犯行は認めているけど、絶対に救う!
元人殺しの弁護士・御子柴の覚悟が光るミステリー。
今回は、中山七里さんの「恩讐の鎮魂歌(レクイエム)」を紹介します。
御子柴シリーズ第三弾となる本作、次の弁護相手は恩師。
だが、その恩師は自分の犯行も罪も覚悟している。そんな中無実を主張する御子柴はどうなる?というちょっと話を聞くだけでも面白い一冊でした。
この記事ではそんな「恩讐の鎮魂歌(レクイエム)」の書評から一部ネタバレありの内容要約をしていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
少年時代の凶悪犯罪が暴露され悪評が拡散する弁護士・御子柴。
勝率9割の敏腕も依頼者が激減、そんな時に少年院時代の教官が殺人容疑で逮捕される。
御子柴は恩師の弁護を力尽くでもぎ取り、弁護を始めるも、恩師はすでに罪を認め罰を受け入れようとしている。
果たして、真実は無実か?それとも。
御子柴がたどり着いた真相は驚きのものだった?
本書の概要
ページ数
解説を含めず389ページ、全397ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
ほぼ御子柴視点の三人称で書かれた構成でした。
御子柴が事件の弁護をするところから始まり、ラストまで描かれる構成でした。
書評(ネタバレなし)
稲見の覚悟カッコ良すぎるけど、意地張りすぎ!!というのが僕の感想でした。
稲見という元少年院の教官が、殺人容疑で捕まった事件。
容疑を認めている稲見をどう救うのかが見ものの内容でした。
証人たちが嘘をついているのを疑いつつ、徐々に明らかになっていく過程実に面白かったです。
御子柴が恩師のために奮闘して、これまでのシリーズ以上に感情を表に出しているのもより一層御子柴のことを好きになれましたし。
弁護士の気持ちと被疑者の気持ち。その二つがぶつかり合うのが見事に描かれ、僕自身御子柴サイドなので、稲見に非常にイラつきました。
また、テーマも良かったです。
恩師を救うという本筋の中に、老人ホームの闇をうまく絡めていて、嫌な気持ちになる場面も結構ありましたが面白かった。社会の闇を見事に小説に落とし込んだストーリーだと思いました。
どんでん返しはちょっと弱めなのが気になりましたが、御子柴をより一層好きになれる一冊としてはぴったりだと思いました。
おすすめ度
「恩讐の鎮魂歌(レクイエム)」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
ぜひ御子柴シリーズ読んでいる方には読んでほしい。
御子柴シリーズを読んだことない方も決して読まない方が良いということもなく、シリーズならではの前巻の内容も捕捉されるので読みやすいと思いました。
ただ、御子柴シリーズの始まり「贖罪の奏鳴曲」や「追憶の夜想曲」と順番に読んでから「恩讐の鎮魂歌(レクイエム)」を読むと面白さは100倍です。
話がちゃんとつながっていて、面白さをより一層感じられますし、御子柴の意外と人間らしい部分を感じることができると思います。
なので、御子柴シリーズぜひ、読んでみてください。
間違いなく、読まないと後悔するシリーズだと思います。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの内容要約・あらすじを紹介していきます。
御子柴は死体配達人という過去が暴露されたことにより、景気が悪かった。
勝率9割にも関わらず、依頼が入らない日々。
そんな中、少年院時代の恩師である稲見が殺人容疑で逮捕された情報を聞きます。
すぐに弁護しようとと動くも国選弁護士がすでに決まっているとのこと。
ヤクザの力も使い、その国選弁護士の権利を奪い取り、自分で稲見を弁護できることになりました。
恩師への恩返しのため調査を開始する御子柴でしたが、話を聞くと稲見はすでに犯行を認めているとのこと。
老人ホームで起こった事件、口論の末、稲見は従業員である栃野を殴殺したという事件概要だった。
事件が起こった老人ホームに出向き、目撃者などに話を聞いていると同じ老人ホームの老人たちは何か恐怖に怯えている様子があり、目撃証言にも統一性がない部分を見つける。
そして、御子柴は老人ホームで虐待があったことを看破する。
栃野は虐待が行われている老人ホームの中でも特に虐待がひどい人物であることもつかみ、裁判に挑む。
栃野の虐待を特に受けていた後藤という人物も見つけ、虐待の証拠を集めていく中で稲見の家族も話に絡んでくる。
稲見の一人息子は昔、電車の線路に落ちた老人を助け、自分は逃げ遅れて電車に轢かれたということがあった。
その助けた老人こそが後藤だったのだ。
事件が発生した時も栃野は後藤に虐待を行い、それを見かねた正義感たっぷりの稲見が止めるために殴打することになったのだと推理する。
裏付ける証拠も出てくる中、栃野は昔、沈没する船の中で女性から無理やりライフジャケットを奪い取っていたことがわかる。
それを、自慢げに「人を殺したことがある」と老人を脅す道具にもしていた人物だとわかっていく。
さらに調べをする中で、実は同じ老人ホームに栃野が奪い取った女性の祖母がいることを知る。
実はその祖母が、稲見に「後藤さんを助けて」と遠回しな殺人教唆をしていることもわかるが証拠がなくそれは闇へと葬られる。
最後に、裁判の結果が出る。
御子柴は後藤を守るためのしかたない暴力行為なので、無実を主張したが、結果は有罪判決で禁固刑となる。
終始、稲見は御子柴の無実にする行為を邪魔する節があり、御子柴に黒星がついてしまう。
恩師を救えなかった無力感に苛まれる中、昔弁護した依頼人の娘から激励の言葉を受け視界を歪めて話の幕は閉じられた。
ラストの解説(ネタバレあり)
ラスト、激励の言葉をかけたのは「追憶の夜想曲」で出てきた倫子でしたね。
御子柴は、昔少女を殺めたことにより若干の少女恐怖症になっている部分もあり、苦手としている女の子でした。
そんな倫子からの、頑張ってという励ましと、私も御子柴のような弁護士になりたい。というメッセージに感動した御子柴。
恩師を救いきれなかったとはいえ、まさかここまで落ち込むか、と思いきや最後の最後で視界を歪める(涙を流しているのであろう)シーンがあるとは思いませんでした。
感情や人の心など持ち合わせていないサイコパスかと思いきやという内容に僕自身も感動しました。
御子柴、これからも頑張ってほしい!
お前にも人間の心ちゃんとあるんやな。ってなる素晴らしいエピソードだったと思います。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は、中山七里さんの「恩讐の鎮魂歌(レクイエム)」を紹介してきました。
前作までと比較しても見劣りしない見事なシリーズ第三弾。
御子柴の人間らしさがよく出ている一冊でした。
御子柴シリーズを読んでいる方は絶対に読んでほしいです。
読んだことがなかった方もぜひ、一度読んでみてほしいと思いました。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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