バーに集まる仲間たちとそこに現れた一人の美女。
そして物語は動き出す。という誰もが妄想するかのような物語。
今回紹介する道尾秀介さんの「透明カメレオン」はそういう物語でした。
ただ、単純にちょっと恋愛で終わるなんてことはない、ちゃんとミステリーしていく展開も最高な一冊。
この記事ではそんな「透明カメレオン」の書評と一部ネタバレありの内容要約をしていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
ラジオパーソナリティの恭太郎は、素敵な声と冴えない容姿の持ち主。
行きつけのバー「if」に集まる仲間たちの話を面白おかしく作り替え、リスナーに届けていた。
そんな大雨のある日、びしょ濡れの美女がバーに迷い込み、恭太郎たちは殺害計画を手伝わされることになる。
意図不明の指示に振り回されながら、恭太郎はだんだんと彼女に心惹かれていく。
果たして、彼女の目的とは?
本書の概要
ページ数
解説含めず445ページ、全453ページでした。
読むのにかかった時間
大体5時間ほどで読み切ることができました。
構成
主人公である恭太郎の一人称視点で描かれていました。
文章はラフで漫画に近い感覚で読めるほど、読みやすくラストにかけて一気に読むスピードが上がる展開が待ち受けている一冊でした。
書評(ネタバレなし)
まさかの展開からの、急な伏線回収に心を振り回された!!というのが僕の感想です。
美女との恋愛かーと思いきや、まさかの方向に転がっていってドキドキワクワク展開になってからの唐突な伏線回収。
読み応えがとにかくすごく、終盤は本当に一気に読むしかない作品でした。
ストーリーとしての展開も良いのに、最後に驚きの真実が出てくる。そこに衝撃と感動がありました。
ちょっとジーンとしてしまい、ラストの描き方も素晴らしかったです。
鳥肌が立つ系の伏線回収というよりかは、開いた口が塞がらない系の伏線回収で、「えーー」っという口のまま僕はしばらく動けませんでした。
ストーリーが面白いから一気に読んでしまう中に急に出てくる伏線回収。
まさに不意打ちで、僕は読んでいて楽しかったです。
悪いところを挙げるとすれば、主人公の見た目の描写ですかね。
ちんちくりん。という表現だけではどういった見た目かイマイチ掴めず、モテない万年童貞というのを僕の頭では想像しきれなかったので、感情移入しきれなかった部分もありました。
とはいえ、一人称なので割と感情移入はできましたが。
思うこともかなり一般的な考え方をしている人物で、めっちゃ気持ちわかって面白かったです。
特に恋愛に奥手な部分とか、ちょっと妄想は行っちゃうところとか。
おすすめ度
道尾秀介さんの「透明カメレオン」のおすすめ度は、5点満点中5点です。
文句なしの満点、グロくもないですし問題になりそうな描写もほとんどない。
さらにメッセージ性もある作品なので、とにかく全員におすすめできます。
ストーリー展開が特に面白く、意味わからないところから徐々に謎が解けていく感じ、最後には全ての謎が解けつつ別の伏線も一気に解放されるので読み応えがとにかくすごいです。
ぜひ、次の本に迷っている方がいたら「透明カメレオン」を推したいと思います。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの内容要約・あらすじからやっていきます。
恭太郎はラジオパーソナリティです。
夜中に行うそのラジオはちょっと有名で、恭太郎は唯一の強みである声を活かして面白おかしい物語を語っていました。
そんな恭太郎はラジオ後、行きつけのバー「if」に行くのが日課でした。
バーにはママを含む男女5人の常連さんがおり、彼らの経験談も恭太郎はラジオで話していました。
関係は良好で、みんなでバカみたいな話をしている中、ある大雨の日、突然ずぶ濡れの美女が来店します。
「こ、、す、た」とつぶやく女性に、ママはコースターを渡す。しかし女性はそのまま帰ってしまいました。
何がなんだかわからない一行でしたが、コースターではなく「殺した」と言ったのではないかと推理します。
そんなわけないと思いつつ、次の日もやってきた美女。
コースターの言い訳をしつつ、恭太郎のファンだと言い出す女性、しかし勘違いから恭太郎の声が別の人物だと思ってしまいます。
恭太郎はその女性・恵の幻想を壊してはいけないと、常連さんに自分の見た目を補ってもらうことにします。
常連さんであるレイカに動いてもらって、恭太郎は声を出す二人羽織のようなことをしだすのです。
一旦その場はそれで乗り切れるものの、後々恵にバレてしまい、逆に脅されることになってしまいます。
半分無理やり言うことを聞かされる状況になってしまった「if」の常連たち。
恵に言われるがまま、後藤と呼ばれる人物を殺す計画を手伝わされることになります。
追いかけてトラックに轢かれさせようとしたり、毒入りご飯を提供したり。
そんな中、恵が突然拉致されたとママが言い出します。
恭太郎含む常連たちは追いかけます。
不法投棄している後藤がそこにはいましたが、実は殺人計画で殺そうとしていた人物は恵の父親であることも判明するのです。
恵は父親が、後藤に騙されたことで復讐しようとしているのを知り、父親の行動を止めるべく父親に脅しをかけるために殺人計画(絶対に殺せない程度)を実行してきたのでした。
恵の拉致も父親がシンプルに連れてきたという話で、父親は念願だった後藤への復讐として顔面に一発拳を入れることに成功します。
怒る後藤、逃げる恵と恵の父。
その二人と出会う「if」の常連たち、後藤は不法投棄を一緒にする部下たちを連れ追いかけてきます。
逃げようとするも先回りされ、逃げられない状況を作られてしまいます。
恭太郎はそこで、作戦を実行し突撃しつつ自分はラジオパーソナリティで、持っているラジオからラジオ局に電波を飛ばしているという嘘をつきます。
後藤はすっかり騙され、さらに懐中電灯についていたサイレンの音に驚き、逃げていきます。
なんとか、後藤を追い払い一件落着かと思いきや、恭太郎は恵に「if」の常連たちの秘密を明かします。
そして恭太郎自身の秘密も明かし、二人は涙して物語は幕を閉じました。
トリック解説(ネタバレあり)
ネタバレ続きます。
恭太郎が最後に語った、「if」の常連たちの秘密はぜひ本編で読んでみてください。
実は語っていたラジオの内容は半分本当で、半分嘘という仕掛けで「if」に集まっているのはそんな後悔をした人たちだったわけです。
恭太郎自身も秘密を背負っていて、母親と妹、生まれたての甥っ子が田舎に帰っているという話でした。
しかし、実は三人は田舎に帰った後事故に巻き込まれて亡くなっていたのです。
ずっと、帰ってくると発言していた恭太郎でしたが、実は骨が帰ってくるという意味でどこにも生きているなんて語っていませんでした。
衝撃の事実に読者も恵も驚くというトリックでした。
途中留守番に妹や母親の声が入っていましたが、それは最近のものではなく昔の録音された音声。
恭太郎が冷静になるためにやっていたエナメル線を巻く作業も、恵と出会ってからの期間にしては妙に多かった。など
伏線もしっかり張られていました。
常連の秘密や恭太郎の秘密、それがあったからこそ最後の告白と恵の後悔が光る作品になっていたと思います。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、道尾秀介さんの「透明カメレオン」を紹介してきました。
非常に良くできた一冊で、久々のおすすめ度満点でした。
とにかく一度読んでほしい作品で、ストーリー、伏線回収が素晴らしかったです。
悪いところを見つけるのが難しい作品でした。
ぜひ、一度お手に取ってみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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