5分でわかる 貴志祐介「新世界より 下」書評&ネタバレ要約

小説の書評

やばいです!

上巻で設定とミステリー要素を広げ、中巻でミステリー要素をちょっと回収しながら新たな伏線を残す。

そして、下巻、とんでもない展開へとつながりました。

「新世界より」は文庫本で上中下と分かれた作品で、超長編なのですが、あっという間に読み切ってしまいました。

それくらい面白いんです。最近読んだ小説の中でもNo.1です。

この記事では、そんな「新世界より 下」のあらすじ紹介、書評、要約、解説をしていきます。

上巻、中巻については別記事で書いていますので、まずはそっちから読んでみてください。

では、行ってみましょう!

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あらすじ

夏祭りの夜に叫び声が響いた。

悲鳴は悲鳴を呼び大殺戮に巻き込まれた人間たち。

呪力を持っているものの、敵はそれを知った上での戦略で攻めてくるため押されに押される。

早季はこの状況を一発逆転させるためにあるものを探しにいく。

真実と人間の存続をかけた戦い。

果たして、人間たちが隠してきた呪力の秘密と敵の正体とは?

早季は無事に手記を書き終えることができるのか。

これまでの全ての伏線が回収され、あとはあなたが伏線と物語に酔いしれるだけです。

本書の概要

ページ数

文庫サイズで、解説含めず539ページ、全551ページになっています。

読むのにかかった時間

テンポ良く読めて、大体5時間ほどで読み切ることができました。

構成

上、中巻に引き続き、主人公早季の一人称で書かれた文体で、完全な上巻、中間の続きになっています。

書評(ネタバレなし)

ネタバレなしには語れないほど、全ての事象がうまく絡み合った見事な作品でした。

上巻、中巻で広げた風呂敷を見事に畳切った作品で、真実に驚けますし、謎が解け切った時の納得感もありました。

また、何より下巻のバトルシーン、戦争シーンは熱すぎました。

そんじょそこらのバトル漫画以上に、バトルが熱く、そしてハラハラドキドキするのです。

誰が死ぬかわからない展開は、本当にドキドキしてこっちまで緊張するように描かれています。

安心か?と思いきやおもいっきり地獄へ叩きつけられたりと感情が忙しいとも言えます。

感情が振り回されつつも、それが楽しい、ジェットコースターのような体験ができる下巻でした。

ミステリー要素もしっかり回収されるので、上中は無理してでも読んだほうがいいです。

上中ときてこの下巻なら、かなり長いですが、読む価値は十分にあります。

実際、ここ一年で読んだ小説の中でもダントツで面白かったです。

僕の人生で面白かった小説ランキングに更新がかかりました。

下巻の一部でも話してしまうと絶対ネタバレは避けられないので、ネタバレなしの書評はこのくらいです。

とにかく、ハラハラドキドキのバトルと残酷な真実、考えさせられるラスト。

新世界より、見事すぎる作品でした。

要約・あらすじ(ネタバレあり)

ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛んでください。

では、まずネタバレありのあらすじ、要約から行っていきます。

簡単に下巻の流れを書いていきます。

・毎年恒例の夏祭りが開催される

・夏祭り中にバケネズミが攻めてくる

・大殺戮が行われ、バケネズミの中には悪鬼が一人存在することがわかる

・人類最強の鏑木肆星がバケネズミの大半を倒す

・悪鬼によって鏑木肆星が殺される(鏑木は悪鬼に呪力を使えないから)

・早季と覚は悪鬼を倒すべく、サイコ・バスターを手に入れに東京へと向かう

・東京では地下通路を浸かって目的の場所に行くしかなくみたことも無い生物で埋め尽くされた地下を唯一の味方であるバケネズミ奇狼丸と共に進む

・なんとかサイコバスターのある建物に到着し、サイコ・バスターを手に入れる

・悪鬼を罠に嵌めようとするも逆に相手の罠に嵌り絶体絶命になったところでなんとか自殺覚悟でサイコ・バスターを悪鬼に使う

・覚の死を避けるべくサイコバスターの発動を呪力によって無理やり止めた早季、なんとかその場から逃げ、他の手立てがないか熟考する

・熟考の末、悪鬼はバケネズミには呪力が使えず、使ってしまうと自分が死んでしまう特徴があると看破し作戦に打って出る

・奇狼丸を人間と見せかけ特攻させることで、悪鬼に奇狼丸を殺させ、そのショックで悪鬼も死んでしまうという作戦が嵌り、悪鬼を倒すことができる

・悪鬼が死んだことで、敵のバケネズミ体制は完全に崩壊し、人間の手によって狩り尽くされる

・首謀者であるバケネズミは永遠の苦痛を与えられる刑に処される

・早季と覚は、実はバケネズミは人間が変化した生物であることを知る

・人間の不完全さと戦争への嘆きを綴って、千年先への手記は終わる

以上が、一通りのあらすじになります。

かなり端折っている部分がありますので、悪鬼の正体が実は真里亞と守の子供であるとか、サイコバスターでどうして悪鬼を倒すことができるかなど、気になる部分はぜひ本編を手に取って自分の目で確かめてみてください。

解説(ネタバレあり)

サイコ・バスターでケリが着くかと思いきや、最終的には作戦勝ちというオチは見事でした。

呪力を持っている人間は人間を攻撃することができず、万が一攻撃し殺してしまったら愧死機構と呼ばれる行動に強制的に移ってしまい呪力で自殺してしまいます。

この上巻から出ていた設定が最後にも生かされるのは見事な伏線回収でした。

単純にサイコ・バスターというポッと出の兵器ではなく、これまで培った知識を使って倒すという構図はとても好感を持てました。

最終的に実はバケネズミは人間と同じ遺伝子を持つ存在だと判明してから、呪力によって変えられた呪力を持たない人間=バケネズミという真実も悲しくもあり納得のいくものでした。

バケネズミが呪力を持つ人間に従順なように見せながらも腹の底では、いつか根絶やしにしてやろうと考えていた理由にもなりますし、戦略やらで人間を追い詰めたというのも元々人間だったために知能が高かった理由になります。

見た目から想像もつかない結末ではあるものの、呪力という概念を説明されてきたことによって見事に納得する結末になったと思います。

さらに愧死機構という呪力を持った人間同士を殺し合わせない遺伝子レベルの組み替えが、果たして本当に正解だったのか?という投げかけも個人的に好きでした。

どうすれば戦争がなくなるのか、殺し合うことがなくなるためにはどうしたらいいのか、そんなことを考えさせられる終わり方です。

どうすれば、戦争やら、殺し合いは無くなるんですかね?

重い話になってしまったので、最後に僕が一番お気に入りのシーンを紹介します。

鏑木肆星がバケネズミを一掃するシーンと、あっさり悪鬼に殺されるという一通りのシーンです。

鏑木肆星は人類最強の呪力を持っていて、360度の視野と透視能力も持った最強の人間でした。

なので、彼一人でバケネズミを一掃するシーンは絶望の中の希望として描かれていて、読者である僕も安心し切った状態になりました。

「この人がいれば大丈夫」という感情です。

呪術廻戦でいうところの五条悟ですね。

ですが悪鬼には呪力を使うことができないので、鏑木肆星はあっけなく殺されてしまいます。

このあっけなく感が見事なんです。

絶望からの希望、そしてあっけなくその希望が散るところが、実に見事で震えるほど不安が掻き立てられるシーンでした。

感情の浮き沈みを作者によって操られる感覚でした。

バトルとしてもここまで絶望と希望をくり返す見事な作品だと思いました。

まとめ

今回は「新世界より 下」を紹介してきました。

文庫本では上中下の3巻に分かれた作品で、全部を読み切る方は少ないかもしれませんが、間違いなくおすすめです。

正直上巻の半分まで読んでしまえば、あとは一気に読み切れるくらいに面白いと思います。

下巻が特に面白いので、ぜひ頑張って上巻、中巻を読んでください。

この記事ではネタバレをしている部分もありますが、ネタバレを知ってでも多分ドキドキハラハラワクワク、全部の感情を揺さぶられると思います。

ここまで見事な作品にはなかなか出会えませんので、ぜひ一度お手に取ってみてほしいです。

では、皆さんの想像力が世界を変えることを祈っています。

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