これ全て、Nのため。
Nって誰のことなんだ??というミステリーを今回は紹介します。
湊かなえさんの「Nのために」です。
夫婦殺人事件の裏に隠れた各人の想い。美しくも儚くて辛い裏の顔たち。
「Nのために」でしか読めないそんなミステリー小説でした。
この記事では、そんな「Nのために」の内容を一部ネタバレありで紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

超高層マンションの一室で、そこに住む野口夫妻の遺体が見つかる。
現場に居合わせたのは20代の4人の男女。
それぞれの証言で、事件は幕を閉じるのかと思われた。
しかし、それぞれの証言には明るみになっていないものがあり、衝撃の真実がそこにはあった。
なぜ夫妻は死んだのか。
それぞれが想いを寄せるNとは誰なのか。
切なさに満ちた衝撃の純愛ミステリー。
本の概要

ページ数
文庫サイズで解説含めず、318ページ。
全325ページでした。
読むのにかかった時間
大体3時間半ほどで読み切ることができました。
構成
最初に事件が警察が集めた証言ベースで紹介されたのち、4人の登場人物それぞれの視点で事件当時までの流れが証言される構成でした。
三人称で描かれながら4人の視点で事件を見ることができました。
おすすめ度

湊かなえさんの「Nのために」のおすすめ度は、5点満点中3.5点です。
かなりおすすめできるけど、個人的にはもうちょっと。という評価。
正直、面白くて一気に読めちゃうほど読みやすい点で、おすすめしたいです。
内容もわかりやすいですし、登場人物が数人と少ないので整理もしやすいと感じます。
「Nのために」というタイトル通り、事件がどんなNのためになのかを考えながら読むのに適した形になっていて楽しかったです。
若干おすすめ度を下げているのは、衝撃的なオチではなかった点。個人的にはとにかく最後の最後に驚きたい。
その点では湊かなえさんの「告白」の方が個人的には好みでそっちを優先して読んでほしいと思いました。
なので、衝撃的という点で若干僕的にはおすすめ度を下げている評価となっています。
とはいえ、確実に面白いミステリー小説なので、気になる方はぜひお手に取ってみてください。
書評(ネタバレなし)

おぉ、こういう形で繋がっていくのか~面白っ!!というのが僕の正直な感想です。
衝撃的ではないものの、繋がっていく気持ちよさはまさにミステリー小説の醍醐味を感じました。
全登場人物がNのために行動しているのです。
そして、それが徐々に誰が誰のためになのかが見えてくる。この仕掛けが徐々に水面に上がるようで面白く楽しい。
一気読みに適しすぎている内容だと思います。
僕自身も、最初の事件の紹介以降は一気に読み進め、数日とかからず読み切りました。
それくらいどんどん、真実が見えていく様が楽しい小説だったと思います。
ドキドキハラハラ感はないものの、ミステリーの醍醐味である徐々に謎が解けていく感じがたまらない作品です。
虐待と愛というテーマもまた、残酷でありつつ人の新たな考え方に触れられる点で作品と合っていると思いました。
衝撃的なラストではないですが、気になる方はぜひ読んでみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約・あらすじからやっていきます。
杉下、西崎、安藤は同じボロアパートに住んでいました。
そんなボロアパートが売られてしまうかもしれない。そう管理人に言われ、杉下と西崎は作戦を立てます。
ボロアパートともに売らない意思を表明している資産家に取り入ろうという考えです。
そして、杉下はスキューバーダイビングをしに行った際に、偶然を装って野口夫婦に出会うことができました。
さらに、安藤望と一緒にやっていた将棋をきっかけに、仲良くなり家に招かれるような仲になったのです。(安藤は作戦を知らない)
安藤はたまたま、野口夫婦のダンナと同じ商社に勤め、さらに将棋のライバルとして日々打ち合っていました。
ただダンナは、劣勢になると安藤の将棋の師匠である杉下に助けを乞い、会社の先輩としても絶対に負けないようにしていました。
そんなある日、野口夫婦の妻・奈央子が不倫をしているのでは?という噂を聞き、さらに野口夫婦のマンションの入り口には外からかけるチェーンを見つけます。
ダンナに話を聞くと、流産をきっかけに奈央子がフラッと家を出歩くから心配で外出する時はチェーンをかけるようにしたとのこと。
一応は納得したものの、やはり心配。
そんな中、杉下の隣に住む西崎から杉下に秘密の話がされます。
杉下は奈央子を救いたいとのこと。
なんと、奈央子の不倫相手とは西崎だったのです。
奈央子はダンナに暴力を振るわれている。花屋に扮して助けに行きたいから協力してくれと。
杉下は了承し、杉下はさらに昔の憧れの人で合った成瀬も巻き込み、出張レストランサービスを使ってダンナから奈央子を救う作戦を決行します。
作戦は順調にいくかと思いきや、安藤が思ったよりも早く来て、外についているチェーンを閉めたり、奈央子を思っていたのは西崎の一方的なものであったなどがありました。
最後の最後には、西崎に殴りかかるダンナを杉下が殺してしまうのです。
ダンナが死んだことでさらに不安定になる奈央子は、包丁で自殺してしまいます。
そして、皆が皆、思い人のためにダンナが奈央子を殺し、ダンナを西崎が殺したという筋書きにしました。
こうして事件は幕を閉じ、真実は全て闇の中へと消えていきました。
Nのためにを整理(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここでは、誰が誰のためにどんなことをしたのかを整理します。
まずは杉下希美から。
杉下希美は、成瀬と安藤望のために行動をしました。
成瀬のために、放火の罪から逃れられるような証言をし、安藤ために奈央子の不倫相手である西崎を差し出しました。
結果的には、杉下自身がダンナを殺してしまうのですが、これは闇に葬られ、罪悪感と共に生きていきます。
ただ、杉下もまた過去に父親に見放された金遣いの荒い母と生活していた辛いものがありました。
次に成瀬です。杉下の同級生で実は学生時代から両思いだった相手です。
成瀬は杉下のために、出張レストランサービスを行ったり、チェーンは空いていたと警察に証言しました。
また、奈央子を連れ出す作戦も知っていながら、隠しました。
大したことはしていない人物ですが、杉下に影響を与えた人物でした。
次に安藤です。安藤は杉下、西崎と同じアパートに住む住人。基本的に彼は計画を知りませんでした。直前まで西崎と奈央子が秘密裏に合っていることすら知りませんでした。
ただ、早めに野口夫婦の家にやってきて、外についているチェーンを閉めただけ。
杉下に男がいる。そんな情報を聞いたために、ちょっと意地悪をしたくなっただけ。
最後に西崎。彼は奈央子のため、杉下希美のために逃避行作戦を考え、殺人の罪を被りました。
西崎は子供時代に母親から愛という名の虐待を受けており、虐待=愛という考えを持っているところがありました。
そんな中、奈央子と出会い、彼女もまた虐待=愛であると考えていることがわかり、心を惹かれていくのです。
ただ、やはり傷つくのは違う。そう思い虐待ダンナから逃すために作戦を考え、杉下とともに決行しました。
しかし、いざ迎えにいくと奈央子は、西崎のことは全く考えておらずダンナを愛しており、挙句の果てには杉下がダンナを誘惑していると言い出す始末。
作戦失敗だと思い、外に出ようとするも安藤によって閉められたチェーンで外に出られない。
ダンナに見つかり、殴り倒される。
そして、ダンナを殺してしまう杉下。
自分と似たところがある杉下を庇いつつ、自殺した奈央子の歪んだダンナへの愛を認められないために西崎は罪を被ることにしました。
皆が皆、Nのために殺人をし、殺人を隠したという事件でした。
まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は湊かなえさんの「Nのために」を紹介してきました。
徐々に謎が解けていくミステリー小説。最高でした。
衝撃的なラストではない分、僕としては、ほっっんのちょっと物足りなかったです。
とはいえ、確実に面白いとは思いますので気になる方はチェックしてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

