「人が死ぬのを見てみたかった」そんな少女たちの物語。
今回紹介するのは、湊かなえさんの「少女」です。
ちょっと病んでいる少女たちの青春ストーリーと思いきや…という一冊。
この記事では、そんな「少女」を一部ネタバレありで紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

親友の自殺を目撃したことがあるという転校生の告白を、ある種の自慢のように感じた由紀。
由紀は自分ならしたいではなく、人が死ぬ瞬間を見たいと思い小児科病棟ボランティアに参加する。
自殺を考えたことのある敦子は、死体を見て死を悟りたいと考え老人ホームへと行くことになる。
死の瞬間に立ち合うための高校2年生の少女たち。
衝撃的な夏休みが今始まる…
本の概要

ページ数
解説を含めず文庫サイズで315ページ、全323ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間ほどで読み切ることができました。
構成
二人の少女、由紀と敦子の一人称で交互に視点が変わる構成でした。
おすすめ度

湊かなえさんの「少女」のおすすめ度は5点満点中4点です。
多くの方におすすめできるという評価。
青春ストーリーで丸く収まる。実に良い話!とはならないのが実に湊かなえさんらしい一冊でした。
イヤミス好きには堪らないオチがしっかりと用意されている点が特におすすめポイントで、最後の最後まで油断できない内容です。
少女同士の友情を味わいながら、また別の角度のスパイスを感じることができるミステリー。
多くを語ることができないからこそ、読んで味わって欲しいです。
若干、少女の区別が序盤難しい書き方をしていたり、登場人物を整理していないと驚きが少なくなってしまう点が難易度高めな一冊としておすすめ度を下げていますが、読んでほしい一冊。
気になる方はぜひ、お手に取ってみてください。
書評(ネタバレなし)

正直、最後の最後はなくても良かったかもしれません。
むしろ、人によってはただただ友情が綺麗にまとまるところで終わって欲しかったと思うかもしれません。
ですが、そこで終わらないのが湊かなえさんの良いところ。
しっかりと心に残るオチを用意してくれています。
イヤミスというのはこういうことなんだよ。というのを改めて教えてくれる作品で、僕は好みでしたしこれを味わいたくて湊かなえさんの作品を読んでいます。
青春ストーリーの奥にある見事な伏線と、ストーリーテーマの回収。
ネタバレなしだと多くを語れない歯痒さをぜひ、感じて欲しいです。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
敦子は悩んでいました。元々は剣道で全国に行くほどの実力を持っていましたが、ある日の試合で飛び込めず負けたことで学校裏サイトで悪口を言われていることに。
誰も信用できなくなってしまった敦子は自殺を考えるようになっていました。
由紀もまた悩んでいました。祖母が認知症になり、祖母が家族に暴力を振るう。
そんな暴力によって左手に傷を負い、握力がなくなってしまった由紀。
二人は友人の紫織から、紫織の親友が自殺した話を聞く。
自慢話に感じた由紀は自分も人が死ぬ瞬間を見たいと思い、敦子は死を見れば何か悟れるかもと思った。
二人はそれぞれ、由紀は小児科病棟のボランティア、敦子は老人ホームのお手伝いをすることになった。
由紀はそこで昴と太一という二人の少年に出会い、昴のお父さんを探してきて欲しいと頼まれる。
敦子はおっさんと出会い、仲を深めていく。
由紀は、昴のお父さんを探すため、前の職場に行ったりするものの個人情報保護という観点からなかなか見つけられずにいた。
しかし、滝沢に出会う。自分が言うお願いを聞いたら情報を教えると言う滝沢。
渋々お願いを聞くことになると、急に自分の下着を洗わせられる。
滝沢は、これまで滝沢が娘に臭い汚いと言われていたストレスを発散しているようだ。
由紀についてきた彼氏によって、その場は丸く収まり昴の父親の情報を手にいれることに成功する。
そして、敦子が手伝っている老人ホームへと向かうのだった。
敦子は、由紀が自分のために書いたという小説をおっさんから見せてもらい、由紀への考えが一変する。
良い親友を持ったと思う敦子、そんなところに由紀が昴の父親を探しにきたと言い出す。
それがおっさんであることがわかり、三人で昴の病室へと向かう。
昴と再開する父親、しかし昴が考えていたことは父親を殺すことだった。
痴漢によってメチャクチャになったおっさんと昴。その恨みを晴らすべく復讐を行おうとしていたのだ。
痴漢は冤罪だと言うことも知らずに。
敦子の瞬発力によってその場は収まり、おっさんも死なずに済んだ。
時はすぎ夏休みも終わる。
紫織と由紀、敦子が久々に話をしていると、紫織がその昔やっていた嘘痴漢の話を聞く。
痴漢をでっち上げて示談金をせしめる行為を紫織がやっていたそう。
敦子は気づく紫織こそおっさんを嵌めた相手だったことを。
そして、滝沢紫織は父が女子高生へのふしだらな行為のせいで捕まり、それが原因でいじめの標的となる。最終的には遺書を書くことになる。
昔親友の自殺を救えなかったことを後悔して。
人間関係を整理(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここでは最終的にどのような人間関係だったのかを整理して、イヤミスをより一層感じてもらいます。
敦子と仲良くなったおっさんがキーとなり、色々な人とのつながりがありました。
おっさんの息子が由紀の言っていた小児科の子供・昴でした。
さらにおっさんの痴漢事件冤罪の相手が紫織。
紫織の父が由紀に嫌がらせをした滝沢でした。
さらにさらに、由紀の小説を盗作した教師と関係を持っていたのが紫織の親友。
全ての因果が綺麗に結びついている。
人間関係が全て繋がっていると言うのが「少女」の隠れたトリックでした。
これらを知った上でもう一度読むとよくできた話に驚くはずです。
まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。
今回は湊かなえさんの「少女」を紹介してきました。
イヤミスらしい良い一冊でした。
ネタバレしないとなると多くを語れませんが、間違いなく面白いです。
ぜひ、お手に取ってみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。


