プロパガンダとは、特定の思想や行動へ誘導するための宣伝行為、扇動行為です。
今回紹介する根本聡一郎「プロパガンダゲーム」は、国民を戦争に導くプロパガンダというテーマで書かれた小説です。
大学生の就職の選考とプロパガンダをうまく掛け合わせた小説で、ゲームの結果にも小説の結果にもあっと言わされる作品でした。
この記事では、あらすじから僕が読んだ感想、ネタバレを含んだ「プロパガンダゲーム」の解説を書いていきます。
ネタバレ部には注意書きをしていますので、未読の方も安心して楽しんでいってください。
では、いってみましょう!
あらすじ
「君たちには、この戦争を正しいと思わせてほしい。そのための手段は問わない」と大手広告代理店・伝王道の就職試験を勝ち上がった大学生8名は言われた。
最終試験の課題として課せられたのは仮想国家の国民を戦争に導けるかどうかを争うゲームだったのだ。
勝敗の行方はいかに、国民を戦争に導くことはできるのか?
そしてこの選考に隠された本当の目的とは?
プロパガンダと選考を掛け合わせることで、世界に問う「政府の言うことを聞いて、メディアの情報だけで、行動を決めつけてはいませんか?」と。
勝敗も結末も油断できないミステリー
「プロパガンダゲーム」は基本的に勝ち負けがある選考をテーマとしています。
就活生8人が政府チーム(戦争賛成チーム)とレジスタンスチーム(戦争反対チーム)に分かれて争っていきます。
暴力などはなく完全な知能戦でいかに相手の信用を落とし自分の主張を通すことができるかというまさにプロパガンダゲームという名にふさわしいルールです。
さらにゲームの勝敗がついた後も実は選考自体に隠された真の目的という側面もまたワクワクさせてくれるのです。
実はこの選考は・・・のような形で、ゲームだけでは終わらない心理戦、知能戦が巻き起こるんです。
詳しくはネタバレ解説部でお話ししていますので、気になる方はそちらから読んでみてください。
ゲームの勝敗もどっちも応援したくなる要素が詰まっていて、僕としては本当にどっちが勝ってもおかしくない展開が気に入りました。
就活生の感情的が露わになるのも人間らしさが出ていてついつい感情移入しちゃうんですよね。
選考という「プロパガンダゲーム」の展開も逆転に逆転をするのも良かったですが、その後の真の目的に迫るところもまた良かったんです。
最後の最後まで読めない展開で最後のページで興奮が最骨頂になる書き方は久々にニヤッとなる終わり方でした。
僕のにやってのはなかなか拝めませんよ?
本を閉じた後にすげぇって思った時にしか出ない笑いが出たのです。
それほど「プロパガンダゲーム」は波が激しく興奮しっぱなしの小説でした。
最後の最後まで油断してはいけない作品です。
今の時代にぴったりの作品
現在ロシアがウクライナ侵攻しているやら、ウクライナが攻撃されていて酷い。といったニュースが連日報道されています。
「プロパガンダゲーム」を読むとこのニュースを疑いの目で見るようになってしまいます。
プロパガンダという扇動行為をテーマに書かれているので、現在行われている報道もプロパガンダだということがよくわかってしまうのです。
どれがどこまでが事実でどれを信じればいいのか吟味する必要があるのです。
政府が言っているから安心でも、メディアの専門家が言っているから正しいというのでは危ういということがわかります。
印象がいい人が言っているのは信用できるってのもまた危ういです。
きちんと論理的に考えて結論を出すことがとても大事だと再認識させてくれるという面でも「プロパガンダゲーム」を読んで良かったです。
「プロパガンダゲーム」で嘘の情報を言い合うというわけではないのですが、情報をどうやって国民に伝えるかってとても大事さがわかる内容になっているんです。
僕が好きな風刺画でこんなものがあります。
メディアがどこを切り取るかで伝われかたがよくわかるのです。
いろんな情報が交錯する中真実を掴むのがどれほど難しいのかがわかります。
メディアの怖さも知れる良い作品だと思いました。
ネタバレ解説
ここからは思いっきりネタバレしていくので、ネタバレが嫌な方は決してみないようにしてください。
選考結果
選考結果は賛成49票、反対46票、棄権5票という最終投票結果で政府チーム(戦争賛成チーム)が勝利しました。
展開としては本当にどっちが勝ってもおかしくない話でしたが、政府チームが最終的に勝利しました。
政府の最後の呼びかけで身を守るために戦うしかない、良い人間が武器を持つしかないという主張が決め手になったんだと思います。
とはいえ、棄権票が5あるというのも事実で、実はこの棄権票がまた物議を出すのです。
それこそが「プロパガンダチーム」という小説のオチになっていくわけです。
小説のオチ
小説のオチとしては「これからはメディアとも、政府とも戦って、真実を伝えるメディアを作ろうぜ」というものでした。
意外なオチだと思いました。
元が選考ということで選考が終われば小説も終わりと思いきや、選考が終わった先に選考の裏に隠れている何かに就活生が気づき、逆に大手広告代理店を攻めていくという展開、とても熱くなりました。
さらに選考のゲームに関わっていた大手広告代理店側の石川という社員も最終的に味方になる展開も熱かったです。
学生たちが自分達で新たなメディアを立ち上げて真実を伝える活動をしている場所を特定して、どれだけ危険があることなのかを解き、最終的に味方になるなんて超最高の展開です。
まだまだこれから話が続いてもおかしくない終わり方だったので、続編が来ることを期待します。
あと文庫版の表紙に5人しか就活生が描かれていないのも、実は伏線であるということに気がつきました。
最終的に真実のメディアに参加したのは就活生からは5人だったのです。
表紙の数とぴったり、実はこんなところに伏線が張り巡らされていて驚きました。
まとめ
今回は「プロパガンダゲーム」について紹介と解説をしてきました。
今の時代にぴったりで熱い展開が2度も味わえる作品はなかなかありません。
今後も続いていきそうなラストだったので、続編が出たら是非読みたいと思います。
メディアがいかに重要で真実を見極めることがいかに難しいかがわかる内容で、考えさせられる部分が多かったです。
小説としても2度のオチを楽しめつつ、プロパガンダの基礎を学べる一石三鳥の小説が「プロパガンダゲーム」だと思いました。
プロパガンダに少しでも興味がある方や心理戦や知能戦が好きな方にぜひおすすめしたいです。
ではメディアの真実を暴ける力をつけていきましょう!
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