5分でわかる「ロートレック荘事件」書評・ネタバレ要約

小説の書評

見飽きた展開じゃん!と思ったら大間違い!!!

別荘に集められた男女が殺人事件に巻き込まれて、一人一人と殺されていく。

というのはよくありがちな推理小説で、今回紹介する「ロートレック荘事件」も似たような感じで展開する話です。

しかし、オチは全く予想外、結論も胸が苦しくなるそんなミステリーにまとめられていました。

ここでは、筒井康隆さんの「ロートレック荘事件」の書評とネタバレありの内容紹介、解説を行っていきます。

では、いってみましょう!

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あらすじ

夏の終わり、郊外の洋館に将来を約束された青年たちと美貌の娘たちが集まった。

その洋館の名前はロートレック。

優雅な数日間のバカンスが始まったかと思われたが。。。2発の銃声が惨劇の始まりを告げた。

1人また1人と次々に美女が殺されていく。

外部犯なのか、内部犯なのか、警察が来る中でも続く殺人劇。

動かぬアリバイと、全くわからない動機。

一歩でも踏み入れると決して抜け出せない、妖艶で甘美なミステリーを味わえることでしょう。

王道なのに王道じゃない、そんなミステリーに仕上がっています。

驚愕のトリックに登場人物でないあなたはきっと、言葉を失うことでしょう。

本書の概要

ページ数

解説含めず、224ページ。

解説まで含めると、全233ページの作品です。

読むのにかかった時間

長編の割には少ないページ数だったので、1日30分ほどの時間を確保して4日で読み切ることができました。

時間に換算すると、大体2時間弱くらいで読み切ることができました。

構成

一人称で書かれた文章体系で、館の地図がかなり入り組んでいるところがあるので、館の全体像を認識するのはちょっと難しいと思います。

ただ人間の情緒や殺人劇のトリックについては十分に理解できる書き方でした。

映像としてなんとなくは思い浮かぶものの、正確にどこの部屋と部屋がつながっていたかなどが分かりづらい部分はありましたが、作品全体を通して理解する分には大した問題ではありませんでした。

長編の割にページ数が少ない分、ぎゅっと凝縮されたミステリーになっており、登場人物(主なところは全11人くらい)も少ないので読みやすいです。

書評(ネタバレなし)

ロートレック荘事件の評価としては、いつの間にか騙されてオチがわかった時「??は??」というものでした。

急に犯人が示されるものの、意味がわからない理由も殺人方法も全く思いもよらない方向からの不意打ちだったのです。

ミステリーに驚きと納得、やられた~感を味わいたい方にはぴったりの作品だと言えます。

犯人の独白という章もあって、これまでの犯行が全て明るみになっていく部分では、何度もページを戻ってこれまでの伏線を確認しました。

見事に伏線がはまっているんです。

伏線が本当にうまく見えない形ではまっていて、やられた感が半端なかったです。

ミステリーとして王道で退屈かなと思った始まり方だったのですが、終わった後はこんな伏線がすごい作品だとは思わなかったという感想になりました。

最後の締めの部分もなんとも切ない気持ちになるものでした。

障がい者というハンディキャップについて触れている作品でもあるので、人によっては面白くない差別的だという批判を受けそうな面もありますが、僕としてはそれもまた個性として楽しめた作品でした。

腫れ物に触るのではなく、一緒に歩んでいくべきという気持ちにもなれる、見方によっては人生観を変えさせられる作品でもあると思いました。

おすすめ度

「ロートレック荘事件」のおすすめ度は、5点満点中4.5点です。

万人におすすめできます。

ページ数も少ないのに、すごい伏線や驚きがあるので高い評価です。

推理小説を読み慣れた方にもおすすめできる作品なので、本当に万人におすすめできる内容だと思いました。

ただ、ハンディキャップを抱えた方に言及する場面があるので、その点だけ嫌な気持ちになる方もいるかもしれないので注意が必要です。

とにかくぜひ一度は、ネタバレなしで読んでみてください!

要約(ネタバレあり)

ここからはネタバレを大いに含みますので、注意してください。

ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。

では、まずネタバレありで話の要約をしていきます。

美女が1人でいるところに犯人がやってきて、2発の銃弾で殺されていき最終的には登場人物である美女3人が殺されてしまいました。

1人目が殺された時点で警察が館内にはいたものの、殺されていく状態で完全に犯人は館内を知り尽くしている内部犯ということで捜査が行われました。

主人公であり、「俺」視点で話を見ていくと、第一の犯人の犯行時点で既に完全なアリバイ、館の主と一緒にいた場面があり安心しきっていたものの実は俺は2人いたというのです。

詳細の解説は次の章でしていきます。

結果的に体に障害を持っている俺、重樹が犯人だったわけですが、体が大きくならない身体になってしまったのを巧みに使ったトリックで次々と普通の大人の体では入れないところから部屋に侵入して美女を殺していったわけです。

動機は、もう1人である俺、修を美女と結婚させたくなかったというものです。

重樹と修は常に一緒にいる関係で、重樹は修を信頼しずっと一緒にいてほしいと思っていました(恋愛感情は完全否定している)

娘たち3人はそんな修と結婚しようと策略していたために、関係を崩されることを恐れた重樹が犯行に及んだわけです。

自分の体が不自由だからこそ、大親友をとられるのが嫌だっという理由で3人の美女を殺してしまったのです。

しかも悲しいことに、2人目に殺した美女は実は重樹のことを愛しており、それが最後に日記という形で重樹は知ることになります。

自分の障害を含めた上で愛してくれた女性まで手にかけてしまった刺激は、後悔と悲しみで死刑を望むというラストでした。

切なく、どこか犯人を責めきれないというのがロートレック荘事件の終わりでした。

解説(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。

ここからは俺が2人いたことにどうして気づかないのか、どうやって犯行に及んだかについて解説していきます。

この場では簡単のために、殺された娘3人を数字で表すことにします。

①が一番最初に殺された娘、②が二番目に殺された娘という感じです。

オチとしては、娘たち3人を殺したのは、語り手であった俺だったわけです。

これだけ聞くと、アガサクリスティのアクロイド殺人事件と同じ感じか、と思われるかもしれませんが、それだけではないのです。

語り手であった俺は2人いたというのが、叙述トリックであり、ローレック荘事件という作品の大きなトリックになります。

読者視点だとずっと1人の俺(重樹)が喋っていたと思っていたのが、実は2人の俺(重樹と修)が入れ替わりに語り手となっていて、語り手になっていないタイミングで俺が娘たちを殺していたのです。

①を殺した時点で俺には完全なアリバイがあるために、絶対俺は犯人ではないと思っていたのですが、まさかのその時の俺(修)と別の場面で話していた俺(重樹)は別人だったのです。

修の視点で語られていたタイミングで重樹が犯行に及んでいて、重樹と修が両方存在する場面ではうまくどっちが話しているのかわからないという技が使われていました。

オチとしては俺が殺していたという使い古されたトリックではあるものの、工夫によって読者に悟らせないものになっていました。

重樹がしゃべっているのか、修がしゃべっているのか、読み返してみると確かに絶妙に曖昧に書かれているのです。

重樹は言った、とか、修がしゃべった。などの記述はどこにもないんです。

読者側は完全に修は見えないものとして、重樹の視点だけで書かれているものと思い込むところを漬け込んだトリックになります。

2人いたのに1人として描いているのが、ロートレック荘事件のトリックと鍵になってくるのです。

まとめ

ここからはネタバレないので、安心してください。

今回は、ロートレック荘事件について書評、ネタバレ要約、解説を行ってきました。

ありきたりなオチや展開をおもいっきり覆してくれる作品に驚きでした。

伏線に震えたり鳥肌が立つといういうよりも、いつの間にか後ろに立たれて頭をぶん殴られる感覚の作品でした。

読み終わった後に、読み返してやられたーを味わいたい方にはぴったりのミステリーだと思います。

また長編の割に短いのも魅力的なポイントで読みやすい点でもおすすめしたいです。

最近読んだ中だとアリスミラー城に似た内容でしたが、アリスミラー城よりも僕はロートレック荘事件の方が好みでした。

アリスミラー城については別記事でも紹介していますので、参考にしてみてください。

では、ぜひ皆さんもミステリーに暗殺される気持ちを味わってください。

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