クローズドサークル。
推理小説ではありがちとなった設定。今回紹介する有栖川有栖シリーズの長編第二弾である有栖川有栖さんの「孤島パズル」もまさにクローズドサークル。
密室も宝探しも、パズルも出てくる作品です。
この記事では、そんな美味しいところいっぱいのミステリー小説について、あらすじから、書評、一部ネタバレありの内容要約・解説を行っていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
南の海に浮かぶ島に13人の男女が集まった。
英都大学推理研究部の部長・江神とアリス、マリアも島での夏休みに期待を膨らませていた。
島にはマリアの祖父が残した遺産を探すためのヒントであるモアイが各所に埋められていて、三人は推理研究部としてこの謎を解くことも楽しみにしていた。
そんな中、おり悪く台風が接近し全員が館の中で待機していた夜、事件が起こる。
密室中で2人がライフルで撃たれて死んでいるのが発見されたのだ。
無線機も壊れ、外との連絡も途絶えた。
絶海の孤島で、新たな犠牲者も…
島のパズルと事件という名のパズル。果たして江神とアリス、マリアは無事に解き明かすことができるのか。
本書の概要
ページ数
解説、あとがき含めず381ページ、全402ページでした。
読むのにかかった時間
だいたい4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
有栖川有栖の視点で描かれる一人称の文体になっています。(作者と同じ名前になっているが決してノンフィクションではありません笑)
有栖川有栖がワトソン役として探偵役である江神とともに事件を解決するシリーズの第二弾です。
書評(ネタバレなし)
目立ちすぎない探偵ってかっこいいな!というのが僕の一番の感想でした。
探偵役である江神さんはとにかく、地味というのが僕の印象です。
生意気であったりとか、偉そうとか、頭がいかにも良さそうという面は少なく、冷静沈着ではあるもののどこにでもいる感じがします。
それなのに、最後の最後ではしっかりと謎を論理的に解き明かす姿がかっこいいんです。
密室とパズル、殺人が絡み合うストーリー展開も良かった。
密室だけでも十分ミステリーを引き立てる役割として十分なのに、島のパズルと連続殺人というのがさらにアクセントになっていくのです。
かなりお腹いっぱいになる作品で、満足度も高い作品だと思います。
伏線の張り具合としては、イマイチかなという印象です。
論理的にピッタリハマっていく謎は素晴らしかったのですが、本当に全てが必要な要素で計算され尽くした内容なのかと聞かれるとうーんという印象でした。
全てのちょっとした謎が、一点に交わる作者の思惑通りにことが運んでいた系の方が僕は好きでしたね。
論理に合わせるために結局ミスリードさせるような表現が多く、なんなら謎の一つも犯人がやったことではないんかい!というのもありました。
最終的に謎が解かれる前に読者への挑戦として、犯人が誰か分かったかな?というのもありました。
僕は犯人名だけは当てることができました。細かい殺人事件のトリックは分かりませんでしたが。
決して驚いて鳥肌が出るレベルではないものの、確実に面白い作品であることは確かだと思います。
特に、決して天狗にならない探偵役江神さんに好感が持てます。
おすすめ度
有栖川有栖さんの「孤島パズル」おすすめ度は、5点満点中3.5点です。
ミステリーの王道としてはかなり面白かったのですが、伏線のレベル的に手放しでおすすめできる作品ではないかなという印象を持ちました。
全ての謎がとにかく一点で交わるような感動と驚きが欲しかった。
あとは、連続殺人のドキドキ感と切ない感じがもっと欲しかったと思いました。
淡々と殺されるので、感情移入する前に殺され、誰が死んだんだっけ?となるくらい淡白な感じがしてしまいました。
とはいえ、論理が整った推理と謎は良かった。
なので本格ミステリーが好きな方は読むべき。本格ミステリーよりかは伏線がすごい謎系のミステリーが読みたいなら別の本がいいかも。という位置付けです。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
英都大学推理研究部の部長・江神とアリス、マリアの三人は夏休みに島を訪れた。
その目的は、祖父の遺産であるダイヤモンドを隠した島での宝探しだった。
宝探しを解く鍵は島に建てられたモアイ像。ミステリー好きな三人はこの謎を解くために島へやってきました。
島に到着した二日目、嵐が島を襲いました。
さらに、嵐の音に紛れ銃声もまた鳴り響いていましたが、その時は誰も気づきませんでした。
翌日、1人の男性が大騒ぎし始めました。
部屋にいる連れ(妻)が鍵を閉めて出てこない。と。
江神は嫌な予感がし、アリスらと共に、部屋へ直行する。
部屋には内側から鍵がかけられており、最終的に壁を破壊する形で部屋にはいると、父親と共に女性が死んでいるのがわかる。
島に遊びに来ていた医者によって検死が行われ、死因はライフル中による狙撃であることがわかった。
島には和人という館の主の息子が持つライフル中が一丁おいてあり、それによる犯行だと断定された。
皆のアリバイを確認するが、夜中ということもあり結局犯人の断定はできず時間が経った。
次の事件はすぐに起こった。
別館にいた絵描きが殺されたのだ。
犯行は同様でライフルによる殺人。連続殺人であることがわかりつつ。犯人の手がかりである紙を発見する。
紙にはモアイの謎を解くヒントが書かれているとともに、タイヤで踏まれた後があった。
タイヤの跡から、犯人が落としたものであること、落とした後にタイヤで踏んでいるということがわかる。
そして、ライフルの持ち主である和人もまた、死ぬ。
自殺に見せかけられて和人は殺されていたが、江神はすぐに自殺ではなく他殺であることを見破った。
江神は和人の遺体と共に発見された絵描きの日記を読み、事件の真相に気づく。
犯人は、和人の兄の許嫁だった。
和人の兄は、3年前に和人によって殺されていてその復讐が今回の目的だった。
密室の謎は被害者自身が相続問題を分かりやすくするために自作したもので、犯人とは関係のないものでした。
犯人につながるヒントは落ちていた紙と紙に残ったタイヤの跡。
紙は元々絵描きが持っていて、別館にあった。
別館にあった紙を本館に持ってくる中で紙を落とす。
その後でもう一度別館に行って紙を踏む。という一日に2回通った事実から犯人割り出しへと行き着いたのだ。
犯人は全ての犯行を認め捕まるかと思いきや、次の日の朝遺体となって見つかった。
マリアは尊敬していた人物が犯人だったショックで大学を休学し、その帰りを待つアリスという図で物語は幕を閉じた。
犯人の行動について解説(ネタバレあり)
ここでは犯人の行動についてもう少し深ぼっていきます。
本編にあった通り、犯人は礼子でした。
意外ではあるものの、驚きとしては少なかったですね。
そんな礼子は最後どうして死んでしまったのかについて考察していきます。
ズバリ、捕まるくらいなら死んだ方が良い気持ちと復讐を遂げたことで生きる目的を失ったからという二つでしょう。
捕まらないのを前提にしていた犯行計画で礼子は動いていました。
そのため、硝煙反応を偽装したり目撃されないように一生懸命になっていました。
捕まらないことで義理の父の面倒をこの先も見続けようと考えていたのです。
しかし、江神によって真実が明らかにされてしまった。捕まって義理の父に迷惑をかけるくらいなら死んで詫びようとしたのではないでしょうか。
続いて、生きる目的を失ったから。こっちの方が理由としては強いと思います。
礼子は許嫁である英人が殺された段階で、自分も死のうと絶望していました。
しかし、英人の弟である和人が殺人犯だとわかると殺すことを決意し、復讐を心に誓います。
ある意味礼子を生かしていたのはこの復讐の気持ちだけです。
そのため、その目的が達成された後、生きる目的も意思もなくなってしまいました。
だから最終的に自殺してしまった。
犯人が自殺してしまうのは、物語としては締めくくりやすいかもしれませんが、個人的にはうーんと心残りになってしまういますね。
以上2点が犯人が最終的に自殺を選んだ理由について考察です。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は有栖川有栖さんの「孤島パズル」を紹介してきました。
パズルや殺人、密室と目白押しの謎解き要素がとにかく面白かったですね。
伏線回収ものとしてはイマイチであるとか、最終的なオチがそこまでびっくりしないというのは残念ポイントではありました。
とはいえ、トータル本格ミステリーとして綺麗にまとまった内容で好きでした。
ぜひ一度お手に取ってみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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