どうしても復讐がしたい。
そんな願いを叶える合法的な事務所があれば、利用しますか?
今回紹介する三日市零さんの「復讐は合法的に」ではそんな復讐を請け負う復讐屋が主役なミステリー小説です。
合法的なものの、道徳的にはアウトなスリル満点の物語でした。
この記事では、そんな「復讐は合法的に」のあらすじから書評、一部ネタバレありの要約をしていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
6年付き合った彼氏に裏切られたOL・麻友が出会ったのは「復讐屋」エリス。
弁護士資格と法律知識を活かして麻友の復讐を代行するエリスは、その後も依頼をこなしていく。
加害者となった息子には絶対に黒幕がいると言い張る父。
法律の通じない性犯罪者への報復。
誹謗中傷の火付け役となる暴露インフルエンサー。
4つの事件にエリスが挑む。
果たしてエリスは復讐を成し遂げることができるのか。
本当に復讐を受けるべき人間は一体誰なのか?
本書の概要
ページ数
解説含めず276ページ、全285ページでした。
読むのにかかった時間
大体3時間ほどで読み切ることができました。
構成
4つの章に分かれた短編構成となっていました。
主人公はエリスで変わらないのですが、依頼人、事件によって分けられている形です。
主軸となる物語はなく章ごとがつながっているという仕掛けも特にない形なので、ドラマのような小説の分類になるでしょう。
三人称視点で描かれる物語で基本主人公・エリスを主軸に物語が進んでいきます。
書評(ネタバレなし)
現実にいたら怖いかも!
というのが僕の一番の感想でした。
利用する場合は頼りになるかもしれませんが、やられたらマジで恐ろしい。というのが1番最初の物語で思ったことです。
決して、決して僕に後ろめたいことがあるというわけではなく、シンプルに被害者側にも感情移入しちゃうんですよね。
ちょっとやりすぎかもと思えるほどの仕打ち。正直、面白いすごい!スカッとするというよりかは怖いが勝つと思います。
他の物語はかなりミステリーによっていた印象です。
入りはいずれも復讐を請け負う形なのですが、テイストが微妙に異なりミステリー要素が徐々に強くなっていて飽きることなく全ての物語を読むことができました。
怖さは最初だけで、徐々に謎解き要素が面白くなってどんどん引き込まれていく感じです。
文章も読みやすく、さくさく読めちゃう分類だと思います。
難しい言葉が少なく、一部ITの専門用語が出てくる部分もありましたが専門用語が謎解きに直接関係するわけではないので問題なかったです。
挿絵もあり、謎解きの理解を助ける解説がついているのも好感が持てました。
最初は怖いものの、徐々に謎解き要素が強くなっていく読めば読むほど引き込まれていく魅力的で斬新なミステリーだと思いました。
おすすめ度
おすすめ度は5点満点中4.5点です。
多くの方におすすめしたい一冊という評価になります。
0.5点分マイナスなのは、最初の復讐がちょっとやりすぎだなと感じる部分もあるからです。
復讐しすぎて怖い!と感じる方もいるのでは?ということで全員が絶対読むべき!というところまで評価を上げることはできませんでした。
特に誰でも真似しようと思えばできそうかつ、されたら最悪!という復讐シーンなので全員には読んでほしくないですね。特に悪人には読んでほしくないです!!!
文体も読みやすく、章ごとに物語が分かれているので本が苦手な方も読みやすいと思いました。
伏線がすごかったり、謎解きやトリック、叙述トリックがすごいというのはなかったので、そういった部分を求める方には合わないと思います。
トータル面白くて斬新な設定と物語なので、多くの方に読んで欲しいと思いました。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
章ごとに物語が異なるので、それぞれについて簡単に要約していきます。
1:彼氏への復讐
麻友はある日彼氏に振られました。
振られた理由と経緯がひどく、彼氏は浮気をした上に同棲していた際に貯めた麻友のお金を全て使い倒したのです。
落ち込む中麻友は、復讐屋であるエリスに出会い彼氏への復讐を依頼します。
エリスは彼氏への復讐として、彼氏の社会的信用を落としていくと同時に浮気をしていた彼女との仲も引き裂いていきます。
ついには、彼氏は泣きつくところがなくなり麻友に助けを求めるものの、DVをしたというのを盾に逆に示談金を払わせることにも成功するのです。
社会的にも金銭的にも復讐を遂げることができた麻友は、新しい職場、新居での生活が始まりました。
(この時の社会的信用を失わせる方法がエグかった笑)
2:殺人事件の動機
息子が人を殺めてしまったけれど、それにはきっと裏があるから調査してほしいとの依頼がエリスの元に入ってくる。
依頼を受けたエリスは、息子の周辺と被害者である肥後の周辺を調べていくと一つの携帯会社の副店長にたどり着く。
副店長は携帯料金の延滞をしている人たちの情報を肥後に売る副業を行っていた。
今回も息子の情報を肥後に売っていて、その結果、息子は肥後しつこい金貸しのオファーに腹を立てて突き飛ばし殺めてしまったのだった。
エリスは副店長に直接の復讐は難しいと考え、遠回りに肥後部下たちに今回の副店長のことを広めることで闇金の中で副店長を裁かせることにして幕を閉じた。
3:性犯罪者の正体
記者である灰島の依頼で、少女を狙った性犯罪者・早乙女の決定的な証拠を見つけることになったエリス。
秘書であるメープルに早乙女が務める学習塾に潜入させ、様子を見る。
エリスは、被害者である女子小学生の親に話を聞くものの、何か食い違った証言を感じる。
そして、早乙女と灰島が入れ替わっている事実に気づき、灰島を罠に嵌める形で警察に検挙させることに成功するのだった。
二つの潜入が入り組んだ物語だった。
4:暴露しているのは誰
SNSで悪事を暴露する味亭太に、パパ活を暴露されたことで殺人事件に巻き込まれた娘の復讐をして欲しいと依頼がエリスの元に入る。
SNSアカウントであるために匿名性が高く、相手を特定することが難しいと思えたが警察の旧友の手を借りて捜査を進めていくエリス。
捜査の中で3人の容疑者が出てきてそれぞれに接触するエリスだったが、その後自分のパソコンにハッキングをされていることに気づく。
3人の容疑者に会った途端なので、味亭太は確実に3人の中にいるだろうと推理する。
そんな中、容疑者の1人が殺される。
ただの暴露系だと思われた味亭太が殺人を犯したことで、事件は動き出す。
エリスは容疑者全員が味亭太であり、その中心に情報伝達役がいると推理し、ついに大元である犯人を特定する。
犯人はサイバー対策課の警察官だった。
電車の乗り換えをうまく利用した接触方法で3人と連絡を取っていた犯人は、罠に嵌り捕まることとなる。
そして、警察官は自分は正義であると最後の最後まで主張したのだった。
今後の展開について考察(ネタバレあり)
4つの物語で「復讐は合法的に」は幕を閉じたわけですが、続編が十分にありうる話だと思います。
今後の展開について最後に考察しようと思います。
まず、エリスの過去とメープルとの関係が「復讐は合法的に」では明らかになっていません。
若干触れるところはあるものの、核心は見えてこない表現の仕方がされています。
なので、続編では過去編としてエリスが復讐屋になったわけ、メープルと一緒にやっている理由なんかに触れていくのではないでしょうか。
内容もきっと、復讐せざるを得ない相手に初めて復讐して心が決まったみたいな話なんじゃないかと思います。
メープルについても復讐の中で犠牲になった被害者の1人で、かわいそうという気持ちで親の代わりになってあげている展開なんじゃないかと思います。
あとは、最終章でちょっと触れられた「自分はろくな死に方をしない」というものです。
これは拡大解釈をしていつかメープルによって、復讐されるのではないかと僕は推察します。
メープルは実はエリスの復讐によって被害を受けた1人で、最後の最後でエリスを刺す人物なのではないかと思うのです。
仲間同士で最強決定戦をするイメージで、ぶつかり合う展開が好きな僕としてはこんな妄想をしてしまいます。
ほぼ確実に、というか絶対やって欲しいという観点から「復讐は合法的に」の続編を楽しみにしたいです。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、三日市零さんの「復讐は合法的に」を紹介してきました。
復讐屋という斬新な設定と緻密なミステリー構成と物語構成がとにかく魅力的な一冊でした。
多くの方に読んでもらいたいものの、真似はしてほしくないなと思いました。
ぜひとも、一度手に取っていただいて合法的な復讐のやり方に恐れ慄いて欲しいです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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