スキージャンプの世界。
テレビで見たことはあるものの、実は奥が深くて面白い。
さらにそこにミステリーが加われば、さらに面白い。
今回紹介するのはそんな東野圭吾さんの「鳥人計画」です。
天才スキージャンパーが毒殺された事件に潜む、犯人と陰謀。フィクションとわかっていながらもついつい興奮と怖さを感じさせてくれる一冊でした。
この記事ではそんな「鳥人計画」を一部ネタバレありで紹介していきます。
では、いってみましょう!

あらすじ

鳥人と名を馳せた日本ジャンプ界を担うエース・楡井が毒殺された。
操作が難航する中、警察に1通の手紙が届く。それは楡井のコーチ・峰岸が犯人であることを告げる密告状だった。
警察に逮捕された峰岸は留置所の中で推理する「計画は完璧だった。俺を密告したのは誰だ?」
警察の捜査と峰岸の推理が進むうちに、恐るべき計画の存在が浮かび上がる。
二転三転する物語。
果たして犯人の真の目的とは。恐るべき計画の真実とは。
本の概要

ページ数
解説を含めず379ページ、全388ページでした。
読むのにかかった時間
大体4時間半ほどで読み切ることができます。
構成
峰岸を主人公に三人称にした構成で、一部他の登場人物に視点が切り替わって真相が見えてくるという構成になっています。
おすすめ度

東野圭吾さんの「鳥人計画」のおすすめ度は、5点満点中3.5点です。
面白いし、良いオチだけど僕としてはもうちょっとドキドキさせて欲しかった。
はっきり言って、「鳥人計画」面白いです。
スキージャンパーの殺害がどのように行われたのかを追求していく物語。
しかもそこには恐ろしい計画が潜んでいるというのも、リアルっぽくて好きでした。
ただ、犯人があらすじからもわかるとおりすぐに捕まるのが好みじゃなかった。
犯人が割と序盤に捕まってしまい、そこからは誰が密告したのかという推理とどうして、どのように犯行を行なったかというもの。
正直、僕の欲しいミステリーの緊迫感がなかったのです。
なので、全体的によくできたストーリーであり、ちょっとしたどんでん返しも存在しますが、まずまずの評価としています。
気になる方はぜひ、本書をお手に取ってみて下さい。
書評(ネタバレなし)

こんな世界なんだぁ、すごいけどドキドキせんなぁ。というのが正直な感想でした。
「鳥人計画」はとにかくよくできた話だと思います。
よくできすぎている分、ドキドキやハラハラが感じづらいというのが僕の感想。
悪意と悪意がぶつかるようなスリルが欲しかったのですが、僕が求めすぎていたせいでしょうか。ほとんど悪意は感じられませんでした。
ある意味、良い人しかいない、全員がちゃんと真っ当な目的を持っているので、納得してしまいます。
最近の僕の好みはある程度、ぶっ飛んだ考え方をしている犯人や動機ですので「鳥人計画」はハマらなかったのでしょう。
ですが、とにかく面白いのは確か。
ミステリーにしては珍しい挿絵(図)があり、スキージャンプの分析をうまく使っていたり、そこから動機、犯行方法まで繋げるのはさすがと言ったところ。
最後の最後でちょっとしたどんでん返しがあるのもよかったです。
とはいえ、全体的にドキドキハラハラがないのが残念なところでした。
万人に受けそうだけど、マニアックになりつつある僕の趣味にはちょっとミートしなかったですね。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにして下さい。

では、ネタバレありの内容要約・あらすじからやっていきます。
スキージャンパーとして天才的な結果を出している楡井(にれい)が毒殺された。
どうやら普段飲んでいるビタミン剤と毒薬をすり替えられたらしい。
その観点で警察は捜査を進める。容疑者はスキージャンプの大会のために楡井と同様に止まっていたスキージャンパー関係者。
捜査を進めるものの、ビタミン剤と毒薬をすり替えることは誰にでもできそうで中々犯人を絞れないでいると、一通の告白状が届く。
「峰岸が殺した」
告白状を信じるわけではないが、この告白状をもとに峰岸に絞って捜査をするとなんと、峰岸には毒薬を手に入れる手段があったことが判明する。
機会という点で最容疑者として取り調べを受ける峰岸だったが、動機と犯行方法が判明しない。
ビタミン剤と毒薬をすり替えるチャンスが峰岸にはなかったのだ。
頭を悩ませる中、峰岸もまた頭を悩ましていた。
誰が自分が犯人だと警察に告白したのか。自分の立てた楡井殺人計画は完璧だったはずなのに。
警察が捜査を進める中で、最近活躍し始めている杉江翔選手が怪しいと睨む。
杉江翔がどのようにトレーニングして、最近力をつけているかが分かれば事件の真相に近づけると当たりをつけた警察が杉江翔の父でありコーチに話を聞きにいく。
そして、そこでは翔に電極やヘッドホンをつけて非人道的なトレーニングが行われていることが判明する。
それは全て第二の楡井を作り出すための計画だった。科学的に楡井のような天才スキージャンパーを作り出す計画。
それこそが隠れていた鳥人計画だったのだ。
峰岸は非人道的にスキージャンパーを生み出す鳥人計画を止めようとしたのだった。それこそが動機。
さらに楡井が鳥人計画に協力している点を利用して、毒薬を秘密裏に渡すことで毒殺に至ったのだった。
しかし、それは峰岸の思い込みで、実は毒薬を楡井は飲まなかった。
だが楡井は死んだ。楡井が死んだ時そばにいたのは楡井の恋人の夕子。
そう、夕子が実は毒薬のカプセルから毒を取り出して、楡井に飲ませた張本人、犯人だったのだ。
夕子が自首するか否か、スキージャンパーが科学的に非人道的に生み出され続けるのか。
謎を残したまま、物語は幕を閉じるのだった。
犯人は結局誰?(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここでは、犯人は結局誰だったのか。その犯人の動機を簡単にまとめます。
結局の犯人は、楡井の恋人であった「夕子」でした。
峰岸は殺害するつもりで計画を実行していましたが、考えが甘く実は計画は楡井にバレていました。
夕子はその場に立ち会っており、失敗した峰岸の計画に加担し、楡井に毒を飲ませたのです。
動機は夕子の弟を守るため。
夕子の弟もスキージャンパーで、父によって非人道的にトレーニングをさせられていました。
楡井のスキージャンプの方法を音によって徹底的に体に教え込むという方法で。
このトレーニングによって弟が壊れていくのを抑止したい。楡井さえいなければ弟は苦しまない。
そう考えて、楡井を殺害したのです。
非人道的なトレーニングをやめさせるという峰岸との動機と似ている部分はあるものの、夕子は夕子で求めているものがありました。
結局夕子が自首したかどうかはわからず、物語は幕を閉じました。
おそらく自首しているんじゃないかな。
まとめ

ここからはネタバレないので、安心して下さい。
今回は、東野圭吾さんの「鳥人計画」を紹介してきました。
ドキドキハラハラはあまりしなかったものの、よくできた物語で綺麗にまとまっています。
若干怖い話もあったり、逆に登場人物たちの想いがぶつかり合う良い話でもありました。
気になる方はぜひ、読んでみて下さい。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。


