5分でわかる下村淳史「ヴィクトリアン・ホテル」書評&ネタバレ要約・解説

小説の書評

困っている学生に向けて無料でお弁当を配る、これは親切なのでしょうか?

全ての学生に配れないのは不公平だから、やめるべき。

少数でも困っている人を助けられるなら、親切だ!

色々な意見があるでしょう。

優しさを好意的に感じる人もいれば、否定的に捉える人もいます。

今回紹介する下村淳史さんの「ヴィクトリアン・ホテル」は5人を主軸とした優しさをテーマにした長編ミステリーです。

優しさとは何か、善意とは何か、創作物とは何かをテーマにしながら、思いもよらない展開、オチへと繋がっていく内容でした。

この記事では、あらすじから、ページ数、書評、一部ネタバレ有りの解説を行なっていきます。

では、行ってみましょう!

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あらすじ

伝統ある超高級ホテル「ヴィクトリアン・ホテル」は明日、100年の歴史に一旦の幕を下ろす。

特別な一夜を過ごす、女優、スリ、作家、宣伝マン、老夫婦の5人。

それぞれの思惑が交差して、運命の歯車が軋み始める。

優しさとはなんなのか、親切は本当に人のためになるのか。

叙述トリックの衝撃と深い感動が待ち受けたエンターテイメント。

5人の運命はどのように重なっていくのか、作者が用意した衝撃なトリックとは。

優しさ・善意に迷った時にぜひ読んでほしい一冊。

本書の概要

ページ数

全348ページでした。

読むのにかかった時間

だいたい4時間ほどで読み切ることができました。

構成

佐倉優美、三木本貴志、高見光彦、森沢祐一郎、林志津子の5人の視点で描かれています。

三人称で書かれた文章で、テンポの良さと親切というテーマが心を打つ物語になっていました。

おすすめ度

おすすめ度は5点満点中4点です。

ミステリーをガッツリ読みたいというよりかは、感動的な話を読みたい人向けという評価になります。

物語としては非常によくできていて感動的なんですが、正直動きがあんまりなくてハラハラドキドキしないのが難点だと思いました。

誰かが殺されるとか、大事件が起こるというわけではないので、フィクションを最大限楽しめるかと聞かれるとNoと答えるしかない作品だと思います。

なので、ミステリーをガッツリ味わいたい方は別の小説の方が楽しめるかと思います。

おすすめとしては、フィクションらしい「オーディボンの祈り」や「占星術殺人」とかですかね。

感動的な物語を叙述トリックを交えながら味わいたい方には「ヴィクトリアン・ホテル」ぴったりです。

ぜひとも、最後の驚愕の真実を楽しみに読んでみてください。

書評(ネタバレなし)

叙述トリックもすごいけど、親切と優しさにとにかく感動する。というのが感想でした。

優しいって難しいというのが序盤で判明して、最終的にしっかりと優しくていいんだ、親切って素晴らしいんだというオチに持っていくところが心にグッときました。

叙述トリックとして上手く驚きと組み合わせられているので、普通の物語よりも心に訴えるものがありました。

優しいって一見すると素晴らしいものですが、実は批判的に考えるといくらでも悪いものにできちゃうんです。

駅まで困っている外国人にお金を貸してあげる。

これも親切だと思えますが、実は外国人は詐欺師で犯罪の成功体験を与えただけという見方もできるんです。

フィクションの世界でも、かっこいい女性OLが活躍する姿を描くと。

女性OLは皆主人公のようにかっこよくないといけないのか、現実はもっと厳しい社会であるはずだ!と文句を言われてしまいます。

全てにおいて、批判的に考えると否定する人も、傷つく人も出てくるというのです。

確かにその通りではあるものの、だったら何もできないじゃないか。と思ってしまいます。

そうです。登場人物もそんな悩みを抱えつつヴィクトリアン・ホテルに集まったんです。

最後にはしっかりと、報われるハッピーエンドが待ち受けていますので、ぜひ読んでみてほしいと思います。

叙述トリックも、明かされるまで全然わからない自然なものでした。

わかったら、あーーそういうことだったので、うまい!ちょっとした矛盾が綺麗にハマった!と思いました。

伏線がしっかりと違和感として張り巡らされていて、最終的に回収されるので、伏線がすごいと言って良いでしょう。

鳥肌ものの伏線回収や衝撃ではないものの、しっかりと驚きと納得のあるミステリーに仕上がっていると思いました。

要約(ネタバレあり)

ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

ではネタバレありの要約から行なっていきます。

佐倉優美、三木本貴志、高見光彦、森沢祐一郎、林志津子の5人について、ざっくりの物語を紹介します。

佐倉優美:

SNSの投稿によって優しさとは何かがわからなくなり、女優の仕事を休業してヴィクトリアンホテルを訪れた。

森沢と出会い、優しさを否定的に捉える人の存在は無視すればいいとの助言を受ける。

三鷹コウという作家にも話を聞いてもらい、フィクションの世界は自由でいい。と助言をもらい立ち直る。

三木本貴志:

コンビニのレジのお金を盗み、逃げ先として選んでヴィクトリアンホテルにやってきた。

佐倉優美の財布を盗み豪遊するも、ホテルマンにばれ、リネン室に逃げ込んだ。

しかし、そこに佐倉優美が現れ、三木本は取り押さえた。

なんとか人にバラさないようにするために、佐倉優美に自分の生い立ちを話し、財布を盗んだことを謝罪した三木本。

佐倉優美はそんな三木本を許し、リネン室から出ていった。

佐倉優美は本当に、ホテルマンにも警察にも届けなかったことを知り、人の優しさに初めて触れ自首する事を決意する三木本だった。

高見光彦:

文学賞の表彰式に参加するために高見はヴィクトリアンホテルへと訪れた。

被災をテーマにした小説によって、賞を受賞したものの自分の書いたもので読者が傷つくのかもしれないという不安も抱えていた。

実際、心のない文学仲間からは被災者を傷つける内容だと非難を浴びていた。

だが、先輩作家たちとの交流を通して人と傷つけない作品なんてないということ、傷ついている反面で救われている人もいると知り、これからも書き続けようと決意を固める。

森沢祐一郎:

大手広告代理店に勤める森沢、とにかくお金を使って女遊びも大好きな人間だった。

そんな彼は通例でヴィクトリアンホテルへと訪れていた。

ホテルで夕食をしようとした時に、ときめく女性に出会う。女性は大女優だった。

半分無理矢理、彼女との夕食をし、これまでの女性では味わったことのない感情を味わう森沢。

ベッドを共にし、朝起きるといなくなっていた彼女に恋をしていたことに気づいた森沢は彼女の後を追うものの、ついに出会うことなくテレビでその存在を見るだけだった。

林志津子:

友達の連帯保証人になたものの、当の本人が失踪してしまった。

莫大な借金を返す宛のない林夫妻は、最後に高級ホテルであるヴィクトリアンホテルを堪能し心中をしようと決意してやってきていた。

夫婦で噛み締めるように、豪華な夕食、豪華なホテルを楽しみ、いざ心中の実行を決意し部屋に向かおうとエレベーターに乗ったら。

そのエレベーターが故障により止まってしまった。

たまたま乗り合わせていた森沢が、林夫妻の話を聞いて心中ではなく自己破産を勧めた。

弁護士の連絡先まで教わり林夫妻はなんとか、借金苦から逃れることができたのだった。

叙述トリックの解説(ネタバレあり)

「ヴィクトリアン・ホテル」の叙述トリックは一言で言うと、時間交差ものでした。

佐倉優美、三木本貴志、高見光彦、森沢祐一郎、林志津子の5人の物語が交互に同じ時系列で流れているように見えて、実は異なる時系列でした。

順番としては、林志津子、森沢祐一、高見光彦、三木本貴志、佐倉優美でした。

林志津子の心中を止めたのが、新人時代の森沢。

森沢と出会った女性は、佐倉優美の母親の大女優。

高見光彦は三鷹コウとして、文学賞を受賞した作家。

三木本は、佐倉優美の20歳の時に出会った男性。

佐倉優美だけが、ヴィクトリアンホテルの100周年にやってきた女優とのことでした。

それぞれ伏線として、文学賞の受賞式の第何回か。災害が阪神淡路大震災か東北大震災。世の中の災難がバブルやバブル崩壊、コロナ、インフルエンザウイルス。などがありました。

うまく「震災」というワードでどの震災のことかぼかしていたり、「世の中の災難」という形で誤魔化したりしていました。

これによって、読者目線としては全てが2020年の出来事で繋がっているという勘違い・ミスリードに乗っかっていくことになります。

最後には、全てが同時進行ではなく時間として繋がっていくということがわかり驚く!というオチなわけです。

佐倉優美が最後自分のやってきたことや、自分が生まれるまでのつながりを知り、これからを生きていくという流れになっていました。

佐倉優美が関わった真実についてはぜひとも、本書を手に取って楽しんでみてください。

まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。

今回は、下村淳史さんの「ヴィクトリアン・ホテル」について紹介してきました。

叙述トリックありの感動ミステリーという形でした。

優しさをそのまま受け取らない考え方もあるんだというのが、結構衝撃でした。

ですが、最後には親切も優しさも素晴らしいという展開になって、本当に感動しました。

ぜひとも、多くの人に読んでほしいです。

SNSなどで辛辣なコメントなどが多い時代だからこそ、読んで心休まってほしいと思います。

では、皆さんの優しさが実ることを祈っています。

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