5分でわかる東野圭吾「希望の糸」書評、あらすじ要約

小説の書評

他人の秘密を暴くことが本当の正義なのか?

隠されたものが、誰かを思っているものなら隠しておくべきではないのか?

そんな問いが投げられた作品が東野圭吾さんの「希望の糸」になります。

ミステリーでありながら、親子の愛がいっぱいの作品です。

この記事では「希望の糸」のあらすじ、概要を説明し、書評、ネタバレ要約・解説を行っていきます。

親子の見えない絆の本当に意味を知りたい方はぜひ、読んでみてください。

では、行ってみましょう!

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あらすじ

小さな喫茶店を営む女性が殺された。

刑事の松宮と加賀が調査を進めるものの、被害者は善人であったという情報しか得られなかった。

善人の彼女がどうして殺されたのか、殺人事件の動機にこそ謎を解く鍵がある。

彼女の不可解な行動を調べているうちにある少女の存在が浮上してくる。

一方、金沢で一人の男性が息を引き取ろうとしていた。

彼の遺言には意外な人物の名前があった。

親子とは何なのか、彼女が殺された理由とは、彼が求めた希望とは?

希望の糸というタイトル回収は見事、全てがスッキリする真実。

だけどその真実は決して、美しいだけのものではないことにきっとあなたは驚愕しつつも心温まることでしょう。

真実だけが正義ではない、人の心と親があったから僕たちは笑えるのだ。

本書の概要

ページ数

文庫サイズで、全464ページです。

読むのにかかった時間

セリフが多く、誰が何をいっているのかも分かり易い書き方で、大体5時間半ほどで読み切ることができました。

構成

三人称で書かれた文体で、松宮という刑事、被害者の元夫の綿貫、被害者の店の常連 行伸の三人の目線で真実が明らかになっていく構成でした。

真実はシンプルかつ納得のいくもので、動機にも納得できるツッコミどころがない見事な一冊にまとめられていました。

東野圭吾さんの加賀シリーズと呼ばれる作品ですが、「希望の糸」では加賀の出番は少なめな印象です。

謎を解くこと以上に、隠すことの理由や人の心に注目してほしい作品でした。

書評(ネタバレなし)

「希望の糸」はそのタイトルにふさわしい、本当に希望的なミステリー小説でした。

親子関係がリアルに、そして美しく描き切るのはさすが東野圭吾!といったところです。

読みやすさももちろん、謎がシンプルなのもよかったポイントになります。

一人の女性が殺された理由というシンプルな軸に、どうして?なんで?という謎が深まっていく形で終わりまでいく。

そして終わり直前でもあっと驚かされたり、ほっと心が和む瞬間を用意しているのは見事でした。

リアルな人間関係を描きつつ、フィクションならではの設定や真実、見事に感情移入させられる内容で、きっと多くの方の心を掴むことでしょう。

かくゆう僕も心を掴まれた一人ですから笑

犯人は割と早めにわかるミステリーですが、そこからがまた面白いという作品でした。

伏線が回収されてゾクっとするという部分はありませんでした。

作品に叙述トリックや複雑な殺しのトリックはなく、シンプルに動機という謎を解き明かしていく系ミステリーです。

動機だけでここまで面白くなるとは思えないくらい面白かったです。

読み終わるとシンプルな話だったのかーという感想が出てくるのですが、読んでいる途中はなんで?どうして?が深まるばかりのずっと面白い作品でした。

万人におすすめできる内容で、グロテスクなシーンもエッチなシーンもほとんどありませんでした。

ただ子供が生まれる話ですので、思春期以降の方が対象といったところですかね。

親子関係の難しさや、やっぱり人とのつながりって素晴らしいなって思える作品です。

ミステリーの中に心温まるものを探している方は、ぜひお手に取ってみてください。

あらすじ・要約(ネタバレあり)

ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、まず「希望の糸」のネタバレあらすじ、要約を行っていきます。

事件は喫茶店で殺された女性、花塚弥生を誰が殺したかというものでした。

犯人は、元夫の綿貫の現在事実婚している妻 多由子でした。

動機は花塚弥生と綿貫が秘密裏に会っていたのを、復縁だと勘違いしたからというものになります。

突発的な殺人でした。

花塚弥生と綿貫が会っていたのは、昔不妊治療をしていた時、間違って自分たちの受精卵が他の家族に渡されてしまっていたという話でした。

図で表すとこのような構図になっていました。

relationship

ちょっと複雑ではありますが、綿貫と花塚弥生の子供が他の人の子供として生まれてしまったという話です。

それが後になって判明したために、綿貫と花塚弥生には子供がいないと思っていたけど実は立派に育った娘がいたという展開が事件の鍵でした。

いないと思っていた子供が判明したことにより、花塚弥生は突然ジムに通うようになったり、エステに通うようになったりと女を磨くようなことをしたのです。

それが恋人がいないと言われていたのに不可解な行動として警察の網に引っかかり最終的には真相へと導いてくれました。

解説(ネタバレあり)

ネタバレ解説に移ります。

松宮と父親の話を深掘りしたいと思います。

松宮の父親は、松宮と母親を置いて金沢の妻子の元へと帰った男、と思われましたが、それにはやむおえない理由があり納得のいくものでした。

松宮の父親の本当の妻は、実は同性愛者で松宮の父親とは旅館の後継を産むために結婚しただけでした。

松宮の父親はそれを知り、妻と距離を置くために東京に来て、松宮の母親と出会い子供ができたというわけです。

そして松宮の妻が金沢で事故に巻き込まれ重い後遺症が残ってしまったと聞き、娘が心配で金沢に戻るという決断をしました。

松宮の母親も納得し送り出し、後々松宮をシングルマザーで生んだという形でした。

その後松宮が中学生になったタイミングで、松宮の父がどうしても松宮に会いたいというので、キャッチボールをするという形で再会を果たさせることにしました。

その時が最初で最後の父親と松宮とのコミュニケーションでした。

物語の最終場面では、その時のボールが大切に保管されているところ、思い出の写真が大事に飾られているんを知り、松宮は離れていても父親は自分のことを考えていてくれたんだと自覚するのです。

事情があって、離れ離れになっていた父親と子供、そして、子供が欲しいと願ってできないと知って諦めていた夫婦、それぞれにしっかりと親子関係が描かれた作品でした。

いろいろな三者三様の親子の形を描いたのが「希望の糸」というミステリーでした。

希望の糸というのも、見えないけどしっかりとつながっていると信じる心の糸という意味で、最後の松宮と父親が病室で顔を合わせるシーンも実に感動的でした。

この記事では、かなり端折っているので、ぜひ本書で細かい描写や人との関係性を整理しながら読んで欲しいです。

いろいろな親子関係を知ることで、少しだけ人に優しくなれる気がするそんな一冊だと思いました。

まとめ

ここからはネタバレないので安心してください。

今回は東野圭吾さんの「希望の糸」について紹介してきました。

ミステリーの動機に重きを置いた作品で、親子関係が謎解きにカギになる作品でした。

さすが東野圭吾!といった作品で完成度が高くこのまま映画にでもなりそうな一冊だと思いました。

トリックで驚きたいという方はちょっと物足りないかもしれませんが、ミステリーが苦手でも読める感動作品だと思います。

ぜひ、親子関係に注目しながらじっくり事件の謎を追ってみてください。

では、皆さんのミステリーライフがより良いものになることを祈っています。

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