今や炎上は日常茶飯事になっています。
ですが、もしもそれが自分だけど自分じゃなかったとしたらどうでしょう?
今回紹介するのはまさにそんな一冊、浅倉秋成さんの「俺ではない炎上」です。
ワクワクドキドキしながら、ちょっとドキッとする内容。
まさに現代人に読んでほしい一冊でした。
この記事では、そんな「俺ではない炎上」の書評から一部ネタバレありの内容要約を行なっていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
外回りの営業部長・泰介が帰社すると社内の様子がおかしい。
どうやら泰介が「女子大生殺害犯」であると実名写真付きでネットに素性が晒されて炎上しているらしい。
全く身に覚えがない濡れ衣だが、Twitterで犯行を自慢するアカウントは実に巧妙で見れば見るほど泰介そのもの。
無実を訴えるも誰一人信じてくれない。会社も友人も、家族でさえも。
ほんの数時間にして日本中の人間がて気になり、誰も彼もが追いかけてくる中、泰介は必死に逃げつつ真相を追っていく。
果たして、泰介を語るアカウントは誰なのか。本当に泰介は無実なのか??
本書の概要
ページ数
解説含めず366ページ、全373ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
視点は泰介、泰介の妻、泰介の娘、男子大学生、刑事の五つの視点で構成されていました。
視点が切り替わることで、どういった状況になっているのかそれぞれの目線で捉えることができます。
一人称形式で、読みやすい文体でした。
書評(ネタバレなし)
ワクワクした先にそうやって落としてくるのか~うーん素晴らしい!というのが僕の感想でした。
逃走モノということでワクワクは事前からしそうだなぁとは思っていましたが、やはりワクワクドキドキさせてくれる緊迫感が気持ちよかったです。
また、ミステリー要素としての誰が犯人なんだ?というのも面白く、どんどん引き込まれていきました。
最後の最後でわかる真実も実に見事で伏線がすごい、どんでん返しがある作品。としても素晴らしいと思います。
さらにSNSの誹謗中傷という昨今の社会的テーマにも踏み込んでいるのが非常に良いと思いました。
読者に投げかけてくる部分、登場人物を通して作者からのメッセージをひしひしと感じる作品だと思います。
悪い点は目新しさがSNSを使っている点だけというくらいです。
逃走も最後のどんでん返しも決して予想から逸脱したものでは決してなかったため。
どこかでみたことがあるような気もしてしまいました。
SNSをそこに組み込むこと自体は新しいものの、全体を通すと決して新しさは感じづらいというのが僕の印象です。
とはいえ、非常に面白く最後にはきっちり驚かされていますがね。
おすすめ度
「俺ではない炎上」のおすすめ度は、5点満点中5点です。
ぜひ、一人でも多くの方に読んでほしい作品だと思います。
逃走劇というわかりやすいメイン軸に、SNS、誹謗中傷、どんでん返しというモリモリの内容になっていてまず飽きません。
しかもページ数も決して多すぎないので読みやすい。
もうこれは読むしかありません。
社会的メッセージまでしっかりと盛り込まれていますし、そのメッセージにも説得力があって考えさせられる。
ぜひ、一度お手に取ってみてほしいです。
ワクワクドキドキのさきの驚きと、一歩立ち止まって考える体験をしてみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの内容要約、あらすじをやっていきます。
大学生の初羽馬(しょうま)はあるツイートを見つけます。
そのツイート内容は女子大生を殺したことを自慢げに語る内容でした。
画像が本物であると判断した初羽馬はリツイートすることで、そのツイートは一気に拡散されることになりました。
一方、ツイートとは縁のない泰介はハウスメーカーに勤めるサラリーマンで、ある日会社に戻ると社員の様子がおかしいことに気が付きます。
支社長に呼ばれ、その理由を聞き驚きます。泰介を名乗る人物のツイートこそが殺人を自慢するアカウントだったのです。
全く身に覚えがないと主張する泰介ですが、ひとまず自宅謹慎となりました。
パソコンやスマホで、炎上の様子を見るととんでもないことになっていることに気がつく泰介。
警察はまだツイートの内容から泰介が犯人であると断定はしていないものの、泰介は早々に逃げた方が良いと判断して逃げ出します。
さらに泰介の自宅から遺体が発見され、いよいよ泰介は警察にも追われることになりました。
寒空の中、ツイートによって泰介の個人情報は晒され、ついには泰介討伐隊なるものまで登場するのです。
似ているという理由だけでホームレスがリンチされるニュースも流れ、誰も泰介の味方はいない状態となります。
追い込まれながらも犯人を追うことを決意する泰介。
泰介の娘・夏実は事件によって早退します。
早退した夏実を心配した同級生のえばたんは、一緒に犯人を追うことを提案します。
小学生ながら怪しい証言を元に探すものの、特に犯人は見つからず夏実はある隠れ家にえばたんとお父さんのひどい罰の話をしました。
一方大学生の初羽馬は、リツイートした内容が炎上しているのをみて早く捕まってほしいと他人事でいたところにサクラと名乗る女子大生が一緒に泰介を探してほしいと言ってきます。
その美貌に一緒に行動することにした初羽馬。
しかしサクラの様子がおかしくついには包丁まで所持していることを知ってしまいます。
サクラはあくまで護身用とは言うものの、信じられない初羽馬。
ですが、サクラのリツイートさえしなければこんなことにはならなかった。
あなたも加害者の一人であることを自覚しろ。と言う熱い言葉によって自己反省を覚え、泰介ではない真犯人を追うことにします。
そしてついに、犯人が隠れていると思われる場所に初羽馬、サクラ、泰介が集います。
そこにいた犯人こそがえばたんでした。
えばたんは泰介のウォークマンを使って、泰介の自宅のWi-Fiを使ってツイートを作っていた人物だったのです。
動機は女子大生たちが体を売って稼いでいたから正義の鉄槌というもの。
泰介を加害者に仕立て上げたのは、かつて夏実に酷い仕打ちをしたことがあったから。というものでした。
えばたんが捕まり、事件は幕を閉じたのでした。
仕掛けの解説(ネタバレあり)
ネタバレ続きます。
サクラ=夏実であること、夏実の視点での語りが実は過去の話だった。というのが仕掛けでした。
夏実が過去にインターネットによって性被害一歩手前まで行った事件(事件①)
泰介が今回巻き込まれた女子大生連続殺人事件(事件②)
この二つの事件というのをうまいことどっちがどっちか判断できなくさせてからの、実は夏実視点で語っている事件は事件①というもの。
見事なトリックで、いかにもどちらも事件②を追っているように見せて、夏実も小学生であると思い込ませることに成功した仕掛けでした。
しかし実は夏実は大学生になっているというのが現代の話で、小学生の話は過去であった。
これによって、えばたんという全く想定外の犯人を衝撃的に登場させることに成功しています。
えばたん=小学生だと思っていたのに、実はえばたんが登場してくるのは過去だったので、今では大学生くらいになっているという展開。
見事としかいえない仕掛けになっていると思いました。
夏実の視点であえて事件の全容や詳細に触れていないというのが見事としかいえない伏線だったのです。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、浅倉秋成さんの「俺ではない炎上」を紹介してきました。
非常に良くできた一冊で、久々の5点満点でおすすめしたい一冊でした。
ドキドキとワクワク、驚きとショック、ぜひ体験してみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。