でした。

無理矢理感が少なく、しっかり読み直すと確かにわかりやすく伏線が張ってありました。

「加奈子の視点で初めて貴治の家にお泊まりした」というのと「初めて妹・亜矢子が家に帰ってこなかった」という部分も実は亜矢子と加奈子が同一人物である伏線だったのです。

結構違和感やモヤッとする部分が多かったので、わかりやすめの叙述トリックだったかなと思います。

叙述トリックがわかった上でもう一度読み直すと、ここもわざと表現を濁しているな!って部分が見つかるので楽しんでみてください。

まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。

今回は、浦賀和宏さんの「彼女は存在しない」について紹介してきました。

叙述トリックは確かにあって、伏線がすごい小説であることは確かですが、無理矢理感を極限まで無くした分、矛盾がない代わりに僕としてはトリックや伏線が見えてしまったところがありました。

とはいえ、叙述トリックがとにかく好き!という方にはバチっとハマる作品だと思います。

伏線好きや叙述トリック好きな方はぜひ読んでみてください。

では、皆さんの叙述トリック好きが加熱することを祈っています。

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