青春を覚えていますか?
甘酸っぱい思い出ですか?
今回紹介する西澤保彦さんの「黄金色の祈り」では、青春小説とミステリーが合わさった一冊となっていました。
この記事では「黄金色の祈り」の内容を一部ネタバレありで紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

他人の目を気にし、人を羨み、成功することばかりを考える「僕」
高校卒業後、アメリカの大学に留学するが、いつしか社会から脱落していく。
人生における一発逆転を狙って小説家を目指し、かつての旧友の死を題材に小説を発表するが?
青春ミステリーに共感しつつ、そのもどかしさにジリジリする。
果たして旧友の死の真相とは??
本書の概要

ページ数
解説含めず388ページ、全396ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
全三部に分かれており、主人公と一人称視点が常に「僕」という構成になっていました。
書評(ネタバレなし)

このまま終わっちゃうのかーい。というのが僕の正直な感想でした。
正直好印象ではなかったです。
終始、「僕」の自分語りを聞いている印象でふーーん、まぁ痛いやつだな~という感じ。
事件についても謎が謎を呼ぶ感じではなく、日常に潜むちょっとした疑問が積み重なっていく形でした。
徐々に伏線らしきものが積み上がっていく様子はかなり面白かったように思いますが、最終的なオチが弱い気がします。
すごい大どんでん返しやトリックがあるんじゃないかと期待しながら、もしかしてこれか?というのもあったりしたものの、平凡な感じで終わってしまったので残念な気持ちで読み終えました。
僕としては、うわっ、今までのダラダラ青春はこれをやりたいがためだったのか!?と驚かせて欲しかったです。
青春ミステリーとは言いつつも、青春にかなり比重を置いた作品だと思います。
ミステリーを求めて読むとちょっと的外れ感が出るかもしれないです。
おすすめ度

西澤保彦さんの「黄金色の祈り」のおすすめ度は、5点満点中2点です。
ごめんなさい。かなり辛めな評価。
まず僕の好みではなかったです。
わかりやすいどんでん返しで、これまでを一気にひっくり返すでもなく、ハラハラドキドキするわけでもない。
日常にありそうなことが起こり、痛い主人公の語りを聞いていく。
こいつ一体どうなっちゃうんだろう?という観点で読み進められるところは良いのですが、だからと言って手放しにおすすめはできません。
読みやすさはさすがでしたが、オチがとにかく弱いというのが僕の気持ちです。
なので、好きな作家さんではあるものの、辛めな評価としています。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約・あらすじをやっていきます。
「僕」は中学の吹奏楽部の部員で、ある日トランペットへのコンバートを命じられ、不安ながらも見事にコンバートを果たしました。
自分の器用さに酔いながら、後輩にも色々アドバイスする素晴らしい先輩として吹奏楽部という青春を謳歌していました。
そんな中、部員の一人である由佳のサックスが盗難されます。
結局誰がやったのかはわからず、コーちゃんと呼ばれる「僕」の友人が疑われている噂を聞くものの、そのまま迷宮入りに。
「僕」はトランペットに夢中になる中、コーちゃんや他の部員の才能に嫉妬しつつ、自分の音楽の才能の無さに徐々に気づき始めていきます。
そして、卒業しコーちゃんとも別々の高校へと進学しました。
高校生になり、トランペットにも見切りをつけ、また別の楽器へとコンバートする「僕」
しかし、そこでも才能の限界を突きつけられ結局吹奏楽部から辞めることを決意します。
そんなおり、コーちゃんが「僕」の学校に遊びに来るのです。
女の子に囲まれるコーちゃんを羨ましく思いながら、親しい中だったのにも関わらず会釈だけして通り過ぎる「僕」でした。
コーちゃんが遊びにきた次の日に再び由佳のサックスが盗難される事件が起こったのです。
「僕」と由佳は同じ学校に通っていただけに、中学の頃を思い出しながらやはりコーちゃんが…と思います。
さらに今回は盗まれるだけではなく、中学の頃に盗まれたサックスが自宅玄関前に壊れた状態で置かれるということもありました。
同一人物説がさらに濃厚になる中、「僕」は高校卒業の時期になります。

なんとか海外留学先を見つけ出し、アメリカに行くことになった「僕」どうにか他の人とは違う主人公な「僕」になるべくワクワクで大学生活を謳歌します。
しかし、詩にハマりつつ、自分の才能の限界やアメリカでは主人公にはなれない、常に「僕」は舐められていると感じるのです。
唯一できるのは夏休みに日本に帰国し、元同級生たちにアメリカの生活の話をする時くらい。
その時だけ自分が世界の中心になっている充実感を味わうことができたのです。
そんなおり、コーちゃんの死を知らされます。
中学校跡地の天井裏で由佳のサックスと共に遺体として見つかったのです。
驚きつつも、特にそれから日本に帰ることなく、ついに大学も卒業することになりました。
日本に帰ってくるのですが、大学院には入れなかったのが原因で引きこもりに5年間なりました。
親の脛を齧りに齧っているときに、中学時代の友達と出会い作家になろうと発起します。
自分のこれまでの経験をそのまま小説にしようと、由佳のサックスが盗難された件や自分の生い立ちをうまく絡めた作品を書き上げました。
親の伝手で英語臨時教師も経験しつつ、作家としても活動していきます。
そんなある日、中学時代の先輩・教子が「僕」の前に現れるのです。
そしてついに「僕」の秘めていた秘密を「僕」はついに語り始めます。
中学時代に由佳のサックスを試しに吹いてみたら、落としてしまい壊れたので屋根裏に隠したこと(サックスを盗んだ犯人は「僕」)
高校時代に由佳のサックスをコーちゃんに惚れている由佳に腹が立って盗み、屋根裏に隠したこと
罪悪感で返そうとしたら、間違って昔のサックスを返してしまったこと。
そしてさらには、コーちゃんの死は屋根裏のサックスを探している際の事故であることも判明します。
全ては「僕」が招いたことだったのです。
教子は中学時代からコーちゃんと付き合っており、「僕」を責めようとするも、実はコーちゃん自身「僕」の自信満々な姿に嫉妬していた話をしだします。
「僕」の嫉妬とコーちゃんの嫉妬。そして最後にはこーちゃんは死に、「僕」は罪悪感に包まれている。
時だけが経過した「僕」と響子は40歳を過ぎようとしているところでした。
苦い思い出が二人を包み込んで物語は幕を閉じました。
トリックの解説(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
大きなトリックは、実はサックス盗難は全て「僕」の仕業であったことです。
さらにコーちゃんの死についても、盗んだサックスを中学校の屋根裏に隠したのが原因とのことでした。
直接手を下したわけではなく、五寸釘が飛び出ていたための事故死ではあるものの、原因は全て「僕」であったというのが今回のトリックでした。
驚きは少ないもののちゃんと理屈は通っています。
コーちゃんの死に驚いたりしているのも、意図して殺していないことからうなづける反応でした。
唯一突っ込むとしたら由佳のサックスが盗まれた時の反応。
驚いていたくせに、実は「僕」がやっていたオチというのは無理があるような気がしました。
もうちょっと工夫がここには欲しかったかなという印象です。
最後に皆さんに聞きたいことが一つ。
この小説何か叙述トリックがあるんじゃないでしょうか。
本文随所に「*」というマークで文章と文章が区切られている場面があります。
また、作中で出てきた「Y」という詩。
もしもあそこの選択を違う方にしていたらの「IF」の世界を表した詩でした。
どうも僕にはこの二つのことから叙述トリックが小説に隠されている気がしてなりません。
「*」ごとを一個おきにすると小説の意味が変わってくるとか、あると思ったのですが僕は今のところ見つけられていません。
ネットでも調べてみても見つからなかったので、ぜひわかる方は教えて欲しいです。
もしかしたら、そんなトリックはない。というのも一つの答えだと思うので、ぜひ見つけた方はコメントしていってください。
まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、西澤保彦さんの「黄金色の祈り」を紹介してきました。
正直僕の好みではありませんでしたが、若い頃の痛さや愚かさを感じられる作品ではあったと思います。
ミステリーというよりかは過去を思い出す青春小説としてぜひ、気になる方はお手に取ってみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

