どうして彼女を庇うのか?
悪辣弁護士の御子柴礼司シリーズ第二弾!中山七里さんの「追憶の夜想曲(ノクターン)」
鬼気迫る法廷決戦!という名前に相応しい一冊でした。
この記事では、あらすじから、おすすめ度、一部ネタバレありの要約・解説をやっていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
少年時代に凶悪事件を犯し、今では金持ち専門の不良弁護士になった御子柴礼司。
そんな御子柴が誰も見向きもしない、身勝手な主婦の夫殺しの弁護を無理やり奪い取る。
金目のない事件に関わる御子柴の目的とは?
因縁の検事・岬との逆転に次ぐ逆転。法廷ミステリー。
果たして夫殺しの主婦の真実とは、御子柴の狙いとは。
本書の概要
ページ数
解説含めず399ページ、全408ページ。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
三人称で書かれた文体で、基本は御子柴礼司を主軸とした話の展開でした。
全四章で書かれた内容で、起承転結で分かれている構成で書かれています。
書評(ネタバレなし)
法廷ミステリー面白すぎる!言葉のラリーが最高すぎる!!というのが僕の「追憶の夜想曲(ノクターン)」を読んだ感想です。
オチ自体は胸糞悪い展開で、逆転による逆転でスカッとはしますが、心残りな部分もある内容でしたが、見事な言葉のラリーと起承転結が良かった。
ミステリーとしても、謎が謎を呼ぶ感じ、どうしてこの調査をしているのか?という疑問が最後に彰できずになるのが見事でした。
御子柴礼司シリーズの第二弾というので、第一弾である「贖罪の奏鳴曲(ソナタ)」の続編ではあるものの、「追憶の夜想曲(ノクターン)」から読み始めても意味はわかるかなと思います。
ただ、御子柴礼司の過去編を知っていた方が面白みが増すと思いますので、前作である「贖罪の奏鳴曲(ソナタ)」を読むのを強く推奨します。
法廷ミステリーはそこまで好きではありませんでしたが、「追憶の夜想曲(ノクターン)」を読んでそんな思いもなくなりました。
言葉のラリーや証拠を突きつける感じが、まさに伏線回収!見事すぎて美しさが際立っていました。
小説全体通して、読みやすく謎が謎を読んで引き込まれていく作りなのに、最後の驚きの展開と見事な伏線回収。
小説としてのメッセージ性は低いものの、物語としては非常に面白かったです。
おすすめ度
中山七里さんの「追憶の夜想曲(ノクターン)」のおすすめ度は、5点満点中4点です。
物語として見事で、言葉のラリーと法廷ミステリーの出来は非常に高い、伏線回収も素晴らしかったですがメッセージ性が弱いので少し減点した評価になります。
僕自身決して、メッセージ性が強い作品が好きなわけではありませんが、中山七里さんの他の作品だと被害者に感情移入したり、社会問題に対するメッセージ性で考えさせられるので、その分がなかったのが少し残念でした。
なので、物語としての面白さミステリーの完成度、伏線回収という点では非常に高い評価。
メッセージ性が少ない分、おすすめがしづらくなっているのが4点の理由です。
また、若干重めの内容になっていて胸糞悪い部分もあるので、そういった面からも4点が妥当な数字だと思います。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約・あらすじからやっていきます。
カッターナイフを使い、夫である津田伸吾を殺したとして起訴されている妻・亜季子。
亜季子の弁護人はすでに半分匙を投げた状態であった中、御子柴が元の弁護人を脅してまで自分で弁護すると名乗り出た。
亜季子も既に自供しており、減刑できるかが裁判の重要事項になっていた。
御子柴は正当防衛などの線で減刑を勝ち取ろうとするも、検事である岬にことごとく撃ち落とされてしまう。
伸吾の父親である要蔵や、娘である美雪、倫子などの家族からも話を聞く。
殺害現場を訪れることで、ある閃きを掴んだ御子柴は亜季子の過去に真相がある。と考える。
そして、なんとかして亜季子の過去を知る人物に出会い、亜季子はPTSDだったことを聞く。
その原因は亜季子の妹が死んだことだった。
いよいよ、裁判の日に御子柴は、亜季子が隠すことを暴露し始める。
亜季子は精神的ショック(PTSD)によって極度の先端恐怖症だったのだ。
そんな人が殺人なんて犯せるわけない。ましてカッターナイフを持つことすら不可能だと訴える。
検事である岬や裁判官も空いた口が塞がらない中、亜季子だけが激昂する。
「それ以上、言わないで」と
真犯人は別にいる、それも亜季子が庇わなければいけない人物。
裁判は閉廷となり、岬は御子柴の元へとやってくる。
真犯人は誰であるか。
その答えは簡単で、亜季子の娘の一人である美雪だったのだ。
伸吾はリストラ後、働くことをせず借金をしていた。
なんとか亜季子の働きで家族は養われていた。
ただそんな中、伸吾の父である要蔵は自分の欲望で美雪を犯していたのだ。
美雪はそのショックと、父親が要蔵から美雪を売ることで金をもらっていたことを知り、絶望の中父である伸吾を殺したのだと推理する。
要蔵は自分の罪を認め、美雪にもこれから事情聴取をする必要がある。
倫子という少女だけが残された家族という形で、物語は幕を閉じた。
そして、御子柴が亜季子の弁護に名乗りを上げたのは、昔御子柴が殺した少女の姉こそが亜季子だったのだ。
贖罪の一つとして御子柴は亜季子に手を伸ばしたというのが、御子柴の今回の目的だった。
伏線解説(ネタバレあり)
亜季子が実は先端恐怖症である。というのが今回の驚きポイントかつ伏線回収要素でした。
実は伏線たるものは複数あり、物語の中でも紹介された包丁が置いていない。机の角が全て丸い。などがありました。
倫子がまだ幼いから、角にぶつかっても良いようにと思わせといて、実は違かった。見事な伏線でしたね。
亜季子が何かを隠しているとは序盤からわかってはいましたが、まさか先端恐怖症というオチは読めませんでした。
見事に隠されているのに、絶妙にヒントも落ちている、見事すぎる伏線回収だと思いました。
亜季子が実は御子柴が殺した子の姉であるとか、要蔵が実は美雪に手を出していたとかは、なんとなく雰囲気でわかっていましたが、先端恐怖症は本当に見事だったと思います。
伏線を伏線と思わせない工夫で、幼いから、子供だけだから。という表現、素晴らしかったです。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は、中山七里さんの「追憶の夜想曲(ノクターン)」を紹介してきました。
法廷ミステリーとして完成度が高く、逆転に逆転、伏線回収も見事な作品でした。
前作「贖罪の奏鳴曲(ソナタ)」を読んでいるとより面白くなる内容で、ぜひとも前作と合わせて読んでほしいです。
御子柴というキャラもどんどん好きになっていきますね。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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