頭が良すぎるアルコール中毒者!
まさにそんな言葉がぴったりの作品を今回は紹介します。
藤原伊織さんの「テロリストのパラソル」です。
アルコール中毒者のバーテンダーが新宿で爆発事件に巻き込まれていくお話。
謎がどんどん最後に解けていく様と驚きの結末には開いた口が塞がりませんでした。
この記事では、そんな「テロリストのパラソル」の内容を一部ネタバレありで紹介していきます。
では、いってみましょう!

あらすじ

アルコール中毒のバーテン・島村は、ある朝いつものように新宿の公園でウイスキーを飲んでいた。
ほどなく、爆発テロ事件が発生。
全共闘運動に身を投じていた島村は犠牲者の中にかつての仲間の名を見つけ、事件の真相を追うことになる。
果たして爆発テロは誰が、どんな目的で実施したのか。
真相を追いかける島村に迫る影の正体とは!?
本書の概要

ページ数
巻末対談を除いて375ページ、全383ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
島村の第一人称視点で書かれる構成でした。
一人称視点であるものの、島村が主人公かつ探偵役のため、読者には伏せられる情報がありアンフェアな探偵者となっている部分がありました。
おすすめ度

藤原伊織さんの「テロリストのパラソル」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
多くの方におすすめできる一冊という評価。
非常に良くできていて、社会問題や感情が見事に描かれている点は素晴らしかったです。
また最後にかけての謎がどんどん解けていく様は圧巻、驚きのある展開にも非常に良かったです。
書かれた時期が古い点だけ、おすすめ度を下げました。
作品としては非常に良くできていますが、今の時代に置き換えてしまうと違和感があるところがあります。
しっかりと書かれた年代と時代背景を考えると非常にマッチした社会問題に切り込んだ作品として非常によいとは思いました。
時代の古さを感じにくい方には手放しでおすすめできますので、ぜひ気になる方は読んでみて下さい。
書評(ネタバレなし)

うわーそうやって驚かせてくるのかー!というのが僕の感想でした。
決して予想できない展開じゃなかったし、使い古された手ではあるものの驚かされました。
伏線回収としては若干ずるい気がする展開ではあるものの、しっかり理論立てられた結論は素晴らしかったです。
ミステリー要素以外にも感情がすごい理解できたり、こっちまで辛い思いや後悔という思いが流れてくるところは文章がとにかく上手いと感じました。
感動できるほどではないものの、感情を揺さぶる要素はしっかりと入っておりラストに怒りや憤りを残すところは心に訴える作品であると思います。
僕としてはもう少しドキドキ、ワクワクしたいなとは思いました。
主人公が強くて頭も良いというのはちょっとできすぎている気がしたのです。
アルコール中毒になってしまった経緯とか、実は鈍感すぎて今は幸せではないなどのマイナス要素は確かにあるのですが主人公カッコ良すぎます。
主人公がカッコ良すぎるのが好きではない僕としては、もう少し抜けたところがあっても良かったなー、感情移入がよりしやすくなったかなーと思いました。
ともあれ、トータル面白く社会問題にも切り込んでいる作品として読んで良かった作品でした。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにして下さい。

では、ネタバレありの内容要約、あらすじを紹介していきます。
島村はウイスキーを飲みながら、いつもの公園でぼーっとしていると、一人の少女に話しかけられます。
昼からお酒を飲んでいることを指摘されつつも、偏見を持たない少女と会話をする島村。
少女の父親がやってきて、すぐに連れられていく。
朝からウイスキーを飲むアルコール中毒者にはやはり、優しい世界なんてない。と思う島村に今度は宗教勧誘の青年が現れる。
あいにく、興味はないと断り、自分がバーテンダーをやるお店に戻ろうとした時爆音が聞こえた。
爆発が起こったのだ。多くの人間が被害に遭う中、先ほど自分を偏見で見なかった少女の安否が気になり現場近くへと行く。
少女は奇跡的に軽傷だったため、近くにいた宗教勧誘の青年にあとは任せて、島村は足早にその場を立ち去った。
その夜、バーテンダーをやる島村の元に浅井という元ヤクザがやってくる。
忠告をする浅井、島村は爆発事故との関連を疑いつつ、半信半疑でその話を聞いているとその夜数人に襲われたのだ。
元ボクサーだった島村は抵抗するも、ボコボコにされてしまう。
江口組というヤクザが絡んでいそうであることはわかるも、どうして自分が襲われるか全く身に覚えがない。
さらに、爆発事件によって桑野という旧友が亡くなった情報、現場に残された指紋から島村自身が疑われていることを知る。
さらにさらに、バーテンダーのお店にかつての旧友で一時は同棲もした優子の娘も現れ、母である優子も爆発に巻き込まれ死んだことを話す。
旧友を二人も一気に亡くしたショックから、自分が真相を誰よりも早く暴いてやると意気込む島村。
優子の娘である塔子にも若干の協力を仰ぎながらも、まずは自分が疑われているから逃亡生活を心配する。
かつて島村と桑野、優子は、全共闘運動に参加しており学校に閉じこもるということをやっていた。
その後、それぞれの道を進み、島村はボクサーとしてその才能を開花させつつあった。
優子もそんな島村に惹かれ、島村の家に半居候として同棲していた時期があったが、ある日島村の元からいなくなったのだ。
翌る日、桑野に誘われてドライブに行こうとすると、長年メンテナンスを怠ってきた車がついにブレーキが全く効かなくなってしまう。
さらに桑野が持ってきた大きな荷物の中身は爆弾だと言われる。
どうしようもなく車を無理やりガードレールにぶつけて止めることにするも、引火。
近くにいた人たちに逃げるように伝えるも、爆弾は爆発し、一人の警察官が亡くなってしまう。
なんとか、現場にいた少年は助けることができたが、島村と桑野は指名手配犯となる。
桑野は留学の予定が決まっていたため、そのまま海外へ。島村は桑野が自首したら自分も自首しようと逃亡生活をしており現代に至った。
その時の罪は既に時効となっているものの、その事件を知る警察は今度こそ島村を捕まえようとしていると考える。

そんな中、浅井と手を組み、新宿界隈で江口組というヤクザが薬を出回らせていることを暴いていく。
一時的にお世話になったホームレスたちにも話を聞いていきつつ、塔子の話から優子や爆発に巻き込まれた被害者の何人かは短歌会の参加者であることがわかった。
優子が短歌にハマっていたことに驚きつつも、真相に迫っていく。
爆発に巻き込まれた被害者の一人に、警察関係者がおり、警察はより一層最有力候補である島村を追う。
島村は爆発に巻き込まれた少女の元を訪れることで、最後のピースを見つけ出すことに成功する。
そして、いよいよこの爆発事件の首謀者の元へと辿り着く。
その人物は「桑野」だった。
桑野は実は生きており、片腕を使って自分が死んだように見せただけだったのだ。
桑野は海外に行った後テロリストになるも、収容所送りにされた経験を持ち、そのことで警察関係者を恨んでいた。
さらに長年愛していた優子も一生島村に恋していることに嫉妬したのだ。
そして、復讐と破壊。その両方を実行するために爆弾を使ってその二人が揃うタイミングを狙ったのだという。
島村は桑野を殺す覚悟でその場へ赴いたものの、かつての旧友の苦悩に若干の同情を覚え、あとは警察に任せることにした。
最後まで自分のことが大好きだった優子、それに嫉妬する桑野。その存在を全く感知できなかった自分。
銃刀法違反で警察に連行される島村はそんな状況に微笑むしかなかった。
人間関係解説(ネタバレあり)
ネタバレ続きます。
ここでは最終的な人間関係が複雑になってしまった部分を図解で解説します。
主人公の最終的な人間関係は下図です。

話だけ追っていると人の名前が覚えきれておらず混乱する箇所もあるかと思いました。
僕自身、あれそいつ誰?ってなったりも多々ありました。
こうやって図解にすると一気にスッキリしますよね。
浅井の人間関係が特に今回は複雑だったので、まとめてみました。
人間関係をスッキリさせると意外と登場人物が少ないことがわかり、驚きますね。
まとめ

ここからはネタバレないので安心して下さい。
今回は、藤原伊織さんの「テロリストのパラソル」を紹介してきました。
ちょっと古い作品ではありながらも、確実な驚きの結末を届けてくれる作品でした。
気になる方はぜひ、チェックしてみて下さい。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

