隣に住んでいるはずなのに、よくわからない。
そんなのは当たり前です。
では、隣の家から怒鳴り声が聞こえてきたらどうでしょう。あなたなら心配で声をかけにいきますか?それとも無視しますか?
今回紹介するのは湊かなえさんの「夜行観覧車」です。
高級住宅街で起こった悲惨な事件、そこに隠れた住人それぞれの想い。
この記事では、そんな「夜行観覧車」の内容を一部ネタバレありで紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

高級住宅地に住む、誰もが羨むエリート一家で起きた殺人事件。残された子供たちはどのように生きていくのか。
その家族と周りに住む家族たち。
人間模様が交差する中で、彼らの考えが変わっていく??
果たして事件の真相とは?
本の概要

ページ数
文庫サイズで解説含めず372ページ、全380ページでした。
読むのにかかった時間
だいたい4時間ほどで読み切ることができました。
構成
3つの家族の視点で描かれる構成でした。
章ごとにフォーカスされる家族が変わり、家族の中で父・母・子供とさらに視点が変わる三人称の文体でした。
おすすめ度

「夜行観覧車」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
かなりおすすめできる一冊という評価。
とにかく人間模様が面白い一冊でした。人と人の関わりからどのような感情が生まれて殺人まで至るのか。
親と子供という切り口からわかりやすく、超共感できる形で描かれているのです。
家族ものが好きな方にはぜひ読んでほしいですね。
感情移入しすぎて暴れちゃうかもしれませんが…、超リアルかつ共感できる内容にびっくりすると思います。
ミステリーとしては大どんでん返しなどはなく、謎解き要素も少ないのでミステリーとして期待すると期待外れになる可能性は高いです。
ですが、人の心が明らかになっていく様は謎が解けていくようで面白いと思いました。
家族のドロドロと入り混じる感情模様、ぜひ気になった方は読んでみてください。
書評(ネタバレなし)

謎は大したことないのに、なんだこの面白さは!!というのが僕の正直な感想です。
とにかく面白い。
ミステリーとして、大どんでん返しがあるわけでも、見事なトリックと謎解きがあるわけでもないのに、面白いんです。
人の感情が細部にまでこだわって書かれることで、感情移入が生まれ、登場人物の心に共感して腹が立ったり悲しくなったりすることで心をとにかく揺らされる。
心が揺らされながら物語が進むことがこんなにも心地よいのかと思いました。また、380ページという中々のページ数でありながら一瞬で読めてしまいます。
僕としては何度、彩花をぶん殴りたいと思ったかわかりません!
そのくらい感情移入がすごくなるので、ちょっと危険な小説でもあるかもしれません。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約・あらすじからやっていきます。
ある高級住宅のある晩、いつものように遠藤家では娘・彩花の癇癪の声が響き渡っていました。
彩花の母である真弓は、なんとか宥めひと段落します。すると今度は普段真面目な向かいの家の高橋慎司が叫ぶ声が聞こえます。
何か母親と揉めているような声に怯えながらも、何もすることもなく彩花のお使いでコンビニに行くことにしました。
するとそこには、先ほど家で叫んでいた慎司がいました。特に先ほどの叫びの原因などは聞くことなくお金を持っていないからと言われたのでお金を貸す真弓。
家に帰ると高橋家の前では警察と救急車が。どうやら高橋家の母が父を殺したらしい。
さらに先ほど会った慎司は行方不明なんだとか。不穏な空気が流れる。実は母親は息子を庇っているだけではないのか?
彩花はとにかく今の家が嫌だった。そもそもやりたくもなかった受験をさせられ落ち、今の学校に劣等感を持ちながら通っている。
だから感情が抑えきれなくなり癇癪を起こしてしまう。さらには向かいに住む高橋家がいつも偉そうで腹が立っていた。
そんな中での殺人事件。とにかく嬉しくて気分がいい彩花。たまたま高橋家の次女にも出会い、ちょっかいをかける。
次女は弟の慎司も行方不明、母は殺人罪で捕まっている。父は死んでしまった状態で頼るものは唯一大阪で生活をしている兄だけだった。
しかし兄に連絡しても返事は返ってこない。
兄の元へ行くためにバスターミナルに行くと、まさかの慎司と鉢合わせ、さらに兄も大阪からやってきた。三人は偶然にも再会することができたのだ。
慎司から事情を聞き、母が父を殺したことがわかる。
とにかく母は血の繋がる息子・慎司を勉強でも優秀であると証明したかった。(長男は異母兄弟であるため)
それなのに慎司は兄ほど勉強ができないため、母はとにかく勉強をさせ慎司の好きなバスケを封じたりもした。
そんなストレスによって慎司は爆発し、癇癪を起こした。その場面を見た父が母にこれ以上慎司に勉強させる必要はない。言った。
母はそれが面白くなく、そんなことを言う父を突発的に殺してしまったのだろう。と言うのが推測だった。
これらの結論を持った兄弟たち。
遠藤家は遠藤家で彩花がまた癇癪を起こしていた。癇癪に耐えかねた母・真弓はブチギレ。我を忘れて娘の口を塞ぐために窒息スレスレまで押さえつける。
たまたま近所のおばさんが割って入り、命は救われた。
彩花は母の豹変ぶりに驚きつつ、高橋家の真相を知り、再度家族同士で向き合うことに決める。
事件はこうして、なんとか丸く収まった。
最終的にどういうこと?を解説(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
最終的に、事件としては母が父を殺した。
動機は、父が実は暴力的であってそれに耐えかねた結果の殺人と表向きはなりました。
しかし真相は先ほどネタバレで紹介した我慢の限界だったというものです。
どうして、このような違いが生まれたのでしょうか。
答えは、できるだけ早く母を解放して、元の家族に戻るためでしょう。
亡くなった父を悪く言うのは許せませんが、それ以上に母が戻ってくる方がいいと兄弟たちが考えた結果。父が虐待していたという経緯からの殺人としたわけです。
これによって少しは母親への同情が集まり、刑も軽くなるはず。
物語は、事件のあらましが雑誌の記事に書かれる形で幕を閉じたので、その先母親の刑が軽くなったかなどはわかりませんが、きっと家族は一緒に力を合わせていることでしょう。
まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は湊かなえさんの「夜行観覧車」を紹介してきました。
人間模様がとにかく面白い一冊、気になった方はぜひ一度お手に取ってみてください。
感情移入爆発する良い一冊だったと思います。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

