死はとても悲しいことですが、それがないと生もありません。
今回紹介するのは本多孝好さんの「チェーン・ポイズン」です。
自殺を考えている女性の前に現れた「その自殺、一年後にしませんか?」という言葉。
一年の猶予と葛藤の物語。
この記事ではそんな「チェーン・ポイズン」の内容を一部ネタバレありで紹介します。
では、いってみましょう!

あらすじ

「その自殺、一年待ってくれませんか?」
自らの命を断つ決意をしたOLの前に現れた「死のセールスマン」
一年後に向けて無気力な毎日から脱した先に待っている生活とは?
さらに自殺志願者に届いたメッセージを調査すべく、記者の原田が動き出す。
生と死。希望と絶望の世界で紡がれるチェーンの意味とは。
本の概要

ページ数
全427ページでした。
読むのにかかった時間
大体5時間ほどで読み切ることができました。
構成
自殺を決意したOL・悦子。
自殺志願者たちの毒に不可解な点を発見した記者・原田。
この二人が交互に一人称で追っていく構成でした。
おすすめ度(ネタバレなし)

本多孝好さんの「チェーン・ポイズン」のおすすめ度は、5点満点中2.5点です。
正直、良い話だけど、期待しすぎちゃったせいで驚けなかった…というのが一言感想。
まず生と死をテーマにした物語としては非常に良いと思いました。
決して説教くさくなく、登場人物たちに考えさせて経験させてるので感情移入しながら納得して読むことができます。
なので社会的メッセージという点では多くの人に読んで欲しいと思いました。
また、テンポも良いのでページ数やや多めではあるものの、すっきり読める点も良いと思います。
ただミステリー要素や驚き要素としてはイマイチ。
どんでん返しミステリー。という大々的なキャッチフレーズをつけるほどではないと思います。
よくある手法ですし、薄々感じていた叙述トリック。
予想を裏切る終わりに持っていくための叙述トリックとしては綺麗にハマってはいるものの、なんとなく先がわかってしまいました。
どんでん返しミステリーというのは忘れて読めればかなり良い作品だと思います。
読みやすく、メッセージ性もある小説として楽しめる方はぜひ読んでみて下さい。
なお、ミステリーとして多くの作品を読んでいる方だと、物足りないので気をつけて下さい。
要約・あらすじ(ネタバレあり)
ここからはネタバレを含みますので、ネタバレが嫌な方はまとめの章まで飛ぶようにして下さい。

では、ネタバレありの内容要約・荒らすじからやっていきます。
毎日同じような生活をしているOL・悦子。独身で何にも気力が湧かない中、自殺を決意する。
そんな時に公園で話しかけられる。「その自殺、一年待ってくれませんか?」と。
一年後に楽に死ねる方法を提供するという言葉に、騙された気持ちで乗っかることにする。また一年後同じ場所で。そう約束して悦子は次の日には会社を辞めた。
記者の原田は毒による自殺者たちの事件を独自で追いかけていた。その昔自分が取材した有名人たちの毒による自殺が気がかりだったのだ。自殺するようなことの一年後に皆が亡くなっている。
どうしてすぐに死なずに一年後に死んだのか。そこに何か怪しいものを感じる原田。
そんな時に高野悦子という一般市民が自殺した話が舞い込んでくる。ここに糸口があるかもしれないと直感する原田は、高野悦子が過ごした一年間を追い始める。
悦子は、会社を辞めフラフラしている中、ボランティアに出会う。親に捨てられた子供たちを育てる施設。最後の時間を楽な気持ちで過ごせるホスピス。
その中で子供たちには特に感情移入していく。おばちゃんと呼ばれ徐々に慕われてもいく。
しかし、その施設の運営は厳しく、管理者(おばあちゃん)も病に伏してしまう。息子はドラ息子でこの施設を手放そうとしている。
最終的にはおばあちゃんは亡くなり、息子の手に渡った施設は終わりまでのカウントダウンを始める。
悦子は自分が一年前にかけた2千万円の保険を頼りに息子に交渉しに行く。2千万円で施設を買い取るとの話。納得する息子。
悦子は最後の時間をよりよくできるように子供達に色々な準備をさせて、ちょうど一年後にあの公園へ行く。
そこには毒薬と手紙だけがあった。「楽に死ねる薬です」との手紙。
身近な整理を終え、最後の瞬間に手をかけた時に、悦子の元に息子がやってくる。「お前のせいだ」と責められ首を絞められる。
そこに施設の子供がやってきて、事なきを得る。なんと子供の一人が施設が取り壊されることをSNSにあげていたのだ。それによって息子は世間から糾弾され自身の会社も、市議会議員としての出馬も難しくなったのだった。
施設は救われた。そして悦子も死の淵を見ることで、子供達ともっと一緒にいたいという気持ちに芽生え死ぬことを辞めたのだった。
原田は、高野悦子の生活を追っていく中で、高野悦子が毒となる植物の種を手に入れたことを知る。
その種を一年間かけて育てて、配っていることにまで辿りつく。「死のセールスマン」は高野悦子だったのだ。
他の人も死という救いを提供したい。その想いで自殺志願者たちに毒薬を配った。
一年間待てというのは、種を育てる時間だったのだ。
チェーンメールのごとく、毒薬がチェーンした物語だった。
叙述トリックの解説(ネタバレあり)

ネタバレ続きます。
ここでは、「チェーン・ポイズン」の叙述トリックについて解説します。
叙述トリックはズバリ、悦子のすり替え。誤認識。です。
読者はずっと自殺志願者として登場したおばちゃんこと悦子=高野悦子だと思わされています。
しかし、それは誤りで一人称で追いかけていたOLは槇村悦子だったのです。
高野悦子は自殺したことが原田視点からも確定ではあったので、槇村悦子もいつか死ぬ。どうして死ぬ。というハラハラを読者に届けることができたわけです。
最終的には槇村悦子は死にませんでした。
これにより、ハラハラからのハッピーエンドを見ることができるのです。
槇村悦子に感情移入していた読者としては嬉しい気持ちになったはず。
「著者と同じ名前だから、注目した本」という最初のキーワードによりOL=高野悦子というミスリードが最後まで聞いていたトリックでした。
とはいえ、これはよくある手法なので、僕としてはあんまり響かなかったです。これ以外の大どんでん返しを待ち望んでいました。
苗字に言及がない時点で、気付けるトリックではあったのでもうひと工夫が欲しかったですね。
まとめ

ここからはネタバレないので安心して下さい。
今回は、本多孝好さんの「チェーン・ポイズン」を紹介してきました。
生と死という物語としては結構好きな方でした。ただ、大どんでん返しという言葉によって期待をあげすぎるとがっかりしてしまう点は残念。
とはいえ、テンポよく読める一冊なので、気になる方はチェックして下さい。
では、皆さんの読書ライフがより良いものになることを祈っています。


