犠牲や代償を捧げて罪をあがなうこと。を贖罪と言います。
今回紹介するのはまさにそんな意味に相応しいミステリー小説、湊かなえさんの「贖罪」です。
過去の事件の目撃者一人一人の贖罪をテーマにした内容で、ホラーとミステリーの見事な融合な一冊でした。
この記事では、そんな「贖罪」を一部ネタバレ有りでまとめて紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

15年前、静かな田舎町でひとりの女児が殺害された。
直前まで一緒に遊んでいた4人の女の子、犯人と思われる男と言葉を交わしていたものの、4人全員が顔を思い出せず迷宮入りに。
娘を失った母親は彼女たちにその恨みをぶつける。
「必ず犯人を見つけなさい。それができないなら、私が納得できる償いをしなさい」
この言葉によって四人の女の子の生活が変わる。
果たして事件の真相とは、四人の女の子たちの行先は??
本の概要

ページ数
文庫サイズで、巻末インタビューを除き300ページ、全316ページでした。
読むのにかかった時間
大体3時間半ほどで読み切ることができました。
構成
4人それぞれの視点で当時の事件を振り返りながら、半生を語る構成でした。
最後には娘を殺された母親の視点で、すべての真相がわかるという構成。
おすすめ度

湊かなえさんの「贖罪」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
非常に面白く多くの方にお勧めできる一冊という評価。
4人の半生がとんでもないものであり、すべて贖罪という言葉が影響していることがわかるのは読んでいて見事すぎました。
女の子たちの人生の歯車が少しずつ狂い、最終的には悲しい結末となるのはミステリーというよりホラーです。
さらに、最後の最後では母親の視点で、さらに悲しい真実に辿り着く。
メンタルを削る一冊ですが、ぜひ多くの方に読んでほしい。
こういう小説があるからこそ、読書は楽しいと思わせてくれる一冊だと思います。
満点でおすすめしない理由としては、やはりスカッと終わる方が万人にはウケると思ったから。
伏線回収によるぞくっと感も少ないので、個人的には若干おすすめ度を下げた結果でした。
気になる方は、ぜひ、お手に取ってみてください。
書評(ネタバレなし)

辛過ぎるて…というのが僕の正直な感想です。
とにかく読んでいて辛いのが「贖罪」でした。
4人の女の子の半生がとにかく悲惨です。しかも妙にリアルに悲惨なんです。
こんな世界フィクションでしか描けないよ。という感じではなく、リアル、ありそう、存在する人なんじゃないか。と思わせる。
僕はこのリアルさがとにかく不気味かつ、こんな人生は嫌だと心の中から叫びました。
最終的に待っている結末もかなり悲惨で、後味の悪さは天下一品だと思います。
悪く聞こえるかもしれませんが、僕はこの後味の悪さが大好きです。
全てが綺麗にまとまる小説よりも、「贖罪」のように後味が悪く、誰も幸せにならないような結末の方が好み。
こういう小説があるからこそ、ハッピーエンドがより一層ありがたいものになり、あっと驚く結末にもきちんと驚ける気がするのです。
ホラーでありながらミステリー。そんなフィクションで良かったと安心できる一冊が「贖罪」でした。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約、あらすじを紹介していきます。
空気が綺麗しか取り柄のない田舎町で事件が起きました。
東京から引っ越してきた女の子・エミリが強姦され殺されたのです。まだ小学生なのにと悲しまれる中事件ギリギリまで遊んでいた4人の女の子。
4人とエミリは一緒にバレーボールで遊んでいるところに、作業服を着た男性に声をかけられる。
エミリに作業を手伝ってもらいたいと言う男性、4人はエミリを送り出して再度バレーボールで遊んでいる時に事件が起きていた。
作業服を着た男性が犯人であると断定し、捜査は進められるものの、4人は男性の顔が思い出せなかった。
顔が思い出せないことに怒りを見せたのはエミリの母親だった。「犯人を見つけろ、できなければ償いを見せろ、それもできないなら復讐してやる」
その言葉に4人の女の子は震え、人生が狂っていく。
一人目の女の子は、エミリが殺されたことで顔を見た自分も狙われていると思ってしまう。
常に人の目を気にしながら生きていき、やっと幸せな結婚をしたと思ったら旦那は超がつく変態だった。
女の子を人形に見立てて、毎晩「動くな!」と恫喝しながら人形遊びに付き合わされる。
そんな生活に耐えきれず旦那を殺してしまう。
2人目の女の子は、贖罪として小学生の教師になることにした。
真面目な教師だったが、ある日学校に不審者が入ってくる。それを撃退する際にたまたま不審者が死んでしまう。
不審者が死んでしまったことで、教師が殺人鬼と噂だってしまい教師の職を失ってしまうのだった。
3人目の女の子は、事件を機に引きこもりになってしまう。
外に出られない中、兄に結婚相手ができる。とても良い人だったが、連れ子がいることだけが欠点。
それでも仲良く、たまに顔を見せながら生活を送っていたがある日とんでもない現場を見てしまう。
なんと兄が連れ子の女の子に乱暴をしているのだ。そして、エミリのことを思い出し兄を殺害してしまう。
4人目の女の子は、姉の旦那の子供を孕っていた。
そのことで、姉の旦那は女の子と殺そうと階段から突き落とされそうになったが、逆に旦那を突き落とし殺害する。
こうして、4人全員が殺害という経験をしてしまう。
エミリの母は、後悔をしていた。小さな女の子たちに贖罪を求めたことを。
さらに一人また一人と殺害という罪を犯していくのを見ていき、さらに後悔を深めていく。
そして、エミリが殺害された真実に辿り着くのだった。
真相はエミリの本当の父親である昔付き合っていた男性が、エミリの母への復讐のために実施したことだったのだ。
男性は自分の娘を強姦し、殺害した。
その真実に辿り着き、そもそも自分が悪かったとエミリの母親は後悔し、さらに4人の女の子への贖罪としてそれぞれの女の子に優秀な弁護士をつけることにした。
少しだけ罰が軽くなっていく女の子たちに、果たして幸せは訪れるのだろうか。
まとめ

ここからはネタバレを含みませんので、安心してください。
今回は、湊かなえさんの「贖罪」を紹介してきました。
非常によくできた話で、僕はリアルさに震え、悲惨さに驚愕しました。
ハッピーエンドな小説に飽きている方には特におすすめですね。
気になる方はぜひ、読んでみてください。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。


