高校生探偵が謎を解く!
某漫画でも有名な設定です。
今回紹介する青崎有吾さんの「体育館の殺人」でもそんな高校生探偵が現れます。
たった一本の傘で見事に事件が紐解かれるのは、圧巻の出来。
この記事では、そんな「体育館の殺人」のあらすじから、書評、ネタバレありの内容要約をしていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
風ヶ丘高校の旧体育館で、放課後。
放送部の少年が刺殺された。
密室状態の体育館にいた唯一の人物、女子卓球部部長・佐川の犯行だと警察は決めてかかる。
卓球部員・柚乃は、部長を救うために学内一の天才と呼ばれる裏染天馬に真相の解明を頼んだ。
学内一の天才とは思えない、アニメオタクのダメ人間の裏染天馬、果たして彼は真相に辿り着くことができるのか。
そして、そんな探偵に読者は勝つことができるか?
本書の概要
ページ数
解説含めず373ページ、全379ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間ほどで読み切ることができました。
構成
全5章に分かれた長編ミステリーで、5章目の前に読者への挑戦があります。
4章までで謎を解く鍵が全て開示され、読者の推理タイムが設けられるのです。
5章では解決編、エピローグでさらに事件の真相がわかる構成になっていました。
基本は女子卓球部の部員・柚乃が主人公で物語の主点です。
たまに刑事でもある柚乃の兄・袴田の視点になることもありましたが、いずれも三人称の書き方をされていました。
書評(ネタバレなし)
一本の傘だけで本当に事件が解けちゃった!!というのが僕の感想でした。
あれよあれよと、容疑者を絞っていき最終的にその人でしか犯行が行えないことを立証するのはまさに名探偵。
読者への挑戦として僕も結構考えましたが、真実には辿り着けなかったです。
まさか、傘の役割がそういった使い方にあるとは!?という驚きが多く、ちょっと盲点的な考え方だったと思います。
密室の破り方も斬新で、ひねくれた性格であればあるほど、解けないような気もしました。
話全体として、短編のようなテンポの良さですぐに事件が終わるかな?と思いきやまさかのアクシデントなどもありちゃんと長編として幕を閉じるのが良かったです。
証言や証拠をじっくり解説しているので、本当に読者に推理力があれば探偵の解決前に推理できそうだと思います。
僕は無理でしたが、謎を解きたいという意欲のある方は挑戦するという意味でも読んでみるといいかもしれません。
おすすめ度
「体育館の殺人」のおすすめ度は、5点満点中2点です。
正直、そんなにおすすめはしないかな。という評価。
というのも、正直心のアップダウンが少なかったからです。
一人の学生が殺されて、事件を証言を聞きながら詰めていくスタイルは王道ではあるものの、刺激的な事件やハプニング満載な本を多く読んできた僕にとっては物足りなく感じてしまいました。
もちろん、王道のミステリーとしては「体育館の殺人」が良いのはわかるのですがトリックも、解けてしまうと現実的すぎて驚きや鳥肌には程遠い感じがしました。
なので、僕の好みじゃないという点からおすすめ度も低い感じ。
ただ、しっかりとした推理物が好き、自分で謎を解く快感味わいたい方にはおすすめできます。
緻密な論理は見事な構成になっていると思います。
あらすじ・要約(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの内容要約・あらすじからやっていきます。
放課後になり、卓球部の練習で柚乃は旧体育館にいきました。
そこには既に部長・佐川と顧問の先生がおり柚乃は友達と卓球台などを運び出そうと倉庫に向かうと、ドーン、ドーンと大きな音を聞きます。
そして、同じく旧体育館に用があった演劇部たちが旧体育館のステージの幕を誰が閉じたか聞き、佐川は放送部の朝島が閉めたと言います。
特に意味がないだろうからと幕を上げるとそこには、朝島の遺体があったのです。
遺体にはナイフが深々と刺さり、上手からステージ中央へ引きづられた跡もありました。
すぐに警察が来て他殺であるとし捜査が始まりました。
捜査の中で殺害時、旧体育館の出入り口には鍵や人の目によって密室となっていました。
出口三つのうち、一つは鍵。一つは演劇部が運んできたリアカーによって通れず、最後の扉は人の目によって誰も出ていないことがわかりました。
唯一そんな密室の中にいた卓球部部長・佐川が犯人候補となったのです。
柚乃は部長がそんなことするわけないと、刑事で捜査していた兄にも訴えますが聞いてもらえません。
落ち込んでいると、生徒会副会長である千鶴がやってきて学内一の天才・裏染天馬に相談するのがいいんじゃないかとアドバイスします。
言われた通り、裏染に会いにいく柚乃。
部長の無実を証明する代わりにお金を払うことを条件に、協力を取り付けます。
裏染は、トイレに残されていた一本の傘が男物であること、佐川の証言に女生徒が旧体育館に入ったことを武器に警察を論破し、見事に佐川の無実を証明して見せるのです。
柚乃はその鮮やかさに感服しつつ、事件の真相も解くことを追加で依頼します。
追加報酬に釣られ裏染は事件の捜査を始めます。
密室はすぐに破れるだろうと見越して、関係者のアリバイを聞いて回る裏染。
そして、ついに事件を解けると思った矢先、鍵のかかった扉を糸などで外から鍵をかけることができないことが判明し、裏染の推理が崩れてしまうのです。
鍵は犯人がかけた。体育館に入ったところを目撃された女生徒は裏口から出ていっていた。その女性が見た傘が濡れていなかった。
これらの情報から裏染は一気に推理を展開します。
そして、アリバイから犯人は生徒会長であることを暴くのです。
証拠がない分、アリバイから犯人を絞っていき、ついには生徒会長も罪を認めるのでした。
真犯人の解説(ネタバレあり)
生徒会長が犯人。というのが一応の事件の真相ではあります。
ですが、実はこの生徒会長が殺人を犯すように仕向けた人物がいたのです。
それが副会長である千鶴。
生徒会長にカンニングの罪を来させ、放送部の朝島にその現場を撮らせ、生徒会長のストレスになるように立ち回ったのです。
不正が表に出ないように生徒会長は朝島を殺す。これを見越しての行動だったわけ。
千鶴自体は犯罪を犯してはいないものの、確実に事件の真犯人だと言える人物でした。
なすすべもないかと思われましたが、裏染はこの真相に辿り着き千鶴から二人きりの話だと強調することで言質を取ることに成功します。
録音音声を手にいれ、千鶴が生徒会を辞めることを取引条件にしました。
千鶴は生徒会長になりたいがために生徒会長を陥れたのでした。
最終的に真犯人もきっちり罰を負った物語でした。
まとめ
今回は、青崎有吾さんの「体育館の殺人」を紹介してきました。
見事に積み重ねられた論理は素晴らしかったですが、刺激的な作品が好きな僕にとっては正直イマイチでした。
とはいえ、本格推理ものが好きな方や読者に挑戦に挑みたい方はぜひ読んでみてほしいです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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