今回紹介するのは白井智之さんの「人間の顔は食べづらい」
タイトルでもわかるとおり、人を選ぶエグい話ですが、面白い。
クローン人間を食べるというテーマで書かれたミステリーです。
この記事では、そんな「人間の顔は食べづらい」の内容を一部ネタバレありで紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

安全な食料確保のため、「食用クローン人間」が育てられている日本。
クローン施設で働く和志は、育てた人間の首を切り落として発送する業務に就いていた。
ある日、首なしで出荷したはずのクローン人間の商品ケースから生首が発見さあれる事件が起きる。
状況的に和志の犯行だと疑われてしまう。
異形の世界で展開されるロジカルな推理劇の行方とは。
本の概要

ページ数
解説含めず、339ページ、全346ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間ほどで読み切ることができました。
構成
和志と河内ゐのりの二つの視点で描かれる三人称文体でした。
それぞれの視点で描かれることで、伏線や状況がより深くわかる構成でした。
おすすめ度

白井智之さんの「人間の顔は食べづらい」のおすすめ度は、5点満点中3.5点。
面白いんだけど、人を選ぶしちょっと納得できないからまぁまぁおすすめ!という評価。
とにかく人を選びます。
クローンとはいえ、人間を食べることが法律によって認められている世界が舞台です。
このような舞台で起こることに嫌悪感や不快感を持つようであれば、読まない方が良いと思います。
フィクションとはいえ、かなり生々しく描かれているグロテスク場面も多々あるのでグロテスク耐性も必要そうです。
ただ、話としては面白かった。
クローンという一見ただの世界を作っている要素かと思いきや、そこに意味を見出して社会的問いかけに持っていく点も良かったです。
ミステリーとしての推理部分はちょっと疑問点が残るところや胸糞悪いラストは好みじゃなかったですが、ミステリーとして楽しむには十分過ぎました。
グロテスクな表現が平気な方はぜひ読んでみてください。
書評(ネタバレなし)

最後はやりすぎだけど、全体としては面白かった。というのが僕の正直な感想です。
全体的に面白かったという評価は変わりませんが、ラストのラストは納得行かなかった部分がありました。
ネタバレになってしまうので、深くはここでは書きませんが、アンフェアで偶然に頼っている部分が大きいトリックだった点。
ここだけが納得できなかったです。
雰囲気はSFからさらにダーク要素を追加した内容で、絶妙にミステリーに絡ませていくテクニックは素晴らしかったと思います。
グロテスクは「殺戮にいたる病」などに比べると決してすごいわけではありませんが、耐性がない方は驚いてしまうかもしれないです。
なので、おすすめでも言いましたが人を選ぶ作品です。あらすじを聞いてさらにグロテスクが平気という方は読んでみてもいいかもしれません。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
食用クローンに反対をしていた野田が、ホテルの窓から飛び降りて死亡した。
事件は自殺で処理されたが、その時食用クローンを推進していた富士山は疑われていたが、風俗嬢と一夜を共にしていたことで確固たるアリバイで逃れていた。
数年が過ぎ、和志は食用クローンが認められた日本で、食用クローン人間の首を落とす業務に就いていた。
ただただ過ぎる毎日の中、和志には一つの楽しみがあった。
本来は認められていない個人での食用クローン人間の育成をしていたのだ。
偶然に会社にバレない方法で、自分のクローン人間(チャー坊)を持ち出すことができ、それを太らせて大きくさせて腹一杯焼肉を食べるのを楽しみにしていた。
そんなある日、食用クローン人間のお得意様であった富士山の家で事件が起きる。
本来首なしの状態で届けられる食用クローン人間体に、首が付いていたのだ。
さらに脅迫文も添えられており、怒った富士山は警察を通さずに直接食用クローンをやっている会社に連絡をしてきた。
和志が当時対応していた食用クローンであり、首を混入させるのは和志にしかできない。
だが、和志はそんなことをしていないことは自分が一番わかっている。
疑いが晴れない中、ひとまずは家に帰ろうとする和志。
たまたま監視カメラを見ると、怪しげな人影が首焼却場にいることを見つける。
今回の事件の犯人だと思った和志は、怪しげな人影に迫るも逃げられてしまう。
疑いが晴れないまま、次の事件が起こる。
食用クローン工場が爆破され燃えてしまったのだ。
これまた和志に疑いの目がいき、ついには指名手配されてしまう。
逃げる和志は、チャー坊が推理を披露するというので、話を聞くことにする。
チャー坊の推理は全ては富士山が行ったことであり、その証拠は弱視であることだという。
見事な論理で組み立てられた推理であったので、それを武器に警察に行く和志だったが、富士山は弱視ではないことが明らかだと言われてしまう。
意味がわからないまま、和志は警察に捕まってしまうのだ。
実は、全てチャー坊が仕掛けたことだった。
チャー坊は閉じ込められているように見えて、和志が家にいない時は地下室からこっそり抜け出して外の世界を知るようになっていた。
そして、クローン人間は生きづらいことを知り、富士山と手を組んで今回の計画を実行した。
富士山も実は、野田を殺害した際にクローン人間を使ってアリバイを作っていたのだ。
そしてクローン人間は富士山本人を殺し、クローン人間が富士山として生活するようになっていた。
たまたま知り合った二人は、本物の富士山の死体を処理するため、和志を嵌めるため手を組んで今回の事件を起こしたのだ。
クローンが本物の人間をある意味、食べる話だったというわけ。
そうして物語は幕を閉じた。
納得行かないをまとめておく(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここでは僕が納得行かなかったところをまとめますので、皆さんに知恵を借りたいです。
和志のクローンことチャー坊、頭良過ぎませんか?
閉じ込められていて本を読んでいるだけで、あれだけ頭が良くなることなんてあるんでしょうか?
これが僕が納得できなかったことです。
たまたま出会った富士山がクローンであることを見抜くなどは百歩譲ったとしても、このチャー坊の頭の良さだけは納得できません。
早い段階で外に出るようになったから?和志によって言語を教えられていたから?
どれを取っても、あそこまでの推理力や計画力があるのはおかしいと感じてしまいます。
特に遺伝子的には同じであるはずの和志があんなにも不甲斐ないのに。
この納得できない点をぜひ、皆さんに教えて欲しいです。
まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、白井智之さんの「人間の顔は食べづらい」を紹介してきました。
エグい話で、人を選びますがミステリーとして完成度は高く面白かったです。
グロが平気な方は一度読んでみるといいかもしれません。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

