背筋も凍るラスト。
そんな謳い文句を馬鹿にしていました。全く予想できない方向からの一撃。震えました。
今回紹介するのは識守きょうやさんの「花束は毒」です。
この記事では書評から、一部ネタバレありで内容を紹介していきます。
では、いってみましょう!

あらすじ
憧れの家庭教師だった真壁が結婚を前に、脅迫文を送られていることを知った主人公の木瀬。
尻込みをする真壁の代わりに探偵事務所に調査を依頼する。
そこにいた探偵は中学生時代にいじめに遭っていた従兄をえげつない方法で救ってくれた先輩の理花だった。
調査を進める中で、真壁の過去が明らかになり、脅迫文の意図が見えてくる。
背筋も凍るラスト。
果たして、脅迫文の本当の意味とは。
二人は真実を知った時、どうするのか。
本書の概要

ページ数
解説はなく全348ページでした。
読むのにかかった時間
だいたい4時間ほどで読み切ることができました。
構成
主人公・木瀬の一人称視点と探偵である理花の一人称視点、二つの視点が途中で入れ替わる構成でした。
登場人物は少なく、登場人物の整理は容易でした。
おすすめ度

識守きょうやさんの「花束は毒」のおすすめ度は、5点満点中4.5点です。
多くの方におすすめする一冊という評価。
とにかくラストにかけてが素晴らしかったです。
衝撃の真実というのが、これまで衝撃の真実系のミステリーを多く読んできた僕も背筋が凍ってしまうほどの衝撃でした。
しかも、それが決して無理矢理ではない感じの自然な形で、伏線が張られていたから余計背筋が凍ります。
伏線がすごい系や衝撃的なラストが好きな方はぜひ読んだほうがいいです。
話の浮き沈みとしてはちょっとだけ、間延びしている印象で、飽きてしまう方もいる気がします。
また、社会的メッセージも少なめという点から満点にはなりきれていない評価としています。
ドキドキやワクワク感が少ないものの、しっかりと謎をちょっとずつ開示することで、興味を引いていき最後にはっと言わせるラストを持たせている素晴らしい小説で超おすすめです。
書評(ネタバレなし)

すごいラストで一生忘れないラストだというのが、僕の正直な感想です。
最後の最後でわかるタイトルの意味というのも素晴らしくて、とにかく素晴らしいラスト。の一言に尽きる内容でした。
謎がちょっとずつ明らかになっていく過程では「あーそういう系の話ねー」という感じでしたが、だんだんと不穏になっていき、最後には「え…」と読む手が止まってしまいました。
思考が一瞬追いつかなくなるくらい衝撃がありました。
ですが、その衝撃がまた意外なのに決して予想できないものではないのもすごい。
衝撃を狙いすぎて全く意味のわからない話の展開ではなく、意味がわかると怖い話に近い感覚で衝撃を与えてくれるのです。
ほのぼの系の探偵が情報を探っていくミステリーかと思いきやガッツリ、怖い思いをさせてくるホラーミステリーでした。
人を信じられなくなるという意味では、読む人を選ぶかもしれません。
僕はとにかく好きで、一生忘れない展開とラストの衝撃でした。
気になる方はぜひ、お手に取ってみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約、あらすじをやっていきます。
木瀬は、中学生時代を思い出します。
従兄と歳が近かった木瀬は同じ中学校に進みました。
ある日従兄の姿を見ると、いじめを受けていることを知ります。家族には言わないで欲しいと言われ正義感の強い木瀬は、そんな従兄のことが可哀想でそばにいるようにします。
ですが、それでも続くいじめ。
従兄は同じ中学校の探偵見習いという女の子に、お金を払って依頼をすることに。「いじめをやめてほしい」と。
探偵見習いの理花は、依頼を受け、いじめの主犯格が淫らなDVDを持ち込んでいる濡れ衣を着させ、変態というレッテルを貼らせました。
最終的にいじめの主犯格は転校することとなり、いじめはなくなったのです。
しかし、木瀬はそこでやりすぎる正義は本当に正しいのかわからなくなってしまいました。
それから時間が経ち、木瀬は大学生になりました。
ある日、昔家庭教師をしてくれていた近所のお兄さん・真壁に再会します。
しばらく会っていなかったものの、すぐに打ち解け、もうすぐ結婚すること、実は手紙によって結婚をやめろと脅迫されていることを打ち明けてきました。
脅迫が許せない木瀬は、探偵を雇うことに。
その探偵こそが、中学校時代の探偵見習い・理花でした。
本物の探偵になっていた理花、依頼を受け早速手紙の差出人の調査を始めました。
調査を始める中で、真壁が過去に強姦の罪で捕まり示談で丸く収めた過去が明らかになりました。
木瀬も全く知らない事実でしたが、真壁に話を聞き冤罪だったと理解します。
そして、そんな事件の被害者こそ今回の手紙の差出人ではないのか。と真壁の冤罪を半信半疑として注意しながら理花は調査を進めました。
ついには手紙の差出人を見つけ出します。
ただ、差出人の意図は理花や木瀬が予想するものとは全くの別でした。
手紙の差出人は、真壁が結婚しようとしている女性の父親で、手紙は真壁をなんとか救いたいから送っていたものでした。
真壁は本当に冤罪で、全ては強姦被害を訴えた女性の企みだったのです。
真壁が結婚しようとしている女性・かなみ、彼女こそキーパーソンでした。
大学生時代に真壁に惚れたかなみは、どうにか真壁と付き合いたい。しかし、自分とは釣り合わないくらいに真壁は人気者でした。
だったら、周りの人を減らしてやろうと、強姦をでっちあげ、真壁を孤立させそこに現れることで自分を愛してもらおうとしたのです。
最初から最後まで全てが彼女の計算で、真壁はただの被害者。
それを知っていた彼女の父親は、結婚を考え直したほうが良いことを陰ながら手紙で告げていたのでした。
真実を知った木瀬と理花、最終的にその事実を真壁に伝えるかどうか。
伝えてしまって、真壁の今の幸せを奪い、かなみの恨みを買ってしまうか。それとも…
物語は迷ったところで終わりでした。
あなただったらどうするか(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここでは、衝撃ラストから僕だったらどうするかという話と主人公たちはどんな未来を選択したのか勝手に予想していきます。
僕だったら絶対に真実は伝えず、胸の中にしまってしまいます。
真壁の愛は、かなみによって計算され尽くした結果ですが、理由はどうであれ愛が生まれているのです。
それを今更ひっくり返すのは正直、できないと思います。
また、あんな計算され尽くして躊躇なく実行できるかなみを敵に回すのも怖い。
だから僕だったら、告げないで終わりとすると思いました。
ただ、物語の登場人物たちはどうか。
僕は話すと予想します。
というのもメタ的な考えですが、織守きょうやさんは続編もありそうな書き方をしているからです。
理花の大学生になりたいという気持ちを書きながらも詳細は書かない手法や、将来を匂わせるシーンがたくさんありました。
これはもう、この先別の作品として続く可能性を示唆していると思うのです。
そう考えると、ここで真実を話すことで敵キャラを作り出すことができます。
続編で、かなみに陥れられそうな木瀬や理花の姿なんて始め方もできますから、おそらく物語を続かせるという観点で話す。と思います。
メタ的な予想ですが、僕はそう予想して今回のネタバレ部は終わりにします。
まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。
今回は、識守きょうやさんの「花束は毒」を紹介してきました。
とにかくラストの衝撃は一生忘れないほどの衝撃を僕に与えてくれました。
こういう驚きをくれるからミステリーはやめられませんね。
ぜひ、気になる方は一度お手に取って欲しいです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

