超能力が芽生えたら人類はどうなるのか?真剣に考えたことはありますか?
今回紹介する貴志祐介さんの「新世界より」はそんな人間に超能力である呪力、念動力が目覚めた世界を舞台として描かれています。
現在から1000年後の世界を舞台にしたまさに新世界の物語。
ありえないフィクションのはずなのに、どんどんのめり込んでしまう作品で、上中下と続いて長いと感じそうですが、上を読んだ後だと気になって中が早く読みたいと思ってしまいます。
この記事では、上巻のあらすじ、書評、ネタバレありの要約を行っていきます。
では、行ってみましょう!
あらすじ
1000年後の日本、豊かな自然に抱かれた集落には純真無垢な子供達の歓声が響く。
周囲をしめ縄で囲まれたこの街は、外から穢れが侵入することはない。
そこに住む住人たちは呪力と呼ばれる、念動力という特殊能力を持っていた。
子供たちも成長と共にその力を手に入れる。
主人公である渡辺早季は、そんな集落で生活をする少女。
早季もまた呪力を手に入れ、学校に通いついには初めてのお泊まり会にも参加していく。
だがそこで出会ったものに聞かされた話は、これまでの常識を全てひっくり返される話だった。
そして、事態は急変し命の危機が迫る状況へと移り変わっていく。
果たして、少女たちがみていた平和の正体とは?
呪力に秘められた恐ろしい歴史とは?
本書の概要
ページ数
文庫サイズで、全482ページです。
読むのにかかった時間
大体6時間ほどで読み切ることができました。
構成
主人公である渡辺早季の一人称視点で書かれる構成になっています。
早季が1000年後の人類に向けて書いたという形ですが、僕ら読者視点としては未来の話を現代の話として理解できるように解説して書かれているという見え方がします。
未来についてのSF要素が強く、架空の名称や生物も多く出てきますが、現実の生物に照らし合わせて説明がなされたり、かなり丁寧に設定を説明してくれるのでSF初心者でも読みやすい構成になっていました。
喋り言葉も多く、上巻の後半部分ではバトル要素が増え、一気に読み切ることができる内容でした。
書評(ネタバレなし)
ここまで引き込まれるのか。というのが第一の感想です。
上巻は大概面白くなかったり、後の巻のための伏線だらけで退屈だったりする場合が多いですが「新世界より」については全くそんなことはなかったです。
前半部は確かに説明やらが多く退屈な部分もありましたが、後半の怒涛の展開は見事でワクワクして読む手が止まりませんでした。
後半は超能力バトル的要素が出てきて、漫画を読んでいるかのような手に汗握る展開で、あっと驚くどんでん返しもよかったです。
この後、中、下巻と続いていくわけですが、絶対良作だというのがわかります。
まだまだ不明な点も明らかにしたい謎も残っているので、終始楽しめることが容易に想像ができます。
表現内容に若干のグロさやエロさがあったりするので、15歳以下の方は読まない方がいいかもしれません。
ある程度大人になった方におすすめしたい作品という印象です。
ただSFがあんまり得意でない僕でも、楽しく読めたのは非常に驚きです。
SFは架空の生物やらを説明するとき、どうしても文章をじっくり読んでイメージを膨らませる必要があるのですが、「新世界より」については簡潔な文なのに架空の生物の映像が浮かぶほど見事な文章で書かれていました。
想像力が乏しい僕ですら、読みやすく、理解しやすい内容だったのが良かったです。
イメージできるからこそ、痛そうだったりという感情まで伝わってくる見事な作品だと感じます。
超能力に制限があるのも面白いと感じました。
超能力を無限に使えるとか僕としては萎えちゃいます。
制限がありつつ、その中でどう立ち向かっていくのか、ぜひ注目してほしいです。
まだ上巻ですが、絶対中巻、下巻と面白くなっていくことでしょう。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
では、ネタバレありの要約・あらすじから紹介していきます。
話は早季が子供の頃から始まります。
まだ呪力と呼ばれる念動力が使えない中、学校に通っている様子が描かれ、ある日ポルターガイストと共に呪力が使えるようになるのです。
呪力が芽生えると寺に連れていかれ、催眠術によって呪力のコントロールの仕方を覚えることになりました。
そして呪力が芽生え、ある程度コントロールができるようになると一つ上の学校に通うことになります。
学校には既に呪力を持っていなかった頃の同級生たちが居て、早季は最後でした。
学校では呪力を使った様々な授業が行われ、呪力の使い方にさらに磨きをかける行為をおこなっていました。
そんな中、林間学校のような班に分かれお泊まり会をする行事が学校で行われることになりました。
早季は、昔からの友達、真里亞、瞬、守、覚と同じ班で山に行くことになりました。
山の中では課題である未知の生物を観察するように努めながら散策していると、ミノシロモドキという生物に出会います。
実はミノシロモドキという生物は、ただの生物ではなくこれまでの歴史の書籍を記憶したAIだったのです。
ミノシロモドキに様々な質問をするうちに、早季たちが持つ呪力は、1000年前に現れた能力でその力によって戦争が起こり、早季たちはその生き残りの集落という話を聞かされるのです。
戦争の内容は残酷で、1000年のうちに呪力を使って力で支配する独裁者や呪力を持たないものたちを迫害する話まで聞かされました。
自分達の過去を知ってしまった早季たち5人は、半信半疑の中、大人にミノシロモドキとの会話を聞かれてしまいました。
ミノシロモドキの言葉を少しでも信じてしまった子供は罰せられることになっていて、ついに早季たち5人は呪力を封印されてしまいます。
呪力が使えなくなった5人と封印した張本人である大人の前に、バケネズミと呼ばれる生物が現れます。
大人は呪力によって追い払うものの、ついには力尽きて死んでしまいます。
残った5人は封印されてしまったがために呪力が使えず、バケネズミたちから逃げるしかありません。
バラバラに逃げるも早季と覚は味方のバケネズミたちと合流する形で、何とか難を逃れます。
しかし、味方のバケネズミは先ほど大人を殺したバケネズミと戦争をおこなっているとのこと。
呪力の力を使って協力することをお願いされ、困り果てている中、敵のバケネズミが襲ってきます。
逃げる中、早季は昔の記憶を思い出して覚の呪力の封印の解き方を暴き、覚の呪力が使える状態にさせたのです。
バケネズミを何とか全滅させることができたものの、覚は呪力の使いすぎで倒れてしまいます。
味方のバケネズミたちに囲まれている中覚は寝たまま、早季は未だ呪力が使えない状態。
味方のバケネズミは人間の呪力に恐れて、協力しているため早季が呪力が使えないと分かればどんな目に合わせられるかわかりません。
果たして早季たちは無事に家に帰れるのか、バラバラになってしまった守、真里亞、瞬とは再開できるのか?
上巻の内容はここまでになります。
解説・考察(ネタバレあり)
怒涛の展開ですよね。
覚の呪力の封印を解くのは見事でした。
封印する際にも解除する際にも催眠術というのがキーワードで、決して呪力は無くなるものではなく意識的に封じているものという解明をした早季によって何とか危機を脱出しました。
とはいえ、早季自身の呪力を取り戻すためのキーワードはわかっておらずピンチは続いています。
バラバラになった仲間たちの行方も気になります。
僕の予想としては、多分仲間の一人二人は既に死んでいるんじゃないかと思っています。
エグい展開になりそうな匂いがぷんぷんするんですよね。
また、大人たちが頑なに歴史を隠そうとしているのも気になります。
人間たちが呪力による戦争や支配の後に作った現在の平和な集落。
裏に隠れた顔っていうのがワクワクしてたまりません。
隠さなければいけない真実、ミノシロモドキから聞いた歴史も一部にしか過ぎないので中下巻と続く中でそこらへんも注目したいです。
まとめ
ここからはネタバレないので、安心してください。
今回は貴志祐介さんの「新世界より 上巻」について紹介してきました。
上中下と続いていくので中弛みが怖いかなーと思って読み始めましたが、絶対これ終始面白いってわかる展開でした。
超能力が出てきて、謎の歴史とかあって、小説版ワンピースを読んでいるみたいな感覚になります。
超能力が単純に万能な能力じゃないのも面白さを出していて、本当に面白いです。
中巻、下巻の展開も気になる伏線が散りばめられていて最高でした。
ぜひ、上巻だけでも読んでみてください。
とはいえ、上巻を読んだらもう止まれなくなってしまいますが。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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