5分でわかる中山七里「護られなかった者たちへ」書評&ネタバレ要約

小説の書評

殺害方法の中でも餓死させるというのはかなりエグいでしょう。

今回紹介する中山七里さんの「護られなかった者たちへ」もそんな残酷な殺害方法が出てきます。

エグすぎる手法とは裏腹に、心を動かされるストーリーと動機。

目をついつい背けてしまう問題にフォーカスした「護られなかった者たちへ」は多くの方にぜひとも読んでほしいです。

この記事ではそんな「護られなかった者たちへ」のあらすじから、概要、一部ネタバレありの内容要約をしていきます。

では、いってみましょう!

ORANGE BLOG オリジナルロゴ
スポンサーリンク

仙台市で遺体が見つかった。

拘束されたまま餓死させられた残酷すぎる遺体。

担当刑事の笘篠は怨恨の線で捜査を進めると、被害者は人から恨まれるとは思えない善人のような人物だとわかる。

容疑者が一向に浮かばずにいる中、二体目の餓死死体が発見された。

二体目の死体によって、ようやくつながりが見えつつあるものの、事件はさらに複雑な社会問題へと発展していく。

果たして、犯人は誰なのか。本当の悪はなんなのか。

犯人に同情心を持つものが多数生まれるであろう一冊!

ページ数

映画化記念の監督と作者の対談ページを抜いて、本編は470ページ。

全477ページの文庫本でした。

読むのにかかった時間

大体5時間半ほどで読み切ることができました。

構成

刑事視点と容疑者視点の二つの視点で描かれる構成でした。

文体は三人称視点で、現代語、話し言葉で書かれているので非常に読みやすい構成になっています。

とにかく、心が痛くなるミステリー。というのが僕の感想です。

描写がリアルかつ動機が超同情しちゃう内容にまとめられていました。

人物の心の動きがとにかく見事に描かれていて、本当の善とは何か。

自分も同じ立場だったら犯罪を犯しているかもしれないと思わせられる内容でした。

殺害方法が餓死という残酷な方法であるので、犯人は許せない快楽殺人鬼かと思いきや全く異なる犯人像に落ち着きます。

最終的な着地点としても見事で、節々に伏線が散りばめられているのもよかったです。

ミステリーとして読む以上に社会派の小説という見方の方が評価が高くなるような作品で、ミステリー要素以上に人間模様や社会問題という切り口が素晴らしすぎました。

ストーリー展開もよく、登場人物も決して多くはないので状況整理や犯人推理も捗りました。

唯一の弱点と感じたのは感情移入しすぎて心が痛くなる点。

犯人に同情しすぎると社会や政府に怒り爆発しそうになるくらいの見事な描き方でした。

僕が同じ状況だったら、犯人と同じ行動をした可能性もあるなと怖くもなりました。

そういった面でもリアルかつ感情移入しやすい、動機もストーリー展開もラストも全てが素晴らしい出来栄えの小説です。

中山七里さんの「護られなかった者たちへ」のおすすめ度は5点満点中4.5点です。

万人におすすめしたいけど、学生はちょっと読まない方が良いかも?という評価。

まずグロいポイントとして、餓死の遺体の詳細描写や心が痛くなるような社会問題の話が出てくるので若干人を選ぶとは思います。

また学生だと働くという概念自体がまだ曖昧な部分があったり、逆に共感しすぎて社会的運動になるかも?というイメージで万点から0.5点だけ減らしました。

ですが、小説としての出来栄えはピカイチで、少なくとも大人は絶対読むべきだと思います。

社会問題とミステリーが見事に融合された小説であり、考えさせられる内容かつ考えるきっかけをくれる内容でした。

普通に生活しているだけでは気付けない部分を教えてくれるという点でも非常に有意義な一冊だと思います。

グロいシーンとリアルすぎる描写で心が痛くなる題材という点だけ除けば、間違いなく万人におすすめする一冊です。

伏線もどんでん返しもあるので、ミステリーファンも満足できるはず。

ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、ネタバレありの内容要約・あらすじをしていきます。

餓死で殺された事件の担当となった刑事・笘篠。

被害者である公務員・三雲の身辺を洗うものの、有力の情報どころか恨まれる要素ひとつない人物だとわかる。

殺され方が餓死という残酷な手口であることから怨恨の線が濃厚であるものの、恨まれそうなところが出ないことに苦労しつつも調査を進める中二つ目の事件が起こる。

県議会議員の城之内が三雲と同じく餓死という形で殺されたのだった。

二人目の被害者が出たことで、ようやく二人の共通点である8年前に生活保護の判定をする部署にいたことがわかる。

生活保護について知らなかった笘篠は、当時働いていた場所で情報収集をすることにする中で生活保護にまつわるトラブルなどを聞く。

不正受給をするもの、本当に困っているのに国の予算から生活保護受給者になれないもの、どうしても生活保護を断るしかないと嘆く職員の一人である円山の話も聞いた。

そして、一人の怪しい人物に辿り着く。

利根という人物が8年前、生活保護を断られたとして職員を殴り放火までしたとの事件があったのだ。

笘篠は利根こそが犯人ではないかと目星をつけ、殺された二人の上司にあたる上崎が次のターゲットだと絞られる。

上崎が海外から日本に戻ってくるタイミングを狙うだろうと予想し、見張りをおき警察は利根逮捕に向けて準備を進める。

そんな中、利根は8年前を思い出す。

生意気な顔で絡まれることが多い利根は暴力事件で執行猶予がついている中、なんとか就職しながら社会人生活を送っていた。

ひょうんなことで出会ったおばあさん・けいと仲良くなった。

同じく近所に住む・カンちゃんとも兄弟のように仲良く週末は遊んだりしていた。

だが、仕事が忙しくなる中でだんだんと、けい、カンちゃんと遊ぶ時期が少なくなっていくとあることに気づく。

けいがだんだんと痩せ細っていっていることに。

けいは独り身で無職、さらに貯金までなくなったと察した利根。なんとかその日食べるものを少ない給料からけいに渡しに行くも続けることは難しい。

なので、けいに生活保護を受けるように打診する。拒むけいだったが、なんとか申請書を出させることまでできた。

しかし、申請の結果は否認。理由は音信不通の弟に頼ればいいというものだった。

音信不通の人物にどうやって連絡すればいいのかもわからず三度も申請をするも、全て却下される。

日に日に細くなっていくけいはついに、餓死してしまう。

怒りで利根は生活保護担当者を殴り、放火をして捕まったのだった。

そして、現在に戻り利根は上崎に会う直前で警察に捕まってしまう。

利根は容疑を否認する中、上崎がいなくなった連絡が警察に入る。

利根は今回の事件の関係者であったものの、犯人ではなかったのだ。真犯人はカンちゃんだった。

利根の説得により第三の事件は起きずに事件はカンちゃん逮捕で幕を閉じた。

生活保護の受給問題を抱えたまま、世の中はそれでも動いていく。

護られなかった者の行動が少しだけ世界を動かす。そういた物語だった。

護られなかった者たちの意味とは。

一番に挙げられるのは今回事件の動機となった生活保護を受けられなかった人を表しています。

生活保護という生きていく上での最終防衛ラインですら護ることができなかった人たちのことを指しています。

そして、そんな人たちにこそ声をあげてほしい。という願いを込めているというのが「護られなかった者たちへ」のタイトルに込められた意味だと考えられます。

本当に生活保護が必要な人たちが受けられる仕組みにぜひとも今後も改善していってほしいところです。

次に護られなかった者たち。というのに災害で被害に遭った人を表していると僕は感じました。

主人公である笘篠は、妻と子供を東日本大震災で失っているという設定で、護ることができなかったと後悔をしている人物でした。

まさにこれこそが、護られなかった者を表しています。

刑事という公務員の仕事で多くの被疑者を挙げる中で、国民を守ってきた笘篠でも護れなかった者たち。妻と子供。

本当に大事なものこそを護るべきだという考えがここにはあると感じます。

護られなかった者たちにどういう保護をするべきなのか。国民全体で考えるべきというメッセージと、身近な本当に大切なものを護れというメッセージ二つを僕は「護られなかった者たちへ」からは感じました。

ここからはネタバレないので安心してください。

今回は、中山七里さんの「護られなかった者たちへ」を紹介してきました。

とにかく心に刺さる内容で、超考えさせられる内容でした。

ミステリーとしてストーリー展開も素晴らしいのに、テーマもいい。素晴らしい内容だと思います。

ぜひ、一度お手に取ってみてください。

では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。

orangeblog-ending-picture

僕が作ったおすすめアプリ!

・残りの時間がわかるアプリ 寿命時計

・めくって名言!日めくりカレンダーアプリ

・世界一のフードファイターを目指すゲームアプリ 飯キング!

コメント

タイトルとURLをコピーしました