おとぎ話とミステリーが合わさったらどうなるのか?
読みやすいのに、しっかりとミステリー要素が入るドキドキとワクワクが合わさるのではないか?
そんなチャレンジングなミステリー小説が「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」になります。
赤ずきんというおとぎ話の主人公が、「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」でも主人公として描かれていますが、タイトル通り普通に生活するわけではないんです。
事件に巻き込まれていく赤ずきんと謎解き要素が組み合わさった、これまでになかったミステリー小説でした。
この記事では、「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」の書評とネタバレありの要約を行っていきます。
では、行ってみましょう!
あらすじ
クッキーとワインを持った赤ずきんが旅に出た。
目的の地「シュペンハーゲン」を目指していた赤ずきんだが、道中「シンデレラ」「ヘンゼルとグレーテル」「眠り姫」「マッチ売りの少女」とおとぎ話を下敷とした事件に巻き込まれていく。
童話らしいトリックと、納得せざるを得ない見事なトリックがそれぞれのお話に用意されている。
こんなミステリーがあったのか、と興奮しながら読んでいると、後ろから迫っている影にあなたは気付けないかもしれない。
赤ずきんの旅の目的と、実はつながっていた全編。
大きな謎が明らかになった時、赤ずきんの本当の目的と隠された伏線たちに気づくことだろう。
童話をベースとした他にはない短編小説、ぜひ、あなたの手で童話に終止符を打ってあげてください。
本書の概要
ページ数
解説含まず、328ページで、全335ページとなっています。
読むのにかかった時間
喋り言葉が多く読みやすく、大体3時間ほどで読み切ることができました。
構成
全4編の短編集という形になっています。
ですが、主人公は終始赤ずきんですし、赤ずきんの視点が三人称で描かれるというのが基本になります。
一時犯人目線も書かれますが、基本は赤ずきんが謎を解いていくという構成になっています。
また短編とは言いましたが、全体を通しての大きな謎も含まれていて、一本の大きな道がありその道中という形で短編の内容があるという構成です。
なので短編とは言いつつも、長編としてしっかりと作り込まれた作品でした。
書評(ネタバレなし)
童話をうまく盛り込んだなーというのが第一の感想です。
「シンデレラ」や「ヘンゼルとグレーテル」「眠り姫」「マッチ売りの少女」をうまく組み合わせてここまでのミステリーにできるなんてすごいと感じました。
無理矢理な部分がなく、自然とミステリーとして組み上がっているのです。
またそれらの謎に挑む赤ずきんという設定見事でした。
赤ずきんは童話の中で、「どうしておばあさんの手はそんなに大きいの?」「どうしておばあさんの耳はそんなに大きいの?」という感じでなぜやどうしてをどんどん追っていく性格をしています。
これが「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」にも反映されていて、赤ずきんが謎を解けるのはまさにこのなぜ、だったりどうしてという部分を突き詰めていくからだと思うのです。
頭の良いという言葉で作中では語られているのですが、普通の人が見逃すような部分に着目でき疑問と感じられる部分に赤ずきんの探偵の素質を僕は感じました。
赤ずきんの特徴をしっかりと押さえながら、ミステリーに昇華させるというのはなかなかできません、ミステリー小説としてかなり斬新なことなのにここまでまとめ上げたのは素晴らしいと思いました。
トリックに関しては、若干不満や使い古されたようなアイデアが多かったのは、残念でした。
ただ童話という世界は魔法という概念があるので、それはずるいだろうという部分、アンフェアな部分がなかったのはよかったです。
トリックを楽しむというよりかは、童話のキャラクター同士がどのように絡み事件になっているのかを楽しむ一冊だと思います。
短編嫌いな僕ですら、楽しめるしっかりと幹がある作品でもあり、短編として楽しみつつ赤ずきんという存在の長編としても楽しむことができる作品だと感じました。
童話という入りのため多くの方におすすめできる一冊だと思います。
読書嫌いや読書初心者という方も、ぜひ「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」をお手に取ってみてください。
ミステリーにハマるきっかけになるかもしれません。
要約、あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、まずはネタバレありの要約から行っていきます。
それぞれの短編についてあらすじとオチについて紹介します。
・シンデレラ
魔法使いの魔法で、綺麗なドレス姿になったシンデレラと赤ずきんは舞踏会に向かった。
しかし道中、馬車が人を轢いてしまう。
舞踏会にどうしても出たかったシンデレラは轢いてしまった死体を隠し、舞踏会に出席した。
舞踏会中にしたいが見つかり、犯人探しが始まるものの見つからず、0時になるためシンデレラと赤ずきんはその場を離れた。
その際、シンデレラは王子に自分の履いていたガラスの靴を手渡す。
家に帰ってきてから、シンデレラの義理の姉が轢いてしまった死体が実は最初から死んでいたこと、もしかしたら自分が殺してしまったのだと告白される。
そこから推理した赤ずきんの解答は、シンデレラが全てを仕組んでいたという結論。
シンデレラは義理の姉にいじめられていたので、殺人という罪を被せようとしたという。
・ヘンゼルとグレーテル
ヘンゼルとグレーテルは、新しくきた母親にいじめられていた。
ついには追い出すべく森の中に置いてけぼりにする計画を実行されてしまう。
お菓子の家を見つけ、魔女をなんとか撃退したものの、家に帰っても母親にいじめられるだけと悟った兄妹は決意する。
お菓子の家という現場で見つかった母親。
お菓子の家は完全な密室だったが、赤ずきんがまた推理を披露する。
犯人はヘンゼルとグレーテルで、密室はお菓子の家の天井を後からつけたというものだった。
お菓子の家は魔女が作ったもので、お菓子を出したり消したりが自由にできたので、天井の素材を用意するのは容易とのこと。
密室を看破されたヘンゼルとグレーテルはその反抗を認めるしかなかった。
・眠り姫
100年間眠り続けると言われている姫のいる国で、殺人事件が起きた。
容疑者は殺人事件現場の近くで血まみれの服とナイフを持っていた男だった。
しかし、男が言うにはその時間、ベンチに座っていた男と女と会話しているのでアリバイはあるとのこと。
だがどこを探してもその男と女は見つからなかった。
処刑が近づく中、赤ずきんの推理がまた光る。
ベンチに座っていた女は、色々あって最終的にその場にいることになった眠り姫だったのだ。
眠り姫を塔から連れ出したことがバレてはまずいと男の方も名乗り出ることができなかった。
そのためベンチに座っていた男と女というのは見つからなかったのだ。
だが、この証言が証明されたため容疑者の男は解放されることとなった。
真犯人は、犯人しか知り得ないことを口走った男だった。
・マッチ売りの少女
赤ずきんは「願った夢を見ることができるマッチを売る少女ヘレン」を殺そうとしていた。
赤ずきんはヘレンに近づいて、毒入りクッキーと爆弾入りワインで殺そうとしていたが、男に騙されて捉えられてしまう。
しかし、次の日、牢獄には赤ずきんの姿はなく、ヘレンが経営する店で赤ずきんと見られる人が次々と爆弾入りワインで襲撃をしているとのこと。
ついには数多くの赤ずきんに囲まれ、訳が分からないヘレンだった。
本物の主人公赤ずきんが登場し、そのトリックを話し始める。
実は騙されて捕まったように見せて、事前に捕まえようとしていたことを知っていた赤ずきんはこれまでに出会った人たちの手を借りて、ヘレンを罠に嵌めようと計画していたのだ。
計画通りに進み、ヘレンは夢を見せる依存性が高いマッチを売ることができなくなり、さらには投獄が命じられた。
逃げるヘレン、赤ずきんは跡を追う。
そこで見たものは、笑うヘレンとマッチの燃えカスだった。
書評(ネタバレあり)
ここからはネタバレを行った上での感想をお話しできればと思います。
やはりよくできたお話しであったというのが僕の感想ですね。
最後、ヘレンがマッチを擦りながら夢の世界に逃げるという終わり方も綺麗な終わり方だと感じます。
伏線としてこれまでに会った人たちが最終章で、赤ずきんに協力してくれるという伏線がよかったです。
薄々気づいていたものの、やはりちゃんと話として出てくるとつながりがしっかりしていて良い印象を持ちました。
伏線らしい伏線回収なので、驚き自体は少なかったものの過程を楽しむという観点では満足できました。
今回紹介している要約では細かい部分は端折ってしまっていますが、細かい設定や納得のいく動機やトリックでしたので、かなり満足度は高いと思います。
トリックも単純なものが多く、唯一難しかったのは赤ずきんが牢獄から消えたトリックくらいです。
こちらは牢獄自体にカラクリがあり、そのカラクリを知っていた大工が味方だったからできたものになります。
若干そんなの作れるんかい?というツッコミを入れたくなる部分ではあったものの、目を瞑ります。
また魔法という必殺技が出てきますが、うまくずるいとは言わせないようにできているのもよくできていると感じました。
魔法をマジで使えば、事件なんて簡単に完全犯罪になりますし、謎解きもすっ飛ばすことできてしまいますからね。
魔法使いをあくまでサポートとして描いたのは正解だと感じました。
まとめ
ここからはネタバレがないので安心してください。
今回は「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う」について紹介してきました。
ミステリー初心者も読みやすい童話という世界をモチーフにしている、異色かつ大胆な作品だという印象です。
トリックもわかりやすく、使い古されている間はあるもののしっかりとしたものになっていました。
ミステリーをガッツリ読んできたという方には少し物足りない伏線回収やトリックではあるものの、多くの方におすすめできる一冊であることは間違い無いです。
ぜひ、ミステリーを読んでみたいけど敷居が高いんだよな、と感じている人に読んでほしいと思います。
ミステリー好きが増えることが僕も嬉しいです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
コメント