フィクションだとは言いつつも、限りなく現実に近そうな小説…
今回紹介するのはそんな一冊、梶山三郎さんの「トヨトミの野望」です。
まるでTOYOTAのことを言っているような内容で、非常に読み応えがある一冊でした。
本当なのか嘘なのか、経営者たちの苦労と会社の闇が見える内容です。
この記事ではそんな、「トヨトミの野望」のあらすじから一部ネタバレありの要約で紹介していきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
愛知県豊臣市に本社を構える世界的自動車企業・トヨトミ自動車
フィリピンに左遷されても努力と根性で這い上がってきた武田剛平は、ついに社長に昇りつめた。
創業家とはなんの関係もないサラリーマン社長は、その剛腕で世界にトヨトミの名を轟かせていく。
一方、創業家出身の豊臣統一は入社以来、豊臣家の七光りと陰口を叩かれながら、いつの日か武田を越えてやろうと野心を抱いていた。
世界と戦う企業の経済戦争を描いた衝撃フィクション!?
本書の概要
ページ数
解説含めず、503ページ、全515ページでした。
読むのにかかった時間
だいたい6時間ほどで読み切ることができました。
構成
序章、終章含め全16章に分かれた構成でした。
章の中でも武田の視点、統一の視点、記者・安本の視点と三つの視点を切り替えながら話が進みました。
三人称の形で心情表現は少なめで、起こったことを淡々と紹介していくスタイルでした。
書評(ネタバレなし)
本当にフィクションなの!?と思いついつい調べてしまうくらい、リアルにこだわった一冊だった。
というのが、僕の感想でした。
これだけ言うと、じゃあ面白くなかったってこと?ともなりそうですが、面白くもありました。
創業者という血を重視する会社の考えと、会社のことを本当に思ったサラリーマン社長の戦いや、世界に浸透していくトヨトミの姿にワクワクします。
そして、ちょいちょいある理不尽な結果や挫折。
まさに会社のアップダウンを小説に落とし込んだ見事な一冊だと思いました。
また、軽く調べた感じやはり、現実世界のTOYOTAの歴史に非常に似ており、TOYOTAの歴史を学べる一冊だといっても良いような感じがしました。
もちろん、フィクションであると銘打っているわけなので、フィクションなんでしょうが…
リアリティの高さ、先が読めない展開と血による理不尽、これらを見事に経営と結びつけながら興味をアップダウンさせながら読ませてもらった一冊でした。
続編もあって「トヨトミの逆襲」「トヨトミの世襲」と続くので、興味があります。
おすすめ度
梶山三郎さんの「トヨトミの野望」おすすめ度は、5点満点中、3.5点です。
面白いとは言いつつも、おすすめ度は低めな結果。
確かに面白いんですが、経営の話に興味のない人も多いんじゃないかという視点でおすすめ度を低くしています。
会社がどうなろうとどうでもいい、会社のトップがどう動いているのかなんて興味ない。という方には確実に面白くないと評価されそうです。
それくらい、会社のトップの立ち回りや会社の大きくなり方にフォーカスされています。
僕は経営にも興味がありましたので、かなり楽しく読むことができました。
専門用語は少ないので、そういった意味では誰でも読めるとは思います。
ただ、高校生以上の知識量は必要かなという印象で、ページ数も多いのでやはり面白いけど、おすすめできるかと言われると3.5点という曖昧な評価です。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの内容要約をしていきます。
新しくトヨトミ自動車の社長になった武田剛平。
彼はまずプロメテウスと呼ばれるハイブリットカーの発売を3年から、2年にすると役員たちに命令。
なんとか社員たちはその無茶を現実にし、プロメテウスを量産販売まで持ってきました。
武田剛平はさらに、ロビイストと呼ばれる裏で政党や議員に働きかけを行う人材を使い、アメリカなど世界各国でトヨトミが動きやすい体制も整えていきました。
トヨトミの救世主として、サラリーマン社長ながら大活躍していた武田でしたが、トヨトミの豊臣の血が邪魔であると考え、豊臣家を経営から除外させようとしたところ。
会長である前社長によって、社長の座から引き摺り落とされたのです。
次に社長になった御子柴は武田が作った販路を引き継ぐだけで、売り上げを伸ばす成績を叩き出すことができました。
そんな中、武田の剛腕さに憧れと共にライバル意識を持っていた豊臣統一。
武田が社長を退き、今度こそ豊臣の血を最大限利用してトヨトミを引っ張っていこうと考え実際にそのタイミングがやってきます。
彼岸の統一の社長就任です。
七光りという陰口を叩かれながらも奮闘する統一でしたが、トヨトミ車による事故によって状況は一変します。
早急にリコールを行わなかったことにより、世界の批判を受けるトヨトミ。
トヨトミの売り上げは落ち、いよいよやばいかもとなったところで、統一は引退したはずの武田に呼ばれます。
そこで待っていたのは、ロビイストの堤。
ロビイストをうまく利用することにより、リコール騒ぎを収め、さらには脱炭素の取り決めのルールを緩和させることに成功します。
そして新たに水素自動車に乗り出すことを宣言して、物語は幕を閉じました。
本当にフィクションなのか?(ネタバレあり)
軽く調べた限り、フィクションじゃないような気がしてなりません。
トヨトミの中では武田がプロメテウスと呼ばれるハイブリットカーを作ったとされていて、TOYOTAでは、奥田さんがプリウスを販売したとあります。
完全にリンクしており、その後の社長についても大体同じ経歴、そして豊田章男のところもほぼ一緒。
フィクションとは言いつつも非常にリンクされている内容なのです。
最終的に水素自動車に乗り出したところもリンクしていますが、2024年の今では水素自動車はそこまで普及できていないのが未来視点から見た「トヨトミの野望」といったところですね。
フィクションとはいっていますが、僕が調べた限り非常にノンフィクションに近い小説だと思います。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は梶山三郎さんの「トヨトミの野望」を紹介していきました。
本当にフィクションなの?と疑いたくなるレベルのリアルさで書かれた一冊で、会社の闇が見え隠れする面白い一冊でした。
ページ数が多いのと会社の経営という万人受けはしないかもしれないテーマでしたが、僕はとにかく面白くワクワクしながら読み進めることができました。
経営に興味ある、会社のアップダウン、先が読めない展開が好きという方はぜひ読んでみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
コメント