特許というのは遠いようで短かです。
スマホやパソコン、実は特許の塊なんです。
今回紹介する南原詠さんの「特許やぶりの女王 弁理士・大凰未来」はそんな特許をテーマにした全く新しいミステリーでした。
特許違反を訴えられた会社をいかにして守るか、逆にどうやって反撃するのかという見どころ。
この記事では、「特許やぶりの女王 弁理士・大凰未来」のページ数から見どころ、一部ネタバレありのあらすじ要約を行っていきます。
では、行ってみましょう!
あらすじ
「特許侵害を警告された企業を守る」ことを専門にしている事務所に所属するのが、主人公・大凰未来(おおとり みらい)
依頼は断らないをモットーにした事務所で、未来は常に東奔西走の忙しさだった。
今回のクライアントは、映像の技術特許侵害を警告された人気VTuber・天ノ川トリィ。
トリィの権利を守るため奮闘することになる未来、調べを進めていくうちに企業の思惑が浮かび上がってくる。
特許侵害の裏に隠された本当の狙いとは?
VTuberや3Dスキャン、5Gなど、現代感たっぷりの物語。
果たして、未来はトリィを守ることができるのか?
トリィを守るために一か八かの賭けとは?
本書の概要
ページ数
文庫サイズで解説含めず、268ページ、全277ページでした。
読むのにかかった時間
テンポの良い作品で、だいたい3時間半ほどで読み切ることができました。
構成
主人公・大鳳未来を主軸とした三人称視点で書かれる構成です。
登場人物はだいたい12人ほどでした。
書評(ネタバレなし)
こんな世界があったのか!というのがいちばんの感想です。
ミステリーというと事件の謎を解くのが一般的だと思います。
ですが、「特許やぶりの女王 弁理士・大凰未来」は全く違います。
事件は起きるのですが、殺人事件であるとか、普通じゃ考えられない奇妙な事件ではありません。
むしろ、身近にありながらも僕たちが普段から意識しないところに注目された内容でした。
そう、特許というのが「特許やぶりの女王 弁理士・大凰未来」のメインテーマになっているのです。
特許というのはざっくり、新しい発明がなされたときにその権利を持つことで、第三者が勝手に発明を真似できないようにしているものになります。
弁理士というのはこの特許などを専門とした職業です。
まさにこの視点はミステリー業界では、新しい切り口だと僕は思いました。
身近ながら、意識したことのない特許について、わかりやすく解説がされながらクライアントのピンチのハラハラ、未来の斬新すぎるアイデアと大逆転を味わえるのです。
現実にありそうな分、普通のミステリー小説よりもハラハラドキドキするかもしれません。
ミステリーなのに、殺人事件も探偵も推理も出てこないのも特徴です。
仮定で進む話ではなく、根拠を持って物語が進んでいき、最終的にクライアントの問題を解く!という点でミステリー要素が含まれていると思います。
こうなってくるとミステリーとはなんなのか、定義が難しくなってきますね。
謎要素や何かを解く要素があればミステリーと認めればいいのかもしれません。
「特許やぶりの女王 弁理士・大凰未来」は「このミステリーがすごい」の大賞を受賞した作品なので、ぜひとも押さえておいてほしい一冊です。
殺人事件などの一般的なミステリーに飽きてきた方にはぴったりの作品だと思います。
おすすめ度
5点満点中3点というのが「特許やぶりの女王 弁理士・大凰未来」に対する評価です。
特許や弁理士という視点の新しさは非常に面白かったですし、最後のオチも綺麗にまとめられていて良かったと思います。
ですが、僕としてはもう少しハラハラ感、唖然とするようなオチ、逆転がほしいと思ってしまったんです。
途中のハラハラドキドキも、未来があまりにも冷静に対処してしまうので感情移入しきれない部分がありました。
登場人物が人間離れしているところがあり、そういった部分で評価がイマイチになってしまったと思います。
法律系のミステリーがそこまで好きじゃないという僕個人の好みの問題ではありますが、何かの参考にしていただければ幸いです。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを大いに含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありのあらすじ・要約からやっていきます。
未来は、VTuberである天ノ川トリィにかけられた特許侵害の訴えを解決する目的で立ち上がります。
天ノ川トリィの撮影機材がレーザスキャナ、5Gを使っており、それは特許違反であるから、直ちに使用を取りやめ賠償金をよこせ!というのが相手側(ライスバレー)の主張でした。
未来はまず、トリィの撮影をやめさせた上で本当に特許違反であるかの調査から始めました。
調べていくうちに、確かにライスバレーの特許を違反している可能性が高いということがわかってきます。
しかし、同時に特許の本当の持ち主はハナムラで、ライスバレーはライセンスを委託された専用実施権であったことがわかります。
専用実施権というのは、ほとんど特許を譲渡するような契約なので穴が見つからず、未来は悩み始めます。
そんなとき、ライスバレーとハナムラが専用実施権を契約する上で交わした条件に何か怪しいところを感じ、調べるとなんと、一時はライスバレーはハナムラの特許が無効である裁判をしていたことがわかったのです。
本来なら無効である特許を、ライスバレーはライセンスをもらう専用実施権として契約したということになります。
ますます、怪しいと思っている中、トリィが活動休止をしていると世間で騒がれ始めます。
特許侵害の警告により撮影を止めていたのが、休止と間違えられ世間が騒ぎ始めたのです。
VTuberの祭典「ブラックホール・フェス」も近づき、VTuber界は騒いでいるところに前回王者のトリィが活動休止が騒がれ、盛り上がっていました。
未来はその「ブラックホール・フェス」に影にハナムラの存在を嗅ぎつけます。
トリィを狙い撃ちしたかのような、特許侵害の警告通知、元々ハナムラの特許であった撮影技術がライスバレーに渡った理由、VTuverの祭典という一見バラバラに見える事象を未来は結びつけるのです。
そして、ついにハナムラの社長を追い込むことに成功し、ライスバレーとの一騎打ちに持ち込むことができ、特許侵害を黙認させることにまで成功します。
結果、トリィはこれまで通りの撮影方法を利用することができ、ライスバレーはそれに文句はつけないという結果を得ることができたのです。
クライアントの要望を完璧に叶えた未来は、今度は中国の新しいクライアントの元へと向かうのでした。
ハナムラと特許のところを解説(ネタバレあり)
要約では端折った、ハナムラとライスバレーの特許周りについて解説していきます。
まず、ハナムラという会社で生まれた今回の問題となっている撮影技術(仮の呼び名としてスキャン技術Aとします)
実はこのスキャン技術A自体は、鍛冶屋という社員によって作られたものでした。
本来の特許は作った本人の権利となります。
通常であれば、会社と社員の間では社員が作ったものに関する権利は、会社がもらうという契約を結びます、ハナムラはその契約を結んでなかったため、鍛冶屋の発明であるスキャン技術Aは鍛冶屋の権利だったのです。
権利が鍛冶屋にあるにも関わらず、ハナムラが特許の権利を持っているという点で、実はハナムラの特許(スキャナ技術Aの特許)は特許としては無効でした。
それに気づいたライスバレーは、ハナムラの特許は無効であると裁判を起こそうとしました。
ですが、ライスバレーはその申し出をやめました。
というのも、ハナムラからスキャナ技術Aの特許をライセンスとして、もらえるという交渉があったからです。
ライスバレーはもらえる特許のライセンスのメリットを取り、ライスバレーはハナムラのスキャナ技術Aのライセンスをもらいました。
なので、スキャナ技術Aを違反している場合であればライスバレーが警告を行う、取締りを行うという形になりました。
ちなみに、特許の本来の持ち主であるハナムラも勝手にスキャナ技術Aを使用した場合は、特許違反になるのです。
このライセンスを渡した時点で、特許の本来の持ち主も使用できなくなる専用実施権の仕組みによって、未来が逆転できたわけになります。
ハナムラが勝手にスキャナ技術Aを使ったために、ハナムラからライスバレーに完全に特許が移動しました。
最終的にはライスバレーが完全にスキャナ技術Aの特許を得て、鍛冶屋も自分の権利は要らないという形になりました。
特許のライセンスがどのように譲渡されるかが、「特許やぶりの女王 弁理士・大凰未来」の重要事項でした。
まとめここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、南原詠さんの「特許やぶりの女王 弁理士・大凰未来」を紹介してきました。
弁理士、特許というテーマで斬新な設定と展開が非常に面白い内容でした。
特許って難しい分かなり面白そうだななんて思いました。
弁理士の勉強も面白そうだなと影響されやすい僕は思っちゃいました笑
では、皆さんの弁理士への憧れが強くなることを祈っています。
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