ミステリーの一つのジャンルにもなる「誘拐」
今回紹介する平居紀一さんの「甘美なる誘拐」もまさに誘拐ものミステリーです。
ただ、大どんでん返しでまさかの結末になることで、注目を浴びていて実際に確かにこの結末はわからなかった。
この記事ではそんな「甘美なる誘拐」の書評と、一部ネタバレありのあらすじ・要約をやっていきます。
では、いってみましょう!
あらすじ
ヤクザの下っ端、真二と悠人。
人使いのあらい兄貴分である荒木田にこき使われる中、ある他殺体を見つけてから日常が変わり始める。
荒木田から大仕事を振られ、事態はさらに緊迫していく。
同じ頃、調布で部品店を営む植草父娘は、地上げ屋の嫌がらせで廃業に追い込まれていた。
一方、脱税によって金を稼ぐ宗教団体・ニルヴィーナでは、教祖の孫娘・春香が誘拐された。
様々な事件が衝撃のラストへと帰結する。
果たして他殺体とそこに残されていた小説の意味とは。
誘拐事件はどのような形で決着するのか。
本書の概要
ページ数
解説含めず、399ページ、全407ページでした。
読むのにかかった時間
だいたい4時間半ほどで読み切ることができました。
構成
三人称の書体で書かれていて、主に二つの視点、ヤクザの下っ端二人組の片割れ真二と部品店を営む植草の父と娘でした。
真二視点が多めで、主人公が誰かと聞かれたら真二と答えられるほどの、構成になっていました。
書評(ネタバレなし)
どんでん返しだけど、ちょっとそれはあり得なさ過ぎて好みじゃないかな~というのが僕の感想です。
大どんでん返しがすごい。という評判だったので読み始めたわけですが、確かにラストは驚くようなものでした。
ですが、完全にやり過ぎ。フィクションに頼り過ぎな部分すぎたと思います。
どうしてそのような結果になったのか、もう少しリアリティのある結果の方が良かったです。
完全に運頼みな作戦がたまたま上手くいったという感じで、もし〇〇〇が〇〇〇〇なければそもそも作戦はうまくいっていませんでした。
そう考えるとちょっと残念な作品。
どんでん返しの発想としてはすごい良くて、まさか手のひらの上で踊らされていただけだったのか!!という驚きは良かった。
でも、正直それはたまたまそういったタイミングがあっただけで、他のプランが全く見えず運が良かったとしかいえないのです。
しかもその運というのが一般的ではなく、奇跡に近い運だからこそ、リアリティの低さが目立ってしまうと思いました。
現実にはあり得るんですけど、確率は猛烈に低い。そこを題材にするのはちょっとフィクションとしてはずるいと僕なんかは思ってしまいました。
登場人物やストーリー展開は結構好みでした。
キャラが立っていて、名前も覚えやすい。誘拐からの身代金のやり取りなんかはページをめくる手が止まりませんでした。
大どんでん返し自体も、ちゃんと伏線はあるので納得はするものの、リアリティがなく、運頼みすぎる。。というのが好みじゃなかったというだけです。
トータル、面白いんだけど現実感なくて微妙かな。というのが僕の感想でした。
おすすめ度
平居紀一さんの「甘美なる誘拐」のおすすめ度は5点満点中3点です。
誘拐ものとして面白くはあるのですが、大どんでん返しの内容がどうしてもリアリティに欠けるというか、運がよかったからできたことだろう。と思ってしまうので評価を落としています。
決して大どんでん返しの発想ややり方は悪くありません。
ですが、一点だけ、違うプランはあったのだろうか?と考えが巡るのです。
違うプランがあって、その上で運が良かった方に乗っかったということであれば非常に良かったと思うのですが、納得がいかない部分でしたね。
なので、大どんでん返しを単純に味わいたいなら、楽しめると思いますが、僕の好みとは異なるのでおすすめ的にも低く設定しています。
誘拐ものとしては、ストーリー展開も構成も良いので、ぜひ読んで欲しいです。
大どんでん返しソムリエとしては、心残りがあったかなというだけですので、気になる方は読んでみてください。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにしてください。
ではネタバレありの内容要約・あらすじをやっていきます。
真二と悠人は荒木田の使いっぱしりとして、地上げなどをやっていました。
そんな中、荒木田のお使いの一つである宝くじを買いに行き、その足でいつもお世話になっている金貸しに挨拶しにいくことにしました。
ですが、金貸しは死んでおり、自分たちが殺したことにならないようにその場から立ち去ろうと二人は思います。
その前に自分たちも死んだ金貸しに借金していた借用書だけ処分しようと画策し、さらに現場に落ちていた小説と原稿用紙を持って立ち去ります。
無事、現場から逃げた二人に荒木田から大仕事のために来いと呼ばれます。
大仕事の内容は誘拐。
宗教団体であるニルヴィーナ教祖の孫娘・春香を誘拐するというものでした。
真二と悠人に断る力はなく、仕事をすることにします。
ボディーカードが付いた春香を誘拐するための作戦として、まず別の誘拐が行われている現場を作りボディーガードがその誘拐を阻止するべく行動しているすきに春香を誘拐するというプランを立てました。
その作戦はぴったりはまり、春香の誘拐に成功はしたものの、誘拐現場をたまたま目撃してい白波という女性も一緒に誘拐することになってしまいました。
荒木田は余計な人を誘拐してきたことに怒り、悠人に説教しますが、悠人は仕方なかったとして二人をそのまま軟禁することにします。
そして、身代金をニルヴィーナに要求しつつ、もう一つの作戦であるニルヴィーナが発行する商品券を盗み出す作戦を結構します。
身代金の3千万円をドローンをうまく利用して奪いつつ、商品券の奪取にも成功する荒木田と真二、悠人。
ニルヴィーナはヤクザが裏についていることで、今回の誘拐や商品券強盗は表に出せない事件。
その事件を利用して長くニルヴィーナを脅せると考えた荒木田の思惑通りに、誘拐事件は進み大仕事も幕を下ろすかと思われました。
しかし、実は全てが悠人の手のひらの上だったのです。
悠人と真二が購入した宝くじは実は当たっており、前後賞合わせて5億円。
ですが宝くじを買わせたのは荒木田なので、荒木田から宝くじのことを思い出させないようにしつつ上手いこと換金する必要がありました。
そこで白波という実は、部品工場の娘である植草を利用し、宝くじの換金を済ませさせたのです。
荒木田から完全に宝くじのことを忘れさせて、宝くじの当選金を全て自分の手中に収める作戦が成功し、万々歳で悠人と真二。
殺人事件も、残された小説と原稿用紙から金貸しの弟子が自分の作品を他の作家に流したために起こった者として静かに事件は終着。
真二と悠人、そして真二が一目惚れした植草の娘三人で、新しい事業でもやろうという話で「甘美なる誘拐」は幕を閉じました。
大どんでん返しを解説&感想(ネタバレあり)
大どんでん返しの要素は、悠人が頭を使った作戦で上手いこと宝くじの当選金を獲得するために動いていたということです。
誘拐事件の裏に、実は誘拐に関連するお金以上のお金を手に入れる作戦があって、それを相棒である真二&読者に悟られることなくやり抜いたというのがオチでした。
確かに、悠人はバカのように描かれていた、破天荒が目立つために全く計算しているように動いてはおらず読者は騙されます。
実際は白波(植草の娘)と真二と出会った臆病なチンピラも全て悠人が用意した人物だったとわかります。
作戦を隠すのうますぎだろ!というツッコミもありそうですが、百歩譲って騙すテクニックは素晴らしかったと思います。
まさにミスディレクション。
誘拐という事件の裏に宝くじを無事に換金する作戦が動いていたのは見事でした。
ですが、僕が納得できないところがあります。
それがそもそも宝くじが当たるという点。
宝くじが当たる確率というのは雷に撃たれるよりも低いです。
それが、お金で苦しんでいる植草、悠人、真二に運よく舞い降りるなんて出来過ぎ。
フィクション、小説だからそのくらいの出来過ぎは良いだろうと思うんでしょうが、僕は他の部分が綺麗に丁寧にリアルに描かれた分気になってしまいました。
悠人が実は策士だったのは素晴らしいので、宝くじ以外の要素が僕は欲しかった。
個人的に宝くじが好きじゃないのもあると思いますね。
まとめ
ここからはネタバレないので安心してください。
今回は平居紀一さんの「甘美なる誘拐」を紹介してきました。
大どんでん返しがある誘拐ものというところで、面白かったですがどうしても運頼りなプランが許せない。そんな一冊でした。
ネタバレを見ていない方は、ぜひとも一度読んでみて僕の納得いかない部分共感して欲しいです。
もしくは、自分は納得できたなどあればコメントしていって欲しいです。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。
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