「○○○○○○○○殺人事件」というタイトルを聞いて何を思いますか?
テキトーなタイトル?探しづらいタイトル?意味がわからないタイトル?
いいえ、この小説のタイトルは「○○○○○○○○殺人事件」でこそ魅力が発揮されるのです。
というのも、この小説のテーマがタイトル当てという新しいジャンルになるからです。
普通の殺人事件に隠された作者からの読者への挑戦状、ちょっと変わったミステリーを読みたい方にぴったりの作品になっています。
この記事では、そんな「○○○○○○○○殺人事件」についてのあらすじ、書評、一部ネタバレありの解説を行なっていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
アウトドアが趣味の公務員・沖。
ネットで知り合ったアウトドア仲間たちと4度目となるオフ会へと向かう。
オフ会の場所は仮面の男・黒沼が所有する孤島。
赤毛の女子高生が初参戦する中、孤島に着いた次の日、メンバーのうち二人が失踪する。
続いて、殺人事件が起こり、さらに謎の密室事件まで起こる。
果たして、失踪の真相とは、一連の事件の犯人とは。。
そして、読者に向けられた挑戦、「○○○○○○○○殺人事件」の本物のタイトルを当てることができるのか?
本書の概要
ページ数
解説含めず、文庫サイズで313ページ、全326ページでした。
読むのにかかった時間
3時間半くらいで読み切ることができました。
構成
主人公・沖の一人称視点で書かれた文章構成でした。
途中作者からの挑戦や犯人視点で書かれる部分もあり、飽きさせない工夫がある作品になっています。
タイトル当てというテーマで書かれていて、どういう意味なのかをしっかりと本書の中で説明がされていて、例題もあるという親切っぷりでした。
書評(ネタバレなし)
一言で感想をまとめると「趣向は面白いけど、トリックとしてはまぁまぁかな」です。
タイトル当てというテーマ自体は非常に珍しく、初めて読みました。
実際タイトルと事件がリンクしている点も非常に面白く、叙述トリック部分も含んでいるのは伏線好きにはたまりませんでした。
ですが、正直驚き具合がそこまで大きくなかったんです。
ぺらっと捲って、一瞬はてなマークが浮かんでから「あーそういうことだったのね」くらいの衝撃でしかありませんでした。
もっと鳥肌が立って、考えが180度変わるくらいの衝撃はなかったです。
タイトルがわかっても、頭に電気が流れるほどの衝撃やひらめきはなく、期待しすぎたのかもしれません。
トリックとしても、決して目新しいものではないという印象でした。
犯人を見つける過程や矛盾のない犯人という視点では非常に良くできた話ではあったものの、よくあるトリックだなという印象。
目新しい叙述トリックやミステリーではあるものの、ミステリーを読み込んでいる方にはちょっと物足りない作品になっていると思います。
趣向は面白くて、やりたいこともやっていることも面白いんですが、トリックがいまいちなのがちょっともったいないです。
一風変わったミステリーが読みたいという方にはおすすめですが、「○○○○○○○○殺人事件」をきっかけにミステリー好きになることは少ないという感じ。
ただ、タイトルがわかると伏線がいろいろなところに張り巡らされていることがわかる点はめちゃめちゃ考えられた作品だと思いました。
犯人の行動やら、主人公たちの行動全てがタイトルに当てはまるというのは実に面白い伏線になっていると思います。
トータル、トリックを楽しむよりもタイトルを当てるところに楽しみが重視されている作品です。
トリック当てよりもタイトルを当てて、それまでの伏線を全部見直すと面白い作品になっています。
おすすめ度
「○○○○○○○○殺人事件」のおすすめ度は、5点満点中3点です。
趣向として面白いので、多くのミステリーを読んできた方にはおすすめできるけど、最初のミステリーには合わない。という評価。
ミステリーとして面白いですし、叙述トリックも面白いんですが、いかんせんミステリー小説の真髄は発揮できていない印象でした。
衝撃の強さで世界が180度変わるような驚きが少なめで、これを読むとミステリーの見方が歪みそうな気もしました。
なので、ミステリー小説を4、5冊読んだあたりで挟むのがちょうどいいくらいだと思います。
決して面白くないわけではないので、タイトルを当てる自信がある方はぜひ読んでみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛んでください。
まずは、ネタバレありのあらすじ要約からしていきます。
まず、沖たちは船に乗って再従兄弟島に向かいました。
メンバーは沖を含め、8人でした。
4回目のオフ会で、今回初めて「らいち」という女子高生が参戦してきました。
船に乗る前に実は一人の被害者が出ていて、その殺害方法が「○○○○○○○○殺人事件」のタイトル当ての例題として書かれていました。
再従兄弟島に着くと沖は南国モードという気持ちの切り替えが行われ、一人称も僕から俺に変わりました。
沖の一人称は特に叙述トリックでもなんでもなく、単純に人前では俺、家では僕みたいな感じに似てるものになります。
あと、沖は犯人ではありません。
1日目海で遊びながら、2日目になると、メンバー2人が失踪していることに気が付きます。
駆け落ちしたらしき文面が置かれていて、完全に島からいなくなっていました。
いくら探しても見つからず、館に戻るとまた一人メンバーが戻ってこないことに気が付きます。
そして、再び探しに行くと直近でいなくなったメンバーが洞窟内でアイスピックによって殺されているのが見つかります。
天候の影響で警察が来ない中、残ったメンバーは館の中で静かに過ごすことにします。
各自部屋に待機することになったところ、一人のメンバーの部屋から叫び声が上がります。
メンバーは無事でしたが、メンバーの話では「廊下で突然意識を失って気づいたら部屋の中にいた。なぜか部屋には内側から鍵がかかった状態になっていた」ということです。
生きている人間を密室状態の部屋に閉じ込めた理由とは。謎が深まる中、今回初参加のらいちが「解決編をやります」と言い出します。
そして残ったメンバーは食堂に集まり「らいち」の推理を聞くのです。
らいちの推理は、メンバーの中で唯一仮面を被っている黒沼が犯人であるというものでした。
また黒沼は失踪したメンバー浅川がなりすましている姿だと言い当てるのです。
仮面の人が犯人と被害者で入れ替わっているという単純なトリックになります。
そして、犯行にしようしたアイスピックを隠し持てたのは仮面の中しかあり得ないという推理で黒沼もとい浅川を追い詰めるのです。
補足しますと、今回オフ会をしているメンバーというのはヌーディストという人たちで、全裸で生活をしたいという趣向で集まったメンバーのため基本全裸で武器などを隠し持つことができなかったのです。
唯一隠し持てる方法がある浅川は犯行を認め、事件は幕を閉じるのです。
生きている人間を密室に閉じ込めたのは、らいちの仕業でアイスピックを肛門などに隠していた形跡がないかを調べるために実施したことでした。
以上が、一通りの「○○○○○○○○殺人事件」のあらすじです。
解説(ネタバレあり)
要約を見ただけでタイトルわかりましたか?
正解は、「頭隠して尻隠さず」殺人事件でした
メンバーがヌーディストであったという事実は伏線が張り巡らされていて、お風呂の場面やシャワーの場面といったところ、さらには椅子に座る場面などでほのかに匂わされていました。
また密室にした理由についても実に合理的でした。
タイトルのヒントになるとともに、読者に衝撃を与えるという意味でヌーディストが叙述トリックによって隠れていたわけですが、僕としては衝撃は少なかった印象です。
もっとすごい伏線かと思っていたのですが、認識がひっくり返るほどの衝撃はありませんでした。
最悪ヌーディストという事実がなくても犯人を当てることはできたかなという考えすらある状態です。
ですが、タイトル当てという観点ではここまでヌーディストが当てはまることはないと思います。
ヌーディストをテーマにしたからこそ、このタイトルがあって、犯人が使ったもう一つのトリックについても謎が解けるのです。
もう一つのトリックについては18禁要素が強いためこの場では言及しませんので、ぜひ本書で確かめてみてください。
ちょっとくだらない部分はあり、シリアスギャグといったトリックでした。
密室にした方法は描かれておらず、「針と糸のトリック」としか出てこなずトリックとしてはいまいちでしたが、タイトル当てに特化された作品としては面白かったです。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は「○○○○○○○○殺人事件」について紹介してきました。
トリックや犯人の動機にはちょっとがっかりしますが、タイトル当てという観点だけなら非常に面白い作品でした。
全く新しい切り口のミステリーという印象です。
マンネリ化しつつあるミステリーに新しい風が吹きました。
ぜひ、本書を読んでタイトルを推理してみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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